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増殖ゾンビ企業 コロナ融資の後遺症 2022.09.26 3/3


【『日経ビジネス』の特集記事 】 #9

✅はじめに

⭐『日経ビジネス』の特集記事から、私が特に関心を持った個所重要と考えた個所を抜粋しました。
Ameba(アメブロ)に投稿していた記事は再編集し、加筆修正し、新たな情報を加味し、再投稿した記事は他の「バックナンバー」というマガジンにまとめています。

⭐原則として特集記事を3回に分けて投稿します。
「私にとって、noteは大切なアーカイブ(記録保管場所)です。人生の一部と言い換えても良いもの」です。
プロフィールから)


日経ビジネス電子版セット(雑誌+電子版)「らくらく購読コース」で、2022年9月12日号から定期購読を開始しました。



日経ビジネスの特集記事 #9

増殖ゾンビ企業 コロナ融資の後遺症 2022.09.26 3/3

<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>


ゾンビ企業とは?

ゾンビ企業の定義を再度確認しておきましょう。

ゾンビ企業とは
実質的に倒産状態であるにもかかわらず、営業を継続している企業を指す。金融機関や取引先などに「支払うべきものを支払わない」状態が続いている企業、バランスシート上で債務超過状態にある企業などを指す。

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PART 3 悪循環から抜け出す3つの道
さらば成長なき延命
外部の支えで再出発


最終回は、「過剰債務のわな」を断ち切る”処方箋”を事例を通して考えてみましょう。

金融機関から追加融資を受けられず、優良な事業資産を生かす投資ができない。そうした悪循環をどう断ち切るか。いくつかの事例を通して、その方法を考える。

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1 負債減らせば未来が見える
金融機関やファンドが伴走者に

佐渡汽船のケース

2022年3月、佐渡島と本土を結ぶ唯一の定期航路を運航する佐渡汽船(新潟県佐渡市)が再出発した
1913年創業の同社は、第三セクターのはしりとして島の交通を支えていたが、人口減少と高齢化が進み、収益環境が悪化していた。そこにコロナ禍が直撃し、2021年12月期は3期連続の最終赤字と約22億円の債務超過に陥っていた。

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少子高齢化という日本の典型的な現状と、コロナ禍というダブルパンチに佐渡汽船が襲割れたということです。

佐渡島と本土を結ぶ定期航路という重要な交通手段であったため、法的整理で廃止という手段は取りにくい状況にあったのです。

そこでスポンサー探しをすることになりました。

法的整理に入り航路が止まれば地元経済の混乱は避けられない。地元自治体やメインバンクの第四北越銀行らによるスポンサー探しの結果、決まったのが地域振興のコンサルティングなどを手掛ける経営共創基盤(東京・千代田)グループのみちのりホールディングス(HD)だった。

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もうお気づきだと思いますが、経営共創基盤(東京・千代田)グループの冨山和彦会長のインタビュー記事は、PART 1 「ゼロゼロ融資」、2割がゾンビ化?破綻増加の足音 後遺症に身構える銀行「INTERVIEW ゾンビ企業、どう向き合うべきか」に掲載しています。


みちのりHDトップの松本順氏は「負債の圧縮」のための手段として資金投入を開始しました。

みちのりHDのトップは、00年代初めに産業再生機構で数々の再生案件を手掛けた松本順氏。「将来の事業価値に応じた投資ができる水準まで負債を圧縮し、経営支援を施せば、企業は再成長に向けて走り出せる」が持論だ。
負債圧縮で活用したのが資本性の資金投入だ。みちのりHDが総額15億円を出資して約3分の2の議決権を取得。第四北越銀も15億円の第三者割当増資を引き受けた上で、佐渡汽船から同額分の借入金を返済してもらう「デット・エクイティ・スワップ(DES、債権の株式化)」に近い手法でバランスシートを改善した。

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佐渡汽船はこれまで旅客輸送だけだったそうです。そこで貨物輸送も行うことにしたのです。人だけではなくモノも運ぶ体制に持っていくことがポイントです。観光主体だけではコロナ禍のような事態が起きれば大打撃を受けます。

貨物輸送であれば、特産品や、食料品などの日用品、工業製品なども扱うことができます。重量や体積の大きな製品も可能です。

9月に自己資金10億円強を投じて同社3隻目となるカーフェリーを中古で取得。みちのりHD傘下となって以降、初の大型投資だ。フェリー3隻体制でこれまで旅客輸送のみだった新潟県南西部と佐渡島南部を結ぶ航路の貨物輸送が可能となる。松本社長は「コロナ禍前から赤字が続いていた物流部門の効率化が期待できる」と話す。

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2 人手不足も同時に解決
大手・中堅の傘下で再出発

物流業界のSBSのケース

物流業界もコロナ禍で大きな傷を負いました。特に中小物流業者は人手不足や乏しい資金力のために、単独ではなかなか生き残れなくなってきています。

そのため、同業他社との合併を模索することになります。事実、同業他社との吸収合併によって解決するケースが増えているそうです。

同業他社による吸収合併が過剰債務問題に悩む企業の解決策につながる事例が増えている。その傾向が顕著に出ているのが物流業界だろう。
「ゾンビ企業の代表業種」(関西地銀幹部)と金融機関も認識するほど、中小物流事業者が置かれている環境は厳しい。コロナ禍による外出自粛で宅配需要は急増する一方だが、プレーヤーが多く運賃競争は激しい。大手運送会社の荷物を外部委託の形で下請け、孫請けの運送業者が引き受けるが、下層ほど運賃は安くなる。

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物流業界が「ゾンビ企業の代表業種」というのは不名誉なことですね。

ところで、日本にはトラック運送業者はどのくらいあるのでしょうか?
ちょっと想像しづらいですね!

約6万社あるそうです。そして大半が中小企業だということです。
トラック運送業界は日本企業の縮図です。ほんのわずかな大企業と圧倒的多数の中小企業の二極。

現在、日本に約6万社あるといわれるトラック運送業者の約9割がトラック保有台数100台以下の中小企業だ。10台以下の事業者も5割強を占める。1990年の規制緩和を受けて配送業に参入した事業者が多く、車両などの設備老朽化も進んでいる。オーナーの高齢化や事業承継も深刻な課題となっている。

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そのような現状で、SBSはM&A(合併・買収)によって構造問題を解決しようとしています。

構造問題をM&A(合併・買収)で解決しようとするのが、佐川急便出身の鎌田正彦社長が興したSBSホールディングス(HD)だ。同社の主力は荷主の物流を一括受託する3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)だが、中小の配送事業者の取り込みを通じ宅配事業の強化を進めている。「中小事業者の持つ配送網の取り込みは『ラストワンマイル』の強化につながる」と、SBSHDの伊藤則和事業開発部長は話す。

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「『ラストワンマイル』を制するものが物流を制する」、と言われています。
つまり、最終届け先への距離がラストワンマイルというわけです。

別にワンマイルだからといって1.6kmに限定する話ではなく、象徴としての表現です。もともと米国の事例から日本に持ち込まれた概念です。

SBSHDはこうした施策を更に強化するために日本政策投資銀行と連携しました。

SBSHDは2020年、中小配送業者の支援を目的に、日本政策投資銀行と連携する形で投資事業組合を立ち上げた。配送網や取り扱う荷物の種類などでM&A妙味があっても、財務や労務管理に課題がありすぐに傘下に収められない企業も少なくない。こうした企業をいったん投資事業組合の傘下に置き、経営管理等の強化などを施した上でグループに取り込む流れだ。これまでに千葉の食品配送業者など計3社が投資事業組合の傘下に入り、うち2社がSBSグループに入った。SBSには年間約100件ほどの案件が持ち込まれる。オーナーにとってM&Aは事業と雇用を残したまま手を引く方法の一つだ。

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3 良い資産を生かす
守るべきは企業より人と地域

フタバ図書のケース

大型書店を展開するフタバ書店(広島市)は経営不振に陥り店舗のリストラを進めていたそうです。

9月1日、JR広島駅南口に残る古い空きビルの取り壊しが始まった。このビルはもともと、地元で大型書店を展開するフタバ図書(広島市)の店舗。同社は経営不振に陥り店舗のリストラを進めていたが、アパグループ(東京・港)の30階建ての高層ホテルとして生まれ変わる。店舗が、新たな雇用や集客を生む大型施設として再出発する。
現在のフタバ図書はかつての企業とは異なる法人だ。旧・フタバ図書は200億円規模の負債を抱え、2022年5月に裁判所から特別清算の開始命令を受けた。

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フタバ図書とは?

フタバ図書は売り上げ規模300億円、店舗数40を超える地元の有力企業。20年3月期は売上高240億円まで落ち込んだとはいえ、「消えるのは地元にとって打撃」(金融関係者)だった。
メインバンクのもみじ銀行(広島市)ら債権者が採ったのは、地元ぐるみで支えるスキームだ。不採算店舗や既存債務を旧会社に残し、主力店舗や事業体を新会社に移した

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新会社にはもみじ銀行のほかに、ひろしまイノベーション推進機構、エディオン、広島マツダ、日販、蔦屋書店が出資したそうです。

新会社には地元ファンドのひろしまイノベーション推進機構やもみじ銀行、家電量販大手エディオン、広島マツダ、日本出版販売、蔦屋書店(東京・渋谷)が出資し、新社長は日販から迎え、副社長も蔦屋書店から迎えた
特徴的なのは、金融機関だけでなく、有力取引先や地元有力企業も巻き込み、再建への実効性を高める試みであることだ。販促活動での連携も可能という。地元の有力中堅企業を支え、経済のパイを維持するには、金融機関だけにとどまらない「座組み」も選択肢になる。

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フタバ図書に支援の和が広がったのは、地元に根ざした書店であり、大きな書店があることが、その地域の文化度の高さを示すことでもある、ということだったからではないか、と私は考えています。
「文化の灯を消すな」ということだったのでしょう。


フタバ図書の名称には懐かしい響きがあります。
私が30代から50代後半まで洋書・洋雑誌卸の「洋販(日本洋書販売)、今は存在しない」に経理担当として勤務していました。

私が勤務していた当時の洋販の本社は東京・新宿区にあり、北は北海道から南は九州・沖縄まで1支社、8支店設置(大阪支社、札幌・仙台・千葉・横浜・名古屋・広島・福岡・沖縄各支店)し、全国に洋書・洋雑誌を日販やトーハンなどの出版取次を通じて配本したり、紀伊國屋や丸善、三省堂、有隣堂などの全国の書店に直接定期配本していました。

広島支店ではフタバ図書に洋書・洋雑誌を卸していました。

そのような事情で記憶の底に残っていたのです。
ちなみに、洋販は、アマゾンが日本に進出し、当社より低価格で洋書・洋雑誌を販売し、しかも出版されてから販売までが短期間であったため、競争に敗れ業績が急速に悪化し、最終的に業界から姿を消すことになりました。


洋販が消滅するまでの経緯については、下記のブログが詳しいです。


さて、日経ビジネスは今回の特集記事の最後で次のように述べています。

政府も廃業支援の枠組みを進化させ続けている。経営者の覚悟とそれを支える仕組みがあれば、「次の一歩」を確実に踏み出せる

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🔷 編集後記

今回の特集記事には、私にとって懐かしい社名が登場し、当時の自分のことを思い出すきっかけになりました。

その思い出は、けっして楽しい出来事ばかりではありませんでしたが、自分しか体験できなかったこともあり、それらも私にとっては宝物になっています。

それにしても「ゾンビ企業やゾンビ企業予備軍」が多いことと、これからも増えてくる可能性があることは注視している必要があると思いました。

いつ自分たちに関わりを持つことになるか分からないからです。



⭐ 私の回想録


⭐ 私のマガジン (2022.10.05現在)






















   

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