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しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス

カナダの画家 モード・ルイスの半生を描いた実話ベースの物語。
1938年 カナダ東部 ノバスコシア州の小さな町
生まれつきリウマチを患い手足が不自由ながらも絵を描くことが好きなモード(サリー・ホーキンス)は、兄と叔母との口論をキッカケに仕事を探し始める。
買い物中に偶然居合わせた魚の行商を営むエベレット(イーサン・ホーク)が家政婦を募集していることを知り、町外れにある電気も水道も通っていない小屋へ住み込みの家政婦として働くべく押し掛けるモード。
仕方なくモードを雇うことにするエベレットであったが、衝突を繰り返しながらも次第に関係を深めていく。
そんなある日、モードが小屋の壁に描いていた絵に興味を抱く女性(カリ・マチェット)が現れるのであった。
モードが描く絵とエベレットとの絆を通し、誰かに必要とされることの喜びを描いた作品だ。

正直に書くが、ぼくはモード・ルイスの存在も彼女が描く絵のこともよく知らなかった
聞いたことがあるような無いような、そんな半端な知識しか持ち得ていなかった
でも、どうか安心して欲しい
知らずとも楽しめる
というか、知っていようがいまいが関係無い
同じ人間として、彼女が抱える想い・エベレットとの確かな繋がりに激しく胸打たれた

自信を抱けず塞ぎ込んでいる者にとって
自分には何も無いと思い込んでいる者にとって
己の存在意義を見出そうと足掻き続けている者にとって
一歩踏み出すためのキッカケを与えてくれる。

悲しい生き方とはどんな生き方のことを指すのだろう
リウマチで身体が不自由なことだろうか
借金に追われていることだろうか
孤児院出身であることだろうか
そうじゃない、きっと違う
自分には何の価値も無いと、誰にも必要とされていないと感じながら生きていくことだとぼくは思う

かつての自分もそうだった
いや、今だってそんな思いに駆られ胸が締め付けられてしまうことがある
部屋で一人唸り声を上げ、その感情の波が過ぎ去ってくれるのをひたすらに耐えている時がある
そんな経験の一度や二度、あなたにだって無いだろうか。

大人になり一定の年齢に達してしまえば、ある程度自分という人間の器の大きさが見えてくる
何ができて何ができないのかハッキリし、高望みすることをやめ自分に見合った生き方を選択する
中には抗い続けて一発逆転をかます者もいるが、何も成せぬまま朽ち果てていく者が殆ど
けれど、誰にだって何かしら取り柄はあるもの

卓越したペン回しの腕かもしれない
川に石を投げる水切りのスキルかもしれない
車をバックで駐車する際の手際の良さかもしれない
カラオケで心地良い合いの手を入れるセンスかもしれない
それらは特技と呼ぶには程遠く、履歴書に書けたり、金を稼ぐことに直結したり、多くの人から褒め称えられるようなものだとは限らない
が、この世界は広く、まだ見ぬたくさんの人がいる
自分のことを必要としてくれる人が、自分の取り柄に価値を見出してくれる人がどこかに一人いるかもしれない
そんな相手に巡り会うことができたのなら、どんな状況であろうとも前を向いて生きていられる
エベレットに出逢い変化していくモードの姿が、そう信じさせてくれた。

もちろん、巡り会うためには行動を起こすことが必須
一人塞ぎ込んで殻の中に閉じこもっている内は、誰にも出逢えるはずがない
外の世界に目を向けなければ、リスク承知で踏み出さなければ何も変わるわけがない
飛び出してみたところで何の保証も無いし、否定だってされるだろう
引き返したくなる位ツラい出来事のオンパレードで、外になど踏み出さなければ良かったと後悔だってする
だが、それでも尚外の世界に向き合い続けた者にだけチャンスは巡ってくる

決して深掘りはされないが、エベレットは孤児院出身
苦労もしたし、蔑まれたりもしただろう
人より多くの孤独を知り、耐え忍んで生きてきたはず
誰よりも不遇であったという自負がある
しかし、自分と同等かそれ以上の人生を歩んできたであろうモードに出逢う
憎まれ口を叩くことしかできない無骨な男であるが、同質の孤独や痛みを抱える者の気持ちを汲んで上げられる男
腫れ物に触るように接してくる者としか関わりのなかったモードにとって、真正面からブツかってきてくれるエベレットと出逢えたから意味があった
金で得られる幸せも確かにあるけれど、永遠には続かない
心に生じた孤独までは満たせない
綺麗事かもしれないが、互いに必要だと想い合える相手に巡り会える方が幸せなことだと思う。

成功した者のサクセスストーリーなど所詮結果論でしかなく寄り添えないが、この作品は違う
決してサクセスストーリーなどではない
社会的弱者が懸命に生き、この世界で己の価値を、己の存在意義を見出していく勇気の実話
今日を耐え抜くことで精一杯な人に、明日を生きるための希望を与えてくれる作品です
ぜひ劇場でご覧ください。

青春★★★★
恋 ★★★
エロ★
サスペンス★★★
ファンタジー★★★
総合評価:A

#映画 #しあわせの絵の具 #モードルイス #Maudie #サリーホーキンス #イーサンホーク #カリマチェット #ガブリエルローズ #アシュリングウォルシュ

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ミヤザキタケル/映画アドバイザー

WOWOWシネピック連載、映画boardにて記事執筆。映画サイトへの寄稿・ラジオ・web番組・イベントなどに出演。『GO』『ファイト・クラブ』『男はつらいよ』とウディ・アレン作品がバイブル。お仕事の依頼はこちらまでa.safety.pin.storm@gmail.com

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