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やばい!遅刻だ!!!?

鉄道員の絶対にやってはいけないことの一つに、「出勤遅延」いわゆる遅刻があります。
一般の会社員でも、もちろん遅刻などすれば、上司に怒られたりはするでしょう。しかし、鉄道員、特に乗務員はその罪!?は非常に重い。
近年は少しマシにはなりましたが、以前は担務を外されて数日の日勤教育を喰らったりすることも。
職場単位で、「出勤遅延ゼロ継続日数」なんてものを記録してプレッシャーを掛けてみたり、ひとたび出勤遅延が発生すれば、なんか上司がピリピリしたり。

そういえば、乗務員になった時の支援助役さん、温厚で優しい方だったけれど、ことあるごとに「出勤遅延だけは気を付けてな!」と何度も言っていたな。多分内申にもしっかり響くでしょうし、上司も色々と言われるんだろうな…大変だろうな。

まあ僕は駅員~車掌の11年弱、出勤遅延はせずに済んだわけですが、一度だけ、出勤遅延スレスレの事件がありました。
車掌や運転士の出勤時間は、列車の出発時刻に応じて分単位で決まっていることは、先の投稿でも記した通りです。
そのため、基本的には出勤時間には数パターンしかない駅の勤務とは異なり、まさしく無限に出勤時間のパターンがあると言って過言ではありません。

とある出勤日のこと。実家暮らしの僕は、朝ご飯を食べて出勤の準備も整っているので、あとは出るだけ…
8時ごろ、先に仕事に向かう親父を見送り、なんとなくTVを見ていました。
まあ8時半に自転車で出れば、余裕だな…
なんて思っていました。
ふと、その時目に入った次勤務確認票。これは出勤遅延を防ぐため、前勤務が終了した時に、次の勤務の日時を記入し、上司と突合して確認するモノ。これを持ち帰り、就寝前や起床後などに確認することになっていました。
(ただ油断していた僕、この頃はあまりこれを確認することはなかったことを白状します)
それを見た瞬間、僕の心臓が縮み上がるのを感じました。
本日の出勤時間、9時30分(ぐらいだった)
現在時刻、8時10分。(ぐらいだった)

因みに実家から最寄りの駅までは自転車で15分。そこから乗り換えを挟み、職場の最寄り駅までは一番接続が良くても45分。そして、そこから職場までが歩いて5分。
1時間以上は最低でも掛かる。

ああギリギリ間に合うじゃん!よかったね!と思ったあなた、甘い!!!
僕の職場の場合だが、出勤時間の10分前には出勤点呼を受けなければいけない。勿論その時には制服に身を包み、準備が出来ている状態でないといけない。
そして、基本的にみんな、出勤時間の1時間ぐらい前には職場に到着していることが多く、30分前になって職場に姿を現さないと、少し騒動になることも。
因みに、ギリッギリの1分前に上司が時計を睨んで苦い顔をする中で、滑り込みの出勤点呼をした人もいるが、それでセーフという訳ではなく、後でみっちりと反省文を書かされることになる。ギリギリセーフならそれでオッケーという訳ではない。守られるのは職場の出勤遅延継続日数というプレッシャーである。

次の瞬間、身体がもう機械的に動いた。迷わず普段使わないマイカーへ飛び込む。よくこの時、慌てて忘れ物をしなかったものだと今から考えても思う。
そして一瞬考える。
このまま職場まで車で直行した方が速いか?
いや、今ならギリギリで9時10分ぐらいに職場最寄り駅に到着する列車に間に合うかもしれない。
ただ、最初に乗る列車が少しでも遅れたら接続しないかもしれないから列車も危険だな…
かといって車だと渋滞に巻き込まれたらその瞬間に終了。
出勤遅延と出勤経路違反のダブルで怒られるな…

結局列車で向かうことにして、最寄り駅に一番近いパーキングに止める。普段は止めることのないちょっとお高めのところだが、間に合うかどうかの瀬戸際でそんなことを言ってられない。
クルマを降りて全力疾走、発車ベルが鳴り始めたところでギリギリで列車に飛び乗った。
これで第一関門は突破。あとは途中駅の乗り換えだが、これもなんとか成功し、無事に職場最寄り駅に到着するのを祈るのみ。普段はノンビリと睡眠したりして仕事への英気を養う時間だが、この時ばかりは気が気ではなかった。

祈りが通じ、定刻通り到着し、ドアが開くと同時に再びダッシュ。丁度終業して家路に着く同僚への挨拶もそこそこに全力疾走だ。
ロッカー室に駆け込み、着替え終わって時間を見ると、9時15分ぐらい。
ああ…ここまで来れば大丈夫だ。

ちょっとドキドキしながら点呼場のある部屋へ。
特に上司から怪しまれることもなく、無事に点呼を受けてその日の仕事を始めたのだった。
ちょうど朝のバタバタしている時間だったこともあり、うまく紛れ込めたのだろう。
ホッと胸を撫でおろしたのだった。

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