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【停止位置不良の悲哀 その2】

車掌目線からの、停止位置不良についてのお話です。

大まかにみると要するに停止位置不良なのですが、その延長線上で、停車駅の通過というヤツにもスポットライトを当ててみます。
まさしく文字通り、駅を通過してしまうこと。一応、僕の会社では車掌室がホームに入っているかどうかが一つの基準で、それによって運転士さんの処分も大きく異なってきました。勿論、通過の方が断然重いです。
因みに、通過してしまった場合、その距離によっては信号や踏切等の関係上でもとに戻さず、そのまま次の駅に行かなければいけないケースもあります。ここまで来ると、お客さんに大きな迷惑をかけるわけですし、ニュースで発表されるのはほぼ間違いないような事象です。

これは概ね、運転士さんが通過と勘違いしているから発生することで、ターミナルの後の最初の停車駅や運転士交代直後の快速通過駅に停車する列車、田舎では、場内信号機やポイントがない駅(いわゆる停留所)が要注意駅とされていました。
車掌も停止位置不良の際は、車掌弁・いわゆる非常ブレーキを取り扱うように定められていることが決められていました。
僕が務めていた会社では、車掌も駅の到着時、先頭車両がホームに差し掛かるときから、乗務員室から顔を出して列車の状態監視にあたらなければいけません。ただし、これは会社によってタイミングの基準は異なるらしいです。
到着前は車内放送⇒そしてタイミングをみて状態監視に入るので、ある程度駅付近の景色は頭に入っており、余りにも列車のスピードが速くて通過しそう…となれば、ある程度の経験を積んだ車掌であれば、ヤバい!と感じて、非常ブレーキで列車を止めるということも可能です。

僕は幸運なことに、乗務していて通過と勘違いして…というような事象には遭遇したことはありませんでしたが、同僚などで、あと数メートルで通過になってた…なんて話を聞いたこともありました。

それにしても、この停車駅通過、最近よく聞くような気がします。
それだけメディアに取り上げられやすい…というご時世がらもあるのでしょうが、もしかしたら、もう一つの要因があるのではないか?と思います。
それは、自動放送の導入です。
僕が働いていた会社では、放送が車掌がやるもの!という意識が根強いのか、自動放送はごく一部の特急列車に導入されているだけで、基本的には車掌が肉声で放送しています。最近の新型車両でも導入しているのかな?
しかし他の会社に目を向けてみると、多言語の自動放送が導入されているところもあり、いいよな~~と思ったりも。
あの貧乏(失礼!)なハズのJR北海道でさえ導入しているぐらいです。

しかし、もしかしたらこの自動放送が停車駅通過を増加させているかも??とも思ってしまいました。理由は以下の通り。

車掌が異常に気づけないか?
自動放送が導入されると車掌はどうなるか…ベテランや、プロ意識の高い方ならともかくですが、大多数は自動放送に頼ってしまうでしょう。
導入線区になると、自動放送が流れる⇒多少の付けたしを自分で放送。という流れが多いですが、人によっては完全に自動放送に任せている人も見受けられます。少し脱線しますが、放送技量も声がボソボソと聞こえなかったり…やはり機械任せの弊害か、というのを感じたことも。

そうすると、周りの景色に気を配らなくても、ある程度は仕事ができてしまうことになるのです。自動放送が終わって、少ししたらボチボチ状態監視すればいいか…というように。
放送のタイミングが自分次第な状況では考えられないことでしょう。

すると、普段より明らかに速いスピードで列車が駅に差し掛かった時に、車掌が異常に気付いて非常ブレーキを掛けるまでに数秒の差が出てしまうことになります。
例えば時速100kmで運転していた場合の秒速は約28m。5秒も遅れれば、150m近くの距離を進みます。
数秒の差が、もしかしたら駅構内で何とか止まれるか、通過してしまい、次の駅まで運転しなければいけないのかという分け目になった可能性はあります。

近年、時々ニュースで耳にする、列車が数100mもオーバーランして停車駅を通過して止まったという事象、もしかしたら車掌が放送も行っていた時代なら、防ぐことが出来たということはないでしょうか?


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