♪　５曲目　♪
【　冨田茂 /ハイドライド3「異次元の思い出」　】　

この前、ある記事に目が留まりました。その記事の見出しは「ハイドライド39周年」でした。39年前の1984年12月13日に発売されたゲームのタイトルが『ハイドライド』です。このゲームはT&E SOFTが開発し発売したアクションRPGです。

もともとはPC-8801のゲームとして発売されましたが、その後、他の機種でも発売されました。ファミコンでは『ハイドライド・スペシャル』というタイトルになっていたと思います。私の家にはファミコンはなく、兄の要望で買ってもらっていたMSX１とMSX２という機種があり、それらの機種の『ハイドライド』で遊んだ記憶があります。

そしてその記事を読んでいると、懐かしさが溢れてきてYouTubeで動画を見ていると、私にとっては『ハイドライド』以上に思い出深いゲームの関連動画が出てきたのです。それは『ハイドライド３』の動画でした。

『ハイドライド３』はハイドライドシリーズの一つで、1作目の『ハイドライド』、2作目の『ハイドライドⅡ』に続いて発売されたシリーズの完結編の位置づけになっています。2作目はローマ数字の「Ⅱ」が使われていますが、3作目は算用数字の「３」が使われています。これは「Ⅱ」を発売したときに、続編は作らないと公言していたためというエピソードによるもののようです。

『ハイドライド３』が発売されたのは1987年で、私は小学4年生でした。このころになると、居間にあったMSX２で遊ぶのはもっぱら私で、『ハイドライド３』以外では、ファミコンでも発売されていたドルアーガの塔の続編にあたる『リターンオブイシター』、シューティングゲームの『スーパーレイドック』、『ハイドライドⅡ』、古代遺跡を舞台としたアクションゲームの『ウシャス』などはかなり熱中しました。

『ハイドライド３』には～THE SPACE MEMORIES（異次元の思い出）～という副題がついていて、この副題がオープニング音楽の曲名にもなっています。ファミコンのゲームはゲームデータのバックアップ機能が少しずつ増えていたと思いますが、MSX２では外付けした専用のテープレコーダーでデータのセーブ（書き込み）やロード（読み出し）をしていました。そのためテープ巻き込み事故が発生して大切なデータが失われないか、データのセーブやロードのときはいつもドキドキしていました。そのため巻き込み事故が心配で複数のテープにセーブすることも多かったですね。セーブ・ロードのときにレコーダーが聞こえてくる「ピーーッガッ、ピーーガガガガーーー」という音も懐かしい思い出の大切な要素になっています。

このようにゲーム音楽も幼き日の思い出と一緒になって脳裏や心に刻まれています。『ハイドライド3』が発売されたとき、T&E SOFTは5周年を迎えていて、5周年記念の付録がついていました。その一つがT&E SOFTの様々なゲームの音楽をまとめたテープで、テープが擦り切れるほどという表現がぴったり当てはまるように、私は繰り返し聞いていました。このテープの最後の曲はハイドライド3のオープニング音楽の「異次元の思い出」でした。なお『ハイドライド3』の音楽の作曲は冨田茂という方が手掛けています。

このゲームに私が熱中した要因として考えられるのは、ゲームの壮大な世界観にあったと思います。草原のフォールドから始まり、200階にも達するハーベルの塔、雲の上の街、地下洞窟のおどろおどろしい雰囲気、別の次元にある幻想の街など一つ一つはファンタジーRPGの典型的な場面設定ですが、それらをまとめて盛り込み、さらには宇宙船や宇宙空間という設定も追加されていて、圧倒されたわけです。

また、攻撃魔法がないこと、重量の概念、食事の必要性（ポーション類の「体力回復剤」でライフを戻すだけでは駄目で、決まった時間に「食糧」を食べないと徐々にライフが減っていく）、睡眠の必要性（寝ないと腕力が低下していく）、日没（日没後はモンスターが凶暴になる）・日の出などの時間経過など、様々なゲームシステムに新鮮さを感じていました。

さらに、ゲームのメッセージのデフォルトは英語で、言語設定を日本語に直すのも興味深かったですね。誰かに見られているわけでもないのに、何となく英語設定でゲームしているのが格好よく感じて、英語設定のままで遊んでいました。分からない単語は家にあった辞書で調べながらというのも、謎解きが増えた感じで面白がっていました。そういえば、同じように熱中した『リターンオブイシター』の場合は、そもそも英語設定しかなくて、説明書も英語で書かれていて悪戦苦闘でしたが、そうして異なる言語によって示された内容を一つずつ明らかにしていく過程は、貴重な経験となっていました。

そのシチュエーションは幼い頃に読んでいた『まんが日本の歴史』で、杉田玄白たちがターヘルアナトミアの翻訳に悪戦苦闘した話と重なるなあと勝手に思っていました。そうした過程にワクワクしながら、自分はすごいことをしているんだという自負も加わって、私は興味深い設定と英語とが混ざり合った『ハイドライド３』の壮大な世界に魅了されたわけです。

それから、私は遊んでいたMSX２という機種はキーボードもついていて、ゲームソフトで遊ぶ以外にベーシックプログラムを作ることができました。そのため小学校の低学年からベーシックでちょっとしたゲームを作っていたのです。また英語については小学１年生から、教会や近所に住んでいる外国の方のご家庭で習っていたので、当時で考えると色々恵まれた学びの環境だったように思えます。

しかしICTにしても英語にしても、現在ではどちらも後塵を拝する状態になっています。果たしていつごろからブレーキがかかってしまったのでしょうか。「ハイドライド３」のオープニング音楽によって、懐かしい思い出が溢れ出てきたわけですが、同時に、当時の恵まれた学びの線の延長上に現在の自分がいないもどかしさや不甲斐なさのようなものにも気づいてしまったというのが正直な感想です。

今回の懐かしさには「ほろ苦さ」も混ざっていました。

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