ミスミソウ

4/7公開ですが 一足早くレビュー。
押切蓮介原作マンガの実写化。
父親の転勤で東京から田舎の中学へ転校してきた野咲春花(山田杏奈)は、クラスメイト達から壮絶なイジメに遭っていた。
同じく転校生である相場晄(清水尋也)が気にかけてくれることで耐え忍んでいたが、クラスの中心人物である小黒妙子(大谷凛香)の取り巻き達によるイジメはエスカレートしていく。
見兼ねた両親の勧めで卒業までの僅かな期間を休むことにするが、春花の外出中に家が火事になり両親は焼死・妹は全身大火傷で意識不明に陥ってしまう。
失意の中、火事の原因がクラスメイト達にあることを確信する春花であったが…。
少女の復讐劇を通し、人の心の弱さ・脆さ・儚さを描いた作品だ。

大人になってしまえば遠い過去・狭い世界・窮屈な価値観であったと思えるが、学生時代は学校と家での出来事が全てであった
家族・友人・教師との関係性こそが社会であった
観ていく内にかつての日々が、あの頃の感覚が呼び起こされていく

現役学生に通じるか分からないが、MDウォークマンやガラケーが出てくるあたり、何となく時代背景も読めてくる
今と違ってパケホーダイなんてものは無いから、ネットの世界に逃避もできない
田舎ともなれば娯楽が少ないし、あったとしても大人が楽しめるものばかり
それ故、家族や友人との関係性が何より重要で意味を成していた。

誰かをイジメていた
誰かにイジメられていた
他人事だと決め込み見て見ぬふりをしていた
人それぞれに引っかかりとなるトリガーは異なるが、学生時代を経験した者ならば引きずりこまれてしまうモノが今作には宿っている
孤立するのが怖くて、どこかのグループに属していないと不安で、自分より価値が低いと思える奴がいないと安心できない
勉強もスポーツも恋愛もダメで惨めな思いに駆られても、最下層にいるのは自分じゃないと思えたのなら乗り切れる
イケイケな学生時代を過ごした連中のことなど知らないが、少なくともぼくはその手のタイプであった
極めて心が弱かった
その弱さにイジメの負荷が加わったのなら、一体どうなってしまっていたのだろう
見るに耐えないイジメの描写が続き、激しく胸を揺さぶられた

あなたもぼくも単に条件が揃っていなかっただけに過ぎない
仮に全ての条件が揃っていたのなら、踏み込んでいたかもしれない領域を垣間見る
他人事では済ませられない葛藤が、絶望が、衝動がそこにはあった
そして迎える狂気の胎動
語弊があるかもしれないが、それまでの鬱屈としたモノを一網打尽にしてくれた気がして、ゾッとしつつも興奮しながら観ている自分がいた
どれもこれも理解できてしまう凶行であった。

が、そこをピークに後は平行線を辿るだけ
雪空の下、戦い慣れしているかのような身のこなしで殺し合う中学生達の姿は、どこか絵空事に、グロテスクなシーンに孕むリアルさとチープさのアンバランス感も相まってファンタジーの世界に思えてくる
だからこそ、それ以外の場面においては確かなリアリティを描き帳尻を合わせていて欲しかった

警察がどう動いているのかも描かれない
原作にあった「事件性がない限り動けない」という一言が欠けているため、不鮮明な部分が多過ぎる
遺体にシートをかけて最低限の隠蔽措置をしていた原作とは異なり、遺体を完全放置な点もリアリティを削ぐ
起こるべきでないことが起きてしまうから引き込まれるものだが、起こるべくして起こる凶行ではルール無用の残虐ファイトにしか見えなくなってくる
無法地帯と化した田舎町に、彼女達を止める要因は何一つ存在しない
少女達の罪の意識こそ最大の枷となるが、殺し合いのシーンの不自然さと相殺して上手く機能しない
堕ちていく様を、その度に付き纏う葛藤を、途方も無い狂気をもっと浴びせて欲しかった。

人は痛い目に遭わないと、後悔しないと中々気が付けない
気が付いた上でやり直せることなら良いが、取り返しのつかないこともある
そんな時、どうしたらいいのだろう
たった一人でも信頼できる人がいたのなら、新たな一歩だって踏み出せるのかもしれない
けれど、彼女達の社会は崩壊し大事なモノは何もかも奪われてしまっていた
大人とは名ばかりのクソみたいな大人しかおらず、少女達を引き止めてあげられる存在はいなかった

何事にも終わりは訪れる
でも、その終わり方が必ずしも心地良いものだとは限らない
『ミスミソウ』とは、厳しい冬を耐え抜き雪を割るように花を咲かせる“三角草”のこと
それは、どんなに悲惨な状況であっても希望が残されていることを示していた
同時に、どれだけ覆い隠そうとも真実は明るみになることも示していた
物語が終わりに近付くにつれ、ミスミソウが咲かないことだけを只々祈った。

アレコレ書きましたが、今作に挑んだ10代の俳優達がスゴかった。
ドス黒い世界の中で最高に輝いていた!
その輝きだけでも見応えがあると思います。
ぜひ劇場でご覧ください。

青春★★★
恋 ★★
エロ★★
サスペンス★★★
ファンタジー★★★
総合評価:B

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マ行

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