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返事の前に、ひと呼吸

チリの滞在可能期間が切れるので、再入国するためにアルゼンチンに出てきた。久々に長距離を移動したかと思えば、計画の無さに加え、それに対する危機感の無さから、昨日も今日も夜道を歩きながら宿を探す羽目になった。旅程のリズムがいまいちだ。こういうときは、余裕がなくなり、何か聞かれても生返事になり、結果さらなる不運に遭う。
とにかく、歩いた。昨日、国境の街サン・カルロス・デ・バリローチェに着いたのは午後9時前。チリの宿主には、午後4時には着くと聞いていたが、湖畔の道で地滑りが起き、回り道をしたらしい。
バスから見た街明かりからして、コンパクトだろうと判断し、徒歩で宿を探し始め、ターミナルから15分ほどの場所に安宿を見つけた。クレジットで払えないので、金を下ろして来いとおばちゃんに言われ街へ再び歩き出したはいいが、一向にATMも銀行もない。おばちゃんの言う通りに歩いてもない。仕方なく宿に戻ると、仕方なくクレジットで決済してくれた。なんだ、現金が欲しかったのか。こういうことはよくある。
宿は一泊750アルゼンチンペソ。1500円くらい。二人用の部屋に一人。奇妙なトイレとシャワーが合わさり、さらに奇妙なバスルームと化していた。

通常のトイレの横に、便座の形をした流し。三つのどの栓を捻っても水が出てくる。これは頭を洗うようなのか?よく分からないが、同じスペースにシャワーヘッドがあり、そこからもお湯がいくらか出たので、手早くシャワーを浴びた。トイレはビタビタになった。
ベッドはシングルで、マットレスはこれでもかというくらい低反発で、腰が痛かった。布団からは慣れない匂いがして、嫌な予感がした。というのも以前チリで、変な匂いの布団で寝た翌日に風邪を発症したからだ。予感は当たるもので、起きると喉が痛かった。この匂いが何を意味するかはよく分からない。
旅行でうまくいかないことに出会うと、それに慣れてしまって、全てどうでも良くなることがある。計画次第で改善できることでも、我慢すれば済むし、何より慣れが大体解決してしまう。でも、いくらか快適な時間が得られるなら、やはり少しは計画するべきと勉強になった。
朝、街に出てお金を引き出し、美人店員がいるパン屋でポンデケージョと小さなクロワッサンを買って、食べ歩きながら宿に戻った。チェックアウトし、ターミナルへ。昨日聞いたら、目的地のネウケンまでのバスはかなり本数が出ていて空席があるようだったけれど、11:40に着いたときには15:15がもっとも早いバスだった。

街を散策し、時間を潰した。サン・カルロス・デ・バリローチェは、周囲に多数の氷河湖を抱くアルゼンチンの観光名所。トレッキングやウィンタースポーツを楽しみに訪れる人が多いらしい。車道は通常の舗装道路だけれど、街の中心の歩道は石畳みで、家屋もタイルを貼ったものが多いので、どことなくグラデーションが自然で、景観が整っている印象を受けた。いいものと出会えたら買おうと思っていたナイフや、友人への土産などを買い、少し散財。

ネウケンは想像以上に遠く、午後10時過ぎにドミトリータイプの宿に着いた。これまた適当に歩いて探した宿。一泊1400円。まあそれなりに安いなと思い二泊することにした。若い宿主に「二泊分まとめて払いますか?」と尋ねられたので、そうですね、と即答。
小汚い中庭を通って案内されたドミトリーにはベッドが全部で5つ。二段ベッド二つに、なぜかダブルのベッドが一つ。おっさんが一人寝ていた。
疲れたので横になろうとすると、ザラザラしている。砂か何か分からないが、ヤモリの糞のような固形物もあるようだ。しかも超低反発。何?アルゼンチンでは低反発マットレスが主流なのか?

  全く。一泊分の支払いにしておくんだった。誤った判断は、だいたい疲れていて時間的に余裕がないときなど、精神的余裕がないときに起こる。計画の重要性をまた実感。「計画なんてつまらない!」って人もいるだろうし、概ね賛成だけれど、今はそういうときじゃない。
寝ていたおっさんは、暗がりの中でイヤホンもせずにスマホで動画を見始めた。アルゼンチン、好きになれるだろうか。朝になって、変な虫に体を噛まれていないことを祈る。

しかし今日は良いナイフを買った。寝る前くらいは、ポジティブな思考になろう。

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