[EDH]ガチ・カジュアル論争は終わらないので複数個デッキを持とう

終わらないEDHのガチ・カジュアル論争

 EDHにおけるガチ・カジュアル論争は定期的に燃えて、議論され続ける話題です。
 EDHが盛んなアメリカでもハウスルールに疲弊したりするプレイヤーが少なからずいるようです。

 なぜガチ・カジュアル論争が終わらないのか……というのは明確です。
 EDHはカードゲームの「試合に勝つ」という部分とパーティーゲーム「勝敗は重視しないで楽しむことが大事」という部分で矛盾が生じているからです。

めちゃくちゃ揉めるレベル5~6とBattle

 EDHのガチ・カジュアル論争は特にレベル5~6帯とBattleで生じています。ここが全ての火種と言っても過言ではありません。

 まずは日本公式サイトが掲げているEDHレベルの指標と、晴れる屋が掲げている指標を見てみましょう。

デッキパワーレベル(日本公式)

https://mtg-jp.com/gameplay/format/commander.html

 これはMTG日本公式が掲げているEDHを楽しむためのデッキパワーレベル指標です。

統率者テーブル分け(晴れる屋)

Party

 ボードゲームやパーティゲームを思わせるカジュアルな統率者戦を楽しみましょう。

◇構築済みデッキそのままやすこし改造したものなど
◇ダメージによる決着がほとんど
◇ゲームスピードはゆったり

Battle

 合計120点のライフを削り切る現実的なプランを獲得したならぜひ「Battle」に参戦しましょう。

◇明確な勝利パターンを持っている
◇強固な盤面を作る強力なカードや勝利に直結するコンボが使われる
◇ゲームの決着まではそこそこ時間がかかる(運がいいと数ターンで終わることも)

Challenge

 ここまでやってきたなら、ありとあらゆる戦法で勝利を目指しましょう。

◇高価なカードや「再録禁止カード」もつぎつぎ登場。
◇統率者自身がコンボに絡むなど、強力なコンボを目指すデッキが多い。
◇5ターン以内で決着することも。

The Game

 正真正銘のガチデッキがそろいます。

◇ありとあらゆる強力な戦術が肯定される
◇統率者からサーチカード、マナ基盤まで最上位のカードが用いられる
◇ゲーム展開が非常に高速でスリリング。2ターン目に決着することも。

MTG公式と晴れる屋のレベル分けについて

 この2つのEDHのレベル分けについては大体同じことを言っていると考えておりまして、MTG公式のデッキパワーレベルをより分かりやすく言い換えたのが晴れる屋のテーブル分けだと認識しております。

 私の認識では

レベル1~4 = Party
レベル5~6 = Battle
レベル7~8 = Challenge
レベル9~10 = The Game

 だと捉えております。

 ここで注視したいのがBattleとレベル5~6です。
 この二つのレベル帯はどちらも「明確な勝利パターンを持っている」や「明確な勝利を目指し始めたデッキがこの辺り」と文中で勝利について言及し始めております。

 Partyやレベル1~4では「ワイワイ楽しむ」、Challengeとレベル7以降では「真剣勝負する」と明確にすみ分けされているのであまり揉めませんが、Battleとレベル5~6では言うなれば「ワイワイ楽しみながら真剣に勝負する」といった中間層なので、認識の違いで多々揉めます。

統率者戦ルール委員会による「統率者戦の哲学」

 そもそも統率者戦はどう楽しむゲームなのか?
 統率者戦ルール委員会では「統率者戦の哲学」として、以下のように考えが発表されています。

以下ChatGPTにて和訳

「コマンダーの哲学 コマンダーは楽しみのために存在します。
それは社交的でインタラクティブな、複数人参加型の『マジック: ザ・ギャザリング』フォーマットで、ワイルドな相互作用と壮大なプレイが満載です。トーナメント形式のマジックの代替として特別にデザインされました。
 部隊を率いるアバターを選ぶこのフォーマットでは、共鳴する体験に焦点を当てています。各ゲームはプレイヤーが共有する旅であり、社会的な契約に基づき、各プレイヤーが全員の経験に配慮することが求められます。
 これによってプレイヤー同士の相互作用、ゲーム間のバラエティ、さまざまなプレイスタイル、そしてポジティブな共同体の雰囲気が促進されます。
 理想的なコマンダーゲームの最後には誰かが勝利するでしょうが、すべての参加者がデッキ構築とゲームプレイを通じて自己表現の機会を持つことができるでしょう。

 コマンダーのルールは、マジックのゲーム内でこれらの経験を最大限に引き出すようにデザインされています。指揮官の追加、より大きなライフトータル、デッキ構築の制限は、フォーマットの特徴を強調しており、デッキのバラエティを増やし、参加と表現の機会を増やしています。

 バンリストの目標も同様です。競技プレイやパワーレベルを規制することを目指すのではなく、それは個々のプレイグループに委ねるべき判断です。バンリストは、フォーマットの中核にあるポジティブなプレイヤー体験を脅かすカードや、合理的な自己表現を妨げるカードを示すことを目指しています。リストの主な焦点は、極端な一貫性、普及度、および他のプレイヤーの機会を制限する能力によって問題があるカードです。

 一つのルールだけがバンの基準を確立することはできません。多くの緩和または悪化要因があります。一部のカードは単一の軸で極端なものを表していますが、他のカードは複数の小さな問題が重なったものです。
 以下のリストは詳尽ではなく、チェックリストでもありませんが、カードがコマンダーゲームで求められるポジティブな体験にどのように対峙しているかを示しています。

 次のカードが含まれます:
• 深刻なリソースの不均衡を引き起こす • プレイヤーに突然勝利をもたらす • プレイヤーが有意義にゲームに貢献するのを妨げる
• 他のプレイヤーに特定のカードをプレイしなければならないと感じさせるが、それらのカードも問題がある
• 他のプレイヤーにとって対話が非常に難しいカードであり、特にデッキ構築時に専用の狭い反応が必要な場合
• フォーマットの多人数性やコマンダーの特定のルールと相互作用が悪い • 繰り返しのゲームプレイをもたらす
 禁止カードは、これらの基準のいくつかを著しく満たしている可能性があります。一部の基準を一部満たしているカードが全てバンされる必要はありません。

 バンリストへの追加や削除には慎重を期しています。コマンダープレイヤーはプレイと個性化を通じてデッキに感情的な愛着を抱くことがよくあり、その経験を非常に尊重しています。私たちは、その絆を必要な場合以外は壊したくありません。

 コマンダーは柔軟なフォーマットとしてデザインされています。私たちはグループに、ルールとバンリストをベースラインとして、自分たちの体験を最適化するために使用するようお勧めしています。これは個人が自分のビジョンをプレイグループに押し付けるためのものではなく、プレイヤーが目標を話し合い、ルールを調整して目標に合うようにすることを奨励するものです。

 このフォーマットは壊れる可能性がありますが、私たちはゲームがより楽しいと思います。
 フォーマットの哲学に関する議論の場が、RC Discord サーバーにあります。あなたの参加を楽しみにしています。
こちらからすぐにコマンダールールページにアクセスできます。
https://mtgcommander.net/index.php/rules/

 端的にまとめると「勝利することは重要ではなく、楽しむことが重要」と言っています。つまりはこの考えに照らし合わせるとParty帯が正しいEDHの遊び方で、それ以降の勝利を求めるデッキ構築は邪道というのがルール委員会の見解となります。

勝利を目指す故に揉めないChallengeとThe Game

 ここでゲームプレイ以外でほぼ揉めないChallengeとThe Gameに目を向けましょう。(Challenge枠でThe Gameを持ち込んだってことで揉めてる事例があったらすみません)
 この二つが揉めない理由は明確です。楽しむことよりも勝利を前提条件にしているからです。
 なので強いデッキを持ち込むのは自由、弱いデッキを持ち込んで負ければ自己責任という事で済みます。

 ChallengeとThe Gameの違いについては、私の考えですとデッキをフルパワーで組んだのがChallenge、メタと統率者まで考えてデッキ構築したのがThe Gameだと思っています。

 Challengeのルールで最も分かりやすく、納得できるのが晴れる屋の統率者神決定戦に対抗して開かれた最強人類決定戦だと思っています。

 従来のEDH禁止カードに加えて独自の禁止カードを制定して、デッキレベルを調整しております。環境の定義として分かりやすいです。

Battle帯で揉めるのはガチ・カジュアルの認識の違い

 話をBattle帯でのガチ・カジュアル論争に話を戻しましょう。
 このレベル帯は「明確な勝利を目指している」デッキパワーレベルでありながら、ゲーム自体を楽しむカジュアルさも兼ね備えなくてはいけません。

 ルール委員会の言葉を借りるならば

  • リソースの不均衡

  • 突然の勝利

  • 他プレイヤーのゲーム妨害

  • 対話拒否

  • 繰り返し精度が高い

 などの要素が含まれるデッキはカジュアルを逸脱する恐れがあります。
と言いますが、これを全部守るのは正直不可能です。

 「じゃあルールを決めてカジュアルにすればいいんじゃない?」と思うかもしれませんが、それも難しいです。
 例えば「5ターン以内の勝利禁止」としても6ターン目で絶対に勝てる場を作る、「戦闘ダメージ以外での勝利禁止」としても無限コンバットで勝利する、「サーチ禁止」としても大量ドローで補うなど、ルールの隙を突いてカジュアルから逸脱するデッキはいくらでも作れます。

 ガチ・カジュアルの明確な基準はないので、それをいきなり合わせるというのは不可能です。

 アメリカではEDHの試合を始める前に自分のデッキ解説やそれぞれの考えを話すディスカッションの場を設ける場合もあるようなのですが、カジュアルの認識を合わせるのはそれくらいしないと難しいという裏付けです。

いくら「自分カジュアルです!」って言っても信用出来ない

 あとよく聞く話で「強ジェネラル使ってるけど、デッキの中身はカジュアル。それなのにガチだと言われる」というのがあります。

 まぁ、当然です。いくら「自分カジュアルです!!」って声高々に訴えても、ゲームが始まる前の公開情報はジェネラルだけです。
 そのジェネラルが強ければ、当然デッキも強いと警戒しますよね?

 また「サーチ打っただけでガチ認定」「魔力の墓所置いただけでガチ認定」という話もありますが、それも同様に強い動きをしたらそのデッキも強いと警戒をします。

 これが気心知れた友人同士ならともかく、よく知らない人にされたら当然警戒されます。

 あなたの視点からカジュアルでも、相手はそれを知ることは出来ないので信用はされません。

レベルを合わせる為にEDHのデッキは複数個持とう

 それならばどうすればいいか?
 一番は気心の知れた仲間と友情を育んで、ゲームプレイを重ね、認識をすり合わせることです。

 それがかなわないのであれば、ガチ・カジュアルの明確な基準を決めることはあきらめて、デッキを複数個用意しましょう。

 それでプレイしながら調整して、お互いにちょうど良いパワーレベルのデッキを使って楽しむのが一番です。

 「こんな高いデッキをいくつも持てる訳ないだろ!」と考えたあなた、そのデッキはChallenge以上の可能性が高いです。

 用意するデッキのおすすめは自分が組める一番強いデッキを頂点、構築済みから5枚くらい入れ替えたデッキを底辺として、その間の強さのデッキを2~3個以上用意しておくと良いと考えます。

 更に言えばランプ、コントロール系、殴りジェネラルなど、デッキタイプをばらけさせるとなお良いです。

 「デッキレベルを下げるって言われても良く分からん」という方は以下の方法を参考にしてみてください。

値段を制限する

 分かりやすい方法としてはカードの値段に制限を設けることです。
例えば1万円でデッキを構築する1万円EDHなんて分かりやすい例です。

 基本的にサーチカードなど、cEDHで使われるようなカードは値段が張りますので、値段で制限すると相当デッキパワーを抑えられるかと思います。

構築済みデッキをベースに考える

 次に分かりやすい方法としては構築済みデッキを元にデッキを改造していく方法です。
 最近の構築済みデッキはよく出来ていて、そのままでも十分に戦えるスペックを持っています。しかし、そこは構築済み。マナベースがきちんと組まれているデッキに比べたら脆弱です。
 そこで構築済みから数枚入れ替えるなどの方法で、構築済みデッキをベースに改造していけばある程度のパワーレベルにまでは抑えることが出来ると考えております。

他プレイヤーにも益があるカードを入れる

 デッキ構築にも寄りますが、他プレイヤーにも益が出るカードを複数枚採用することで、カジュアルアピール出来る可能性があります。
 例えば全員に影響のある「吠えたける鉱山」、自分と特定のプレイヤーを指定する「捧げ物」サイクル、誘引のキーワード能力などです。
 これらのカードを採用することで「みんなでゲームを楽しみたい」という気持ちをアピールすることが出来ます。

部族でデッキを組む

 十分な強さを持つゴブリンやエルフを除いて、部族を限定して構築をすることでデッキパワーを抑える事が出来ます。
 部族ロードをジェネラルにして組んだ統率者デッキはそれだけで美しさがあります。
 ただし、クレンコや始祖ドラゴン、マーウィンなどの一部の統率者はChallenge以降でも通用するほどの十分な強さを持つので注意が必要です。

他プレイヤーの行動に対して誘発能力が発動するカードを控える

 例えば「リスティックの研究」「エスパーの歩哨」「息詰まる徴税」など、他プレイヤーの行動で何かしたの誘発能力が発動するカードは他プレイヤーからのヘイトを稼ぐ恐れがあります。
 誘発忘れなどで揉めれば、それだけで空気が悪くなる可能性があります。

 カジュアルなプレイを自分のプレイが邪魔されないプレイと考えているプレイヤーもいるからです。

他プレイヤーの行動を縛るカードを控える

 例えば「エイヴンの思考検閲家」や「締め付け」、「防御の光網」など、他プレイヤーの行動を制限するカードも同様に他プレイヤーからヘイトを買う恐れがあります。
 「基本に帰れ」や「血染めの月」などを含む土地破壊など、ゲームプレイを著しく阻害するカードも同様にヘイトを稼ぐ恐れがあります。

自分が思うデッキパワーより一つ上だと考える

 自分のデッキは評価を低くつけがちですが、自分が思うデッキパワーよりも一つ上に挑戦するのも手です。
 人はカジュアルEDHで強すぎたら文句は言いますけど、弱すぎる場合には文句はあまり言わないものです。
 そこでボロ負けしたらレベルを一つ下げましょう。

「負けてもいい」という気持ちを持つ

 ルール委員会の哲学でもありましたが、カジュアルEDHは勝敗以前に楽しむことが重要です。
 「勝ちを狙いに行く」というのも大事ですが、他の目標……例えば「でかいクリーチャーをいっぱい並べたい」とか「大事にしているカードを活躍させたい」とか「ゲーム内で公式ストーリーを再現させたい」とか、そういった勝利以外の目標をもってゲームに臨むのも良いかと思います。

最後に

 ごくごく一般的なことを長々と書いてしまいましたが、いかがでしょうか?

 本当は時間をかけて価値観や認識を仲間内ですり合わせるのが一番ですし、複数のデッキを持ち歩いた方が色々な人とレベルを合わせてEDHを楽しめます。

 最後に、これからも良いEDHライフ、MTGライフをお過ごしください。

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