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知り合いの寝顔

 昨日、アルゼンチンからチリに戻ってきました。やってきたのは再びチロエ島。カストロという観光地の宿に滞在しています。ここまでの道のりが遠かった。アルゼンチン・ネウケンからチリ・テムコまでがバスで8時間。一泊したのち、テムコからカストロまでが10時間。どちらもバス代が2000円程度と日本の感覚からすると破格なんですが、10時間は流石に疲れた。そんなときに、大抵やってしまう癖がぼくにはある。知り合いの寝顔を想像すること。

 この癖がついたのは、ペルーで2年間を過ごし、帰国したあと。新聞社に就職してからは、特に回数が増えました。仕事が行き詰まったり、上司に不満を覚えたりしたときに、ペルー人の寝顔を思い出す。たいてい人物は決まっている。サンドラ・ガルシア。主に一緒に活動していた、7つほど年が上の女性でした。まぁ反りが合わずに腹を立て合うこともあったけど、そういう直感的なコミュニケーションのおかげか最終的には仲良くなった。想像の中では、いつもいい夢見ているのか、口角が若干上がっていて、ベッドの下には愛犬・サシも寝ています。

 どうしてこんな癖がついたかといえば、一つには時差の関係でしょう。日本とペルーの時差はマイナス14時間。例えば、月曜の13時にぼくが東京・日本橋で上司を内心文句を言いながら、サンドラの寝顔を想像するとき、ペルーは日曜日の23時という具合です。この真逆な「地球の裏っかわ」という感覚が、想像を掻き立てます。

 もう一つは、寝顔を想像すると力が抜けるから。寝てる時間って、現代社会に生きる人間が、唯一解放されている時間だとと思うんです。そこでは、大口開けていびきをかいてもいいし、オナラしたって、よだれたらしたって、お尻をボリボリ掻いてもいい。そういう、太陽の光が届く間は気にしなければいけない一切のものから解放された人の姿を想像すると、フッと力が抜ける。想像するのは、知り合いの方が親近感が生まれていい。

 昨日は10時間という長時間のバス移動にも途中で飽きて、日本の知り合いの寝顔を脳内で思い描いていました。かつての上司も、結構穏やかな表情で寝るんですよ。誰かの腕にすっぽり収まって幸せそうに寝る女性や、生まれたばかりの息子を気遣いながら横向きで眠る同級生。想像の中ではみんな、解放された人間。エリートも落ちこぼれも、みんな一緒。実際は「日中のストレスで夜は歯ぎしりしてる」なんて気の毒な人もいるかもしれないけど。

 自分も同じだけれど、みんな朝目覚めた瞬間から動き出す。久々に戻ったチリ南部は寒い。午前9時に、宿でこうしてnoteを書いている。見た夢は忘れたけれど、どうせロクでもない顔をしていたんでしょう。今日はやることがたくさんあるけれど、日本の友人の寝顔でも想像しながら粛々と進めるとしよう。

しかしテムコは、日本的な風景がある街だったなー。

 

 

 

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