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【能登ボランティア旅 その3】

【おじいちゃんたちの底力】
ボランティア2日目。
起床したら長期滞在で、主に炊き出し担当のPさんが作ってくれた焼きそばとチャーハンが。昨日の昼、ご飯を作ってくれたりしていたキタさんが出発。Pさんはオレはそんなに優しくないからな!などと昨日言っていたりしたが、昨日、みんなが寝静まったあと、一人猛烈な勢いで包丁を操り、みんなの朝食を作る音が酒心館の中に響いていた。
本人はゆっくり起きてきて、え?妖精さんがつくったんでしょ?などと惚けていた。

ベースへ移動。
さて、今日の作業は???
もう黒板にストーンズって書いてあるわ(笑)
なに?神社???

どうやら神社の石を直したり運んだりという作業を、ストーンズ&地元のみなさんで協力してやってくれとのことらしい。
ほうほう。要するに、知恵担当を地元の方、パワー担当を僕らという割り振りか。


海岸沿いの集落から急坂を登った高台にある神社に到着。
海が一望出来て、おそらく漁師さんの安全を祭る神様なのだろうか。
あるはずの鳥居は見事に破壊され、石段を支障するような形で止まっている。唯一割れ残った鳥居の脚が一本、元の場所に残るのみ。
しかしこれ、石段で止まったからいいけれど、そのまま下に落ちていったら…
家の壁など簡単に突き破ってしまうだろうと、身震いがする。
これを一旦参道に引き上げて、脇に寄せるのだが、一歩間違えて下に落としては絶対にいけない。ロープを回し掛けて、滑車の原理を使いながら引き上げていく。

幾つもの石を上げて、ずっと気になっていたすぐ横で倒れている石碑。
やっぱりこれ…直すのか…
昨日ギブアップした墓石とは比べ物にならない巨大な石碑。
倒れているのを起こして、土台の上に乗せるのだ。
木の柱を三方に立て、滑車で釣り上げて上に起こす。
文字で書くのは非常に簡単だ。
おじいちゃんがテンションを掛けて石碑が起きようとする瞬間、土台にしていた木が浮きそうになる。
咄嗟に飛びつき、2人がかりで抑え込もうとするも、浮き上がろうとする恐怖。
いや、これ普通に危険なやつ!!
しかしちょっと待って!と言っても、おじいちゃんは前進しか考えていないようで、作業の手を止めないのが恐ろしいところ。少しずつ石や木を噛ませ、作業を中断している間に抑える方は作戦を変えたりして、なんとか食らいついていく感じ。



なんとか無事に、石碑が起きた。
そう、まだ起きただけだ。
土台は直ぐ横ではあるものの、30cmほどの段差がそこには存在する。

今度はテコで傾けたりしながら(当然これもめっちゃ危険)
ロープを下に通し、上にある防風鉄柵にと木に掛けたロープの上から、滑車で吊る。
もうこうなれば、ロープの耐久性頼み。上を見ると、鉄柵が過重に負けて少し曲がっているのが見える。数年たった後に、誰かをここに連れてきて語るときの良い遺構になるだろう。
少し上げて石を噛ませてを繰り返し、無事に石碑が土台の上に乗った!!
自然と歓声が沸き起こる瞬間だ。

これで大ボスが終わった…と思いきや、まだまだ。
神社の上の峠?に続く登山道らしきところにも崩れた石があり、それを運びたいらしい。
まあこちらは2~3人ぐらいで何とかなりそうなサイズ。
しかし、ここでもおじいちゃんたちには恐ろしい思いをした(笑)
ロープが付いた網に石を入れ、前後で支えながら降りるのだが、下を引っ張るおじいちゃんがまあまあなスピードで降りようとする。
上からブレーキを掛けながら「ゆっくり!!」と叫んでもかまわない勢いというか元気というか…
次の石をストーンズ2人で運んでいたら、その上から続行で石を降ろしながら追いかけてくるおじいちゃん。僕は下で支えていたので最初は気づかなかったが、一歩間違えたら大惨事だったかもしれない。
せっかちなのは漁師の性分なのか…

まあいろいろあったが、無事に午前で作業は完了。
ストーンズもこれでお役御免ということだ。やれやれ。

お昼ご飯は、有名なキッチンカーのレシピで作ってくれたという天津飯!めっちゃうまい!

【断捨離…しようか】

そして午後。少し離れたところのお家の片付け部隊として活動する。
今回初めて行く、門前町の中心部を過ぎたところにある集落の一軒。
引っ越しをしようと荷物を入れ始めたところ、今回の震災で断念し、ご本人は金沢から通っているらしい。
家財道具を全て出すとのこと。
因みに、地震による損壊で取り壊しが決まった場合は公費で補助をしてくれるものの、その際は家財を全て出す必要があるらしい。


昨日のお家でもそうだったが、まだまだ使えそうなものも捨てることになってしまう。
中にはまだ殆ど使っていなかったであろうモノも含まれており、田舎のお家はモノで溢れている…ということを実感した。余分なものを持ちすぎると、こういった災害時に大変なことになるということだな。
あ、親父の住む実家もモノで溢れているから、有事の際は大変そう。帰ったら断捨離を強く薦めてみようか。

4人で作業をするため、2人は家の中から家財を出し、僕ともう一人で軽トラへの積み込み&廃棄場所への運搬をピストンで行う。
もう何往復もしただろうか、最初はちょうど回収直後だったせいか、ほぼ何もない状態だった廃棄場所。

しかし、およそ2時間ほどの作業により、木家具を捨てる場所が埋め尽くされるほどの家財の山。
何とか1階は全て、終わらせることが出来た。
まだまだ残るは2階、そちらの方が大変だろうが、次に来るメンバーに託すことになる。

帰り道、少し周り道して、この辺りの地名、門前町の由来ともなっている、総持寺の参道を経由していく。昔ながらの家が多いこともあり、まだまだ悲惨な状況。一階が完全に潰れているお家もあるぐらい。ベースのある地区から少し震源に近いというのもあるだろう。


本日の作業は終了。
今日はまあシャワーでいいかな…と、酒心館に戻る前に少しだけ寄り道。

何度も通っている、トトロ岩のあたりで折角なので海に降りてみた。
昔、能登半島をドライブした時にもここは通ったはず。トトロ岩も薄っすらと見た記憶がある。
通学バスから子どもたちが見つけたのがキッカケで地元の人に知られ、目を取り付けて観光資源にしたらしい。
しかし震災で片耳が取れてしまい、今後はどうなるのか…と思っていたが…

岩場に降りてトトロ岩の方を見てみるとあれ?
これ、トトロを横から見た図にならないか???
目の位置がどうしても正面という感じになっているので、片方を撤去してもう片方を少しずらしてやれば、多分トトロに見えるだろう。
今はまだまだ復興途上だが、落ち着いたところでぜひ、トトロの横顔として新たなスポットになればいいな・・・と思った。

日焼けがしていない白い岩場が目に付くのは、これは震災で隆起したところ。
まだ冷たい日本海の水に足をつけて、酒心館へと戻った。

戻った後ぐらいから、ゴロゴロ!と雷がとどろき、やがて物凄い雨が降ってくる。
自衛隊風呂へ行ったメンバーは、なかなか戻ってこないなと思ったら、酒心館から近い自衛隊風呂は3日間ほどお休みしていた為か、地元の人で大混雑。1時間は待つことになったらしい。



これで僕は最終日の夜。活動者のために焼いて冷凍して置いて行ってくれたというお好み焼きや、冷凍コンビーフ、そしてそれと余りご飯で即席で作った、具材は肉だけ!という、ジャンキーで美味いに決まっているチャーハンなどなど。
今日も美味しくつまみつつ、話しつつ、能登最後の夜は更けていった。

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