♪　2曲目　♪
【　USA for Africa ／We Are The World　】　

先週Vientiane International School（VIS）で行われたイベント「One World Day」についての記事を投稿しましたが、その中で高校時代のことを思い出す瞬間がありました。イベントの前半に行われたステージ発表は、各国の歌や踊りや衣装などを披露するものでした。

このステージ発表の最後に、会場全体で「We Are The World」を歌う場面がありました。この曲はアフリカの飢餓や貧困の救済を目的として1985年に作られたキャンペーンソングです。この活動に参加しているのは当時世界的に知られているミュージシャンたちで、マイケル・ジャクソン、ライオネル・リッチー、ボブ・ディラン、ビリー・ジョエル、ブルース・スプリングスティーン、スティーヴィー・ワンダー、ダイアナ・ロス、シンディ・ローパーなど、洋楽に疎い私であってもどこかで名前を聞いたことがある錚々たるメンバーでした。

私がこの曲を知ることになるのは、高校時代の宗教の授業でした。私の高校はカトリック系の高校で授業に宗教があったのですが、聖書のついての理解を深めるだけではなく、社会問題などについて考えたり議論したりすることも多く、現在ならばリベラルアーツと呼ばれるようなものだったと記憶しています。そして高校1年生の最初の頃、授業で「We Are The World」の制作過程をまとめたドキュメンタリー映像を見たのでした。そこにはトップミュージシャンそれぞれが持つ個性を活かしながら、どのように一体的な楽曲にすることができるのかについての試行錯誤が描かれていました。個々の主張、葛藤、トライ＆エラー、対立、歩み寄り、調和など、人間関係を調整し合意形成がなされていくリアルな様子を見たわけですが、今後自分も参考にしようというような客観的で理性的なレベルではなく、その時点では単に「人間関係における大切なヒント」という漠然とした受け取り方でした。

この曲との関わりはそれで終わりませんでした。この曲はその数か月後に行われる学園祭と結びついた思い出になったのです。当時の高校の学園祭は、各クラスが教室を利用した企画、中夜祭でのステージ企画、ねぶた企画の3カテゴリーのどれかを選んで参加する形でした。高校1年生のときのクラスは、そのうち中夜祭でのステージ企画を選択したのでした。

また当時はその年ごとに学園祭のテーマがあり、ねぶた企画を除いて全ての企画がこのテーマからきちんと派生しているものでなければなりませんでした。高校1年生のときのテーマは「時代」で、クラスではステージでの発表内容とテーマをどのように繋げて表現するか試行錯誤していました。ただ、私は各クラスから2名ずつ選出される学園祭を実行する委員会（文化委員会と呼ばれていました）に所属していたため、運営業務にかかりきりで、クラス企画にはほとんど携わることはできませんでした。まあ文化委員会の業務は今思い出しても激務で、現代の言葉を借りるならば「ブラック委員会」だったのです。一週間の中で放課後に委員会活動がない週はほぼなく、7月終わりの学園祭に向けて、4月の入学当初から委員会活動が盛んに行われていました。そして5月に入ると週２～３回集まることも珍しくない状態となり、私は寮生だったので下校時間が過ぎても話し合いが続いたり、一度食堂で夕食をとってから会議室に戻って作業したりすることもありました。

私は文化委員会では「広報・宣伝パート」に所属していて、学園祭の進捗状況を校内新聞で広報、各クラスの企画の紹介記事を書くためにインタビュー、学園祭ポスターやグッズのデザイン公募、グッズ製作（Tシャツ、うちわ、テレホンカード、法被など）のための業者との折衝、グッズの注文受付と集金、函館市内の学校やお店へのポスター配りなど、学園祭を盛り上げるための様々な活動に携わりました。

そのため私にとって高校の学園祭は「過酷なイベント」として脳裏に焼き付いています。その学園祭が何とか当日を迎え、1日目の夕方に中夜祭が行われたわけですが、そこで私のクラスはステージ発表をしたのです。発表内容は20世紀前半からの時代の様子をコントのように演じながら当時を象徴するような音楽をBGMとして流すものだったと思います。そこには戦争などの歴史も含まれていて、そうした時代の変遷の最後に平和を願うメッセージとともに「We Are The World」が流れるというものだったと記憶しています。コントそのものや全体的な流れは粗い部分もありましたが、高校1年生の発表と考えるとなかなか素敵なメッセージ性を持っていたと思います。少なくとも私には、そのステージ発表はキラキラしたものに見えて、最後に流れる「We Are The World」の衝撃は大きくて非常に感動したことを覚えています。

学園祭を作り上げる活動は楽しいことよりも辛いことの方が多かったのですが、自分たちが一生懸命考えたことが具現化され、盛り上がっている様子を見ていると、辛くてもう二度とやりたくないという思いよりも、達成感・充実感・やり甲斐が上回っていたのでした。そうしていつの間にか、来年も文化委員になろうと考えるようになっていましたね。しかしいざ次の年に文化委員になって、過酷な活動が始まると、やらなければ良かったと立候補した自分を恨んだものでした。ただ高校2年生のときも当日の感動が作り出すポジティブ錯覚に陥って、結局高校3年生でも文化委員になってしまうのでした。

「We Are The World」を聞くと、そんな風にネガティブとポジティブな感情がグチャグチャに混ざり合って、結果としてかけがえのない素敵な経験となった高校時代を思い出すのでした。

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