見出し画像

【大人の流儀 伊集院 静 心に響く言葉】 第93回





大人の流儀

 伊集院 静氏の『大人の流儀』から心に響く言葉をご紹介します。私は現在『大人の流儀』1~10巻を持っています。このうちの第1巻から心に響く言葉を毎回3件ずつご紹介していこうと考えています。全巻を同様に扱います。

 時には、厳しい言葉で私たちを叱咤激励することがあります。反発する気持ちをぐっと堪え、なぜ伊集院氏はこのように言ったのだろうか、と考えてみてください。しばらく考えたあとで、腑に落ちることが多いと感じるはずです。

『大人の流儀3 別れる力』をご紹介します。

 ご存知のように、伊集院氏は小説家(直木賞作家)で、さらに作詞家でもありますが、『大人の流儀』のような辛口エッセーも書いています。


大人の流儀 伊集院 静 心に響く言葉 第93回

第4章 本物の大人はこう考える


「グリーン車に乗るバカな若者へ」から

伊集院 静の言葉 1 (276)

 この頃、グリーン車でも若者が一人で乗っているのを見かける。
__なぜこんな若い奴がグリーン車に乗ってるんだ? 盗みでもしたのか。 そういう若者は決まって身に付けているものも妙だし、行動もおかしい。第一、顔の相が良くない。稼ぎもないのに、こういうことが平然とできるのは金を渡した親もバカだが、やはり当人が無知なのだろう。オマエ達の座るところじゃないだろうが、分をわきまえんか。
 世の中には若者が座ってしかるべき席があることもわからないのだろう。若者は自由席かデッキだろうよ。
 若くしてこういうことを平気でできる奴は十中八、九、人生に失敗する。

大人の流儀 3 別れる力 伊集院 静 


「グリーン車に乗るバカな若者へ」から

伊集院 静の言葉 2 (277)

 ディズニーランドかどこかの帰りの子供と若い父、母が乗っているのもある。親もバカなら子もバカである。金を払えば何でもオーケーと考える親が育てた子供は、それをしっかり受け止めて、さらにバカな人間になる。
 大人の男の居る場所に子供を入れるナ。 

大人の流儀 3 別れる力 伊集院 静 

                             


「グリーン車に乗るバカな若者へ」から

伊集院 静の言葉 3 (278)

 ロンドンのナショナルギャラリーで「ミラノ宮廷のレオナルド・ダ・ヴィンチ展」を見た。展示内容が素晴らしく、ダ・ヴィンチの名画の八点(半分以上)が世界中から集まっていた。おそらく今世紀にこれだけの作品が一堂に揃うことはない。いや、今後ここまでの絵画は揃うまい。私が生きている間はまずあり得ない。
 今回の旅の目的のひとつはイタリア・ルネッサンスの取材で、主にはダ・ヴィンチの作品を見てまわることだった。フィレンツェでもルーヴルでも貸し出し中の作品があった。
 どうしたんだ? と思っていたら、ロンドンに出展していた。何とか時間を作ってロンドンに行くことにしたが、チケットが手に入らない。当日券が出ると聞き、三時間余り早朝並べば手に入るという。並ぼうと決めてロンドンに行った。イギリス観光局の厚意でチケットが一枚手に入った。翌日分は東京の母替りが何とか手に入れてくれた。
 鑑賞して、いや、驚いた。
 正直、この歳になって、絵画を見て鳥肌、、が立つとは思わなかった。
__こんなことがまだ自分にもあるのだ。
 そう思った時、これから数年かかって執筆する「美の旅人・イタリア編」には何かが書けるかもしれない、と思った。嬉しかった。
 たとえ何時間並んでもかまわない。そう思ったことで、この幸運に巡りあえたのか。

大人の流儀 3 別れる力 伊集院 静 


⭐出典元

『大人の流儀 3 別れる力』

2012年12月10日第1刷発行
講談社


表紙カバーに書かれている言葉です。

人は別れる。
そして本物の大人になる。


✒ 編集後記

『大人の流儀』は手元に1~10巻あります。今後も出版されることでしょう。出版されればまた入手します。

伊集院静氏は2020年1月にくも膜下出血で入院され大変心配されましたが、リハビリがうまくいき、その後退院し、執筆を再開しています。

伊集院氏は作家にして随筆家でもあるので、我々一般人とは異なり、物事を少し遠くから眺め、「物事の本質はここにあり」と見抜き、それに相応しい言葉を紡いでいます


🔷「正直、この歳になって、絵画を見て鳥肌、、が立つとは思わなかった」

この感覚は本人でなければなかなか理解できないかもしれません。
しかしながら、今まで見たものや聞いたものとは異次元の作品に出会ったとき、人は「鳥肌の立つ」という体験をすることがあります。

それは畏敬にも似た感覚かもしれません。あるいは時によっては畏怖の念かもしれません。近寄りがたき存在を目の前にし、自分はどうしたらよいのか速やかに対応できず、その場に立ち尽くすことしかできない状態かもしれません。

今回は、伊集院静氏はよほど腹に据えかねたのか、過激な言葉が頻出しました。罵倒と言ってもよいくらいでしたね。

それだけに、レオナルド・ダ・ヴィンチに関する記事は異質なものでした。


⭐ダ・ヴィンチに関する参考資料

『ビジュアル ダ・ヴィンチ全記録』ビューレント・アータレー キース・ワズリー 藤井留美[訳] 日経ナショナル ジオグラフィック社 全288ページ  原題は LEONARDO’S UNIVERSE 2013年4月22日 第1版1刷
という1冊の書籍があります。

さすがにナショジオ(ナショナルジオグラフィック)が出版しただけに図版ん135点とその解説は素晴らしいものです。

時々ぱらぱらとめくり、なにがしかのインスピレーションが得られたら良いなと思っています。

この書籍の「プロローグ」に次の一節があります。

 美術史家ケネス・クラークが言うように、ダ・ヴィンチほど「貪欲に興味を抱きつづけた」者はほかにいなかった。膨大な手稿に記された独自の科学的所見、推論、仮説のほとんどは、その後の研究で正しいことが裏づけられている。また彼がスケッチで残したさまざまな機関や装置も、後世に現実のものとなっている。ダ・ヴィンチは秘密主義者で、生前に一冊も著作を出版していないため、その発明や科学的探究は、同時代の人びとには知られないままだった。それでもダ・ヴィンチの科学には、この時代の精神が色濃く反映されている。
 イタリア・ルネサンスという知的運動は2つの方向を持っていて、古代の美術、哲学、文学を再評価するとともに、人類の新しい未来にも足を踏み入れるものだった。そんな新しい未来のデザインを、優れた形で総合的に表現したのがダ・ヴィンチの手稿だ。500年の時を隔てた今日、それは描かれた当時よりはるかに大きな驚きをもって迫ってくる。後世の人びとに与えたその衝撃のおかげで、ダ・ヴィンチは科学技術の予言者、人類初の未来学者として評価されつづけてきた。
 ダ・ヴィンチはルネサンス初期の科学者であると同時に、傑出した芸術家でもあった。ただし彼が残した作品の数は、当時の基準から考えるととても少ない。

『ビジュアル ダ・ヴィンチ全記録』 
ビューレント・アータレー キース・ワズリー  
藤井留美[訳] 
日経ナショナル ジオグラフィック社 
pp. 12-13
 


ダ・ヴィンチが天才であったことは万人が認めるところではありますが、彼の才能が後世になって認知されるようになったのは、「ダ・ヴィンチは秘密主義者で、生前に一冊も著作を出版していないため、その発明や科学的探究は、同時代の人びとには知られないままだった」ためでした。


(3,577文字)


🔶『大人の流儀3 別れる力』について『由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い』の中で言及しています。

伊集院静と城山三郎
『別れる力 大人の流儀3』
私が伊集院静さんに興味を持ったのは、彼の先妻が女優の夏目雅子さんであったこともありますが、『いねむり先生』という題名の小説を読み、不思議な感覚を味わい、また『大人の流儀』という辛口のエッセーを読んだからです。 

由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い p. 212


夏目雅子さんのプロフィール



🔶伊集院静氏の言葉は、軽妙にして本質を見抜いたものです。随筆家としても小説家としても一流であることを示していると私は考えています。



<著者略歴 『大人の流儀』から>

1950年山口県防府市生まれ。72年立教大学文学部卒業。
91年『乳房』で第12回吉川英治文学新人賞、92年『受け月』で第107回直木賞、94年『機関車先生』で第7回柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で第36回吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。
作詞家として『ギンギラギンにさりげなく』『愚か者』などを手がけている。


⭐ 原典のご紹介



クリエイターのページ


大人の流儀 伊集院 静


五木寛之 名言集


稲盛和夫 名言集


回想録


サポートしていただけると嬉しいです。 サポートしていただいたお金は、投稿のための資料購入代金に充てさせていただきます。