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羽田空港での航空機衝突事故に思うこと

能登半島地震の悪夢から一夜明け、徐々に被害の実態が明らかになりつつあった2024年1月2日の夕刻。
もうひとつのショッキングな出来事が日本列島を震撼させました。

北海道の新千歳空港を出発、東京国際空港(羽田空港)のC滑走路に着陸しようとしていたJAL(日本航空)のJL516便(A350-900XWB・JA13XJ)が、滑走路上で能登半島地震の救援物資輸送任務に就いていた海上保安庁のDHC-8-300(JA722A「みずなぎ1号」)に衝突。両機とも炎上しました。
JL516便に搭乗していた乗客367名・乗員12名は、乗員の冷静な誘導と乗客一人ひとりの秩序の取れた行動により、14名の負傷者を出しながらも、キャビン(客室)に火が回る前に全員が機外に脱出することができました。
その一方で、大破・炎上した「みずなぎ1号」に搭乗していた海上保安庁職員6名のうち5名が殉職、残る1名(機長)も重傷を負っています。また、JL516便の貨物室に預けられていたペット2頭もジェット燃料による火災から救出することができず、命を落としました。

JL516便に運用されていたA350-900XWB(写真は事故機と同型のJA12XJ号機)は、2015年にカタール航空で路線就航を果たしたばかりの最新鋭旅客機。JALでは2019年より国内線の幹線ルートで運用され、利用者に好評を博していますが、今回の事故は同機にとって初の全損事故となりました。
関係者や旅客機ファンの間では衝撃が走るとともに、炭素繊維製の軽量化された機体ではあるものの、出火からキャビンに延焼するまでの時間がある程度長かったため、結果的に搭乗者全員が無事に脱出できたという意味で同機の構造を評価する意見も出ていました。

事故の原因としては、「みずなぎ1号」が「(離陸に備えて)C滑走路の手前で待機せよ」という管制官の指示を誤認してC滑走路に進入してしまったこと、そもそも滑走路への誤進入を防ぐためのレーダー監視や標識の運用が不充分だったこと、管制官とパイロットのコミュニケーションの行き違いなどが指摘されています。
この点については当事者や関係当局による事故調査の進展を見守る形になると思いますが、これまでは管制官とパイロットの口頭のやりとりによる部分が大きかった航空管制が、今回の事故を教訓に標識やレーダーその他保安設備の強化も含め、より事故を未然に防ぐ仕組みのものに生まれ変わればと思うばかりです。

さて、今回の事故は、コロナ禍の4年を乗り越え、以前のように航空機を利用する機会が増えている私たち利用者サイドにとっても、航空機で緊急脱出を要するインシデントに遭遇した際にどのように行動するべきかを問われる機会になりました。
旅客機ファン歴35年を迎えた一利用者の視点から、航空機での緊急脱出に備えて求められる行動を、3つほどまとめてみました。

1.搭乗している航空機で緊急事態が発生した際は、客室乗務員・運航乗員(操縦士・副操縦士)の指示に従い冷静に行動すること。クレームの類は厳禁。
もし、乗務員の対応に問題があったと感じた場合は、安全な場所に避難してから冷静に伝えること。

2.航空機からの緊急脱出の際は手荷物を持たないでくださいというルールになっているが、財布(現金・クレジットカード)とスマートフォン、自宅・愛車の鍵は緊急脱出の前にポケットに入れておくこと。
冬場の場合は、上着も頭上の荷物棚には入れず、前の座席の下に置いていつでも着込めるようにすること。
※ただし、緊急脱出を行う場所が海上の場合は、最低限の所持品を携帯して脱出したとしても、それらの品がかなりの可能性で水没するため留意が必要です。

3.旅先で置き忘れたり、搭乗している飛行機とともに焼失したりしては困るような被服、宝飾品の類があれば、敢えて旅行には持って行かないこと。
旅行には極力、無くしても心残りにならない被服や宝飾品、鞄を使用すること。
※これはもともと、忘れ物の多いADHD当事者にとって有効なライフハックですが、航空機での緊急脱出を要するインシデントに巻き込まれて大事なものを失うことを避ける意味では、他の発達障がい当事者や定型発達の方も実践する価値はあると思います。

最後になりましたが、JL516便と海保機「みずなぎ1号」の衝突事故で殉職された5名の方、犠牲になられたペット2頭に哀悼の意を表するとともに、負傷された方々の1日も早いご回復をお祈りします。
あわせて、冷静な対応で516便の搭乗者全員を無事機外に脱出させた乗務員の皆様に深い謝意を表し、今後の航空管制・保安設備の安全向上を願いつつ結びとさせていただきます。

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