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天皇杯は面白い。天皇杯2回戦 ヴィッセル神戸vs鈴鹿ポイントゲッターズ観戦記【Short letter】

天皇杯は面白い。

6月16日 天皇杯2回戦・ヴィッセル神戸(以下、神戸)vs鈴鹿ポイントゲッターズ(以下、鈴鹿)の試合は4対0で神戸の順当勝ちでした。

結果だけ見れば鈴鹿が一方的にやられた印象を受けるかもしれません。

確かに現地観戦をした僕の目にも鈴鹿の失点シーンは神戸に「いなされた」感が残る試合でした。

定規で測ったかのような等間隔のフラットな守備隊形で守る鈴鹿。練習のほとんどを守備練習に割いたと思われます。細かく神戸の攻撃対策を敷いた鈴鹿の守備を掻い潜り、神戸が得点を奪う度に「ゴールを決めるべき時に確実に決めるJリーグチームは流石やね」と苦笑いするしかなかったのです。

それでも、天皇杯は面白い。

試合後、僕は何度もそう思いました。

ノエビアスタジアム最寄り駅の御崎公園駅まで歩いて帰る時も、三宮の飲み屋街を歩いている時も、そう思いました。

なぜなら、天皇杯の魅力を再確認できたこと、JFLとJリーグの選手の違いなど改めて考えさせられたからです。

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天皇杯の魅力って何だろう?

今年の天皇杯は、Jクラブの出場チーム数に制限があった昨年度の特例措置の大会方式から通常のオープン大会方式に戻りました。

天皇杯は大多数のプロサッカー選手になれなかった者たちとプロサッカー選手が同じピッチに立ち、本気で戦える唯一の大会です。その魅力を再確認できている今年の天皇杯は面白いと思います。

ただ、天皇杯の魅力を一言で言うのは難しいです。

強いて言えば、僕は一発勝負のトーナメント戦を勝ち上がっていく難しさに集約されていると考えます。

たとえば上位カテゴリーチームの状態が70パーセントであったとします。但し、70パーセントの力をフルに出し切らないと下位カテゴリーチームに勝てません。

反対に下位カテゴリーのクラブは100%の状態に持っていき、かつ全力を出し切らないと勝てない。さらに、リーグ戦の日程を考慮しつつ、チーム状態のピーク時をどの試合に充てるのか、このチームマネージメントの駆け引きもあります。

選手の立ち位置から考えると、上位カテゴリーの選手、特にレギュラーではない選手からすると天皇杯の試合は自チームへアピールする絶好の機会です。

ただ、一発勝負の天皇杯では上位カテゴリー選手は怪我を負うリスクが増えるので無理をしたくはないのが本音です。一方で100%限界以上の力を出してくる下位カテゴリー選手に対して、相手をいなす技術だけで勝つのはそう簡単ではない。「下位カテゴリーに勝って当たり前」というプレッシャーもあります。その中で如何に個の選手としても勝負の難しさがあります。

これらの難しさを考えると、単に天皇杯の魅力は「ジャイアントキリングがあるから面白い」とは言いたくないです。

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天皇杯2回戦・ヴィッセル神戸vs鈴鹿ポイントゲッターズ

兵庫県は緊急事態宣言下であっても天皇杯2回戦を現地観戦できる機会に巡り合いました。

平日開催の集客をするため、この試合に関しては兵庫県サッカー協会に登録する審判員に対して特別割引がありました。嬉しい割引なのですが、これをラッキーだと思って購入した審判員は何人いたのでしょうか。

実際にこの特別割引があるので友人を誘いましたが、「神戸と鈴鹿の試合を観るのであればEURO2020やコパ・アメリカを観た方が勉強になる」と断られました。きっと友人と同じ考えの方が多いと予想できます。

僕は残念だと思うより、もったいないと思います。

なぜなら、実力差がある試合だからこそ、ただボールの行方を追わない試合の見方ができるからです。

審判のポジショニングに注目したり、攻撃時のゴールキーパーの位置を普段以上に観たりすれば、何か普段とは異なる「サッカーを観る練習」が楽しめる機会となります。特別割引があるからこそお得に観て欲しかったと思いました。


JFLとJリーグの選手の違い

今年初めてJリーグチームを現地観戦をして、JFLの試合よりスピードが違っていたことが印象に残りました。

ここで言うスピードとは、パス・走力・カウンター攻撃のスピードではなく、状況判断のスピードです。

相手選手からの寄せを感じた際、トラップ&ボールキープをするのか、ダイレクトでボールを捌くのかといった状況判断する場面があります。ここで状況判断のスピードが速ければ速いほど、試合を優位に進められる分かれ目となります。試合展開を考慮せず神戸の選手と鈴鹿の選手を見比べても、神戸の選手の方が1秒またはコンマ数秒速いと感じました。「次のプレー」に対する迷いが少なかったように思います。

ただ、状況判断のスピード以上に違いを感じたことがあります。

それは試合の流れを見切る感性、すなわち、勝負勘でした。


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ご参考価格
・天皇杯2回戦 ゴール裏指定席・一般前売り 1,600円
・第101回 天皇杯 公式プログラム 1,000円
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