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パーフェクトワールド 君といる奇跡

10/5公開ですが 一足早くレビュー。
Kissで連載中の有賀リエ原作マンガを実写化。
東京でインテリアコーディネーターとして働く24歳の川奈つぐみ(杉咲花)は、取引先との飲み会でかつて想いを寄せていた高校時代の先輩・鮎川樹(岩田剛典)と再会する。
大学時代の事故が原因で脊髄を損傷し車椅子生活を送る樹に動揺してしまうつぐみであったが、努力の末に一級建築士となり建築事務所で懸命に働く姿に再び心惹かれていく。
自分では相手を幸せにできないと恋愛を禁じている樹に対し、ひたむきに向き合い続けていくつぐみ。
やがて想いが通じ合っていくも、様々な困難が2人を待ち構えていた。
障害を持つ者と持たない者との恋模様を通し、何を失おうと今そこに在るモノが全てだということを描いた作品だ。

序盤、心がチクリとした
樹との再会を果たした後、つぐみの同僚が言う
「イケメンだけどないねー」と
チクリとしてしまうということは、偏見や差別の心をその身に宿している証拠
全く同じ人間がいたとして、唯一歩けるか歩けないかの違いがあったとしたのなら、あなたはどちらを好きになるだろう
そんな選択は実人生において訪れないけれど、ぼくだったら間違いなく歩ける方を選んでいる
一度好きになってしまえばどんな壁にだって挑んでいけるのかもしれないが、余計なリスクなんて背負いたくない
端から回避できるリスクであれば、避けたくなるのは至極当然
つぐみの心にだって少なからずそんな葛藤が巻き起こっていたと思う
でも、何故だろう
チクリとしたのはド頭だけで、それ以降は殆ど心を揺さぶられなかった。

大きく何かが破綻していたとまでは言わない
この作品をキッカケに、障害者へ抱く偏見や差別が消えたり価値観が変わる人だって中にはいるのかもしれない
ただ、映画としてやれることはもっとあったはず
原作へのリスペクトを示すことがもっとできたはず
削ぎ落とすところをバッサリ削ぎ落とし、向き合うべきことにガッツリ向き合えば、もっともっと高みを目指せる作品になっていた
元も子も無いことを言えば、原作未完の段階で映画化するべき作品ではなかった
省きに省いた数多の設定を全て取り入れた方がより面白くなっていたはずだし、人として大事なことも描けていたはず
良くも悪くも「カッコいい岩ちゃん、可愛い杉咲花ちゃん」止まりの作品であった

障害者が抱えるリアルな葛藤や、障害を持つ相手と付き合っていく上で生じるリスクや必要な覚悟
上辺の言葉で語っちゃいたが、そこにリアリティは宿っていなかった
原作に登場する主要キャラクターも殆ど登場するが、原作における重要な役目は担わない
が、中途半端にエッセンスだけ取り入れているもんだから、匂わせるだけ匂わせておいて何も起こらない
基本的に原作の表面しか切り取っておらず、本来描くべきことを疎かにしてばかり
有賀リエ先生が描く『パーフェクトワールド』を実写化するという意味を履き違えてはいなかっただろうか。

どんなことでもポジティブに受け入れられるつぐみ
冒頭から先輩大好きオーラ全開で、愛があれば障害なんて関係無いと言わんばかり
それでも別に構わないのだけど、その思考へ至るまでのプロセスがしっかりと描かれていない
モノローグという形で彼女に心の内を語らせてはいるものの、説得力に欠けている
あなたやぼくが生きる現実世界同様、言葉ではなく行動で示していて欲しかった
上っ面の言葉だけでは、自分も他人も変えられない

物語の中盤あたりまで、ひたすらつぐみのモノローグが続いていく
「ここはこういう感情ですよー」と言わんばかりにそれっぽいBGMまで挿入される
何もかもを彼女の心に語らせ、観客が思考したり感じる余地を与えてくれない
言い換えれば、それは観客を信用していないということにも繋がりかねない
全てを語らせずとも、そこに言葉は無くとも、スクリーンに映る登場人間達の想いがホンモノであれば佇まいに現れる
あなたもぼくも、それを感じ取れるだけの心を持っている
「私頑張る!」「私先輩が好き!」などと独白させる位なら、その想いを胸に宿したまま樹と接する彼女の姿を描いて欲しい
口にせずとも想いが行動に溢れ出てくるからこそ、人の心を突き動かしてしまうのでは無いのだろうか
観る者の心を震わせ刺激するのでは無いのだろうか
本来つぐみがしっかりと葛藤すべき場面を、俳優同士が生み出す化学反応を、映画として勝負すべき根本的な部分を、この作品は端から捨ててしまっていた。

これは登場人物達と同じ長野県出身のぼくだからこそ抱くものかもしれないが、長野の高校であるにも関わらず学年を跨いだ大規模な同窓会を東京で開催する理由が分からない
財前直見さん演じる母親が東京に1人で暮らす息子を案じるのは理解できるが、「故郷へ帰ってきなさい」と言うワードチョイスがナンセンス
「長野へ帰ってきなさい」でしょ、普通
あなたの故郷や母親に当てはめれば分かるはず
大昔でもあるまいし、わざわざ「故郷」なんてワードは口にしない

交際を反対していた親の雪解けの理由も説明不足、劇中で描かれる手術が何のための手術なのかも語られず不鮮明、肝心要の2人が手を取り合い壁を乗り越えていく様も希薄過ぎる
取ってつけたようなオリジナル展開のハッピーエンドも結構だが、タイトルの意味までも無理やり観客に押し付け想像の余地を奪いにくるスタンスがどうしても受け付けない
題材が題材だけに、観る者一人一人が想いを巡らすことのできるキッカケを描いていて欲しかった
魅力的な設定を改変したり無駄遣いする位なら、然るべきタイミングで実写化して欲しかった
こんなんじゃ良作マンガの浪費でしか無い
本来『パーフェクトワールド』が放つ輝きはこんなもんじゃないはずだ
原作にも観客にも敬意を払わないこの作品の在り方では、岩ちゃんファンや杉咲花ちゃんファンの心を射止めても、多くの人の心にまでは届かない。

青春★★
恋 ★★
エロ★
サスペンス★★
ファンタジー★★
総合評価:C

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WOWOWシネピック連載、映画boardにて記事執筆。映画サイトへの寄稿・ラジオ・web番組・イベントなどに出演。『GO』『ファイト・クラブ』『男はつらいよ』とウディ・アレン作品がバイブル。お仕事の依頼はこちらまでa.safety.pin.storm@gmail.com

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