目醒めー記憶喪失、歩行不能、嚥下障害を経て/SLE(全身性エリテマトーデス)という難病とともに生きる(7)

 手記の本旨である再燃のエピソードに入る前に、ここまでの記述で、人生の大きな転機(結婚、子供、昇進)を迎える度に、自分の身体を犠牲にして苦境に追い込まれてきた様に捉えられると良くないので、改めて強調しておきたい。
 実際、独りでマイペースで暮らしていた独身時代に比べて責任や負担は大きくなったし、結果的には再燃という悲劇を迎える事となったのだが、それは、本来自分でコントロールすべきものだし、特に自分自身の家族を持つことで得られた幸せは、何事にも代え難い。単に楽しい嬉しいという事ではなく、精神的な支えにもなっていて、私たちの様な身体的に問題を抱えている身にとっては心強いことは間違いない。
 ともかく、私は、最初の発病から26年経った40歳の年に、坂道を転げ落ちていくように、悪い状態へと向かっていった。

<2017年11月>

 第1章で記した通り、長期に渡り、脱毛や排尿時痛、頻尿、唾液減少、不眠等の体調不良に悩まされていた私は、掛かりつけ病院で再燃と結論付けられるのを恐れるあまり、日々の不調や微熱程度のことは町のクリニックに頼る事が多くなっていた。10月にも受診して、抗生物質や解熱剤を処方されていたが、一旦落ち着いて向かった河口湖旅行から戻って数日後、やはり高熱が出て、中々下がらないので、再度クリニックを訪れた。
 受付スタッフから問診票とペンを渡されて、必要事項を書こうとした時、私は驚愕した。ペンを持って名前を書こうにも、まっすぐな線すら書けず、ぐちゃぐちゃの幼児の落書きのような筆跡となったのだ。私は一瞬、自分の頭がおかしくなったのかと動揺した。同行してもらっていた義母に代筆を頼むと、義母は受付の女性に断りを入れて、代筆してくれた。その女性も、特に気に留めず、高熱がある時は仕方ないですよ、と言った反応だったので、私もそんなものかと少し安心したのであった。
 前回の検査でもインフルエンザは陰性で、この時は、腹を下し気味だったので、巷で流行し始めた、ウィルス性胃腸炎の類だろうとの診断となり、またもSLEとは無関係の対処をしていた。
 こうして書き記してみると、全くもって愚かしい行動だが、きっと当事者の読者の方々なら分かって頂けるだろう。この恐ろしい病気が猛威を振るっているなんて、自分ではすすんで認めたくないという事を。
 そのまま三日ほど休んだ後、解熱剤や抗生物質を飲みまくって、重要な仕事を何とかこなした私の身体は、週末にかけて、一気に酷い状態に陥っていった。

〜次章〜壊れゆく感覚(2)

ありがとうございます!この様な情報を真に必要とされている方に届けて頂ければ幸いです。