見出し画像

大前研一 名言集 『ロウアーミドルの衝撃』(29)

『ロウアーミドルの衝撃』(29)

「自分のことを中流」と考える日本人が、かつて多く存在しました。私自身もその一人でした。

しかし、いまや上流と下流だけといった二極分化の様相を呈しています。

派遣社員の首切り、正社員の激減、給与、賞与の大幅削減など従業員には逆風が吹き荒れています。

そうした現況を踏まえて、ロウアーミドル(中流以下)という概念を示しつつ、生き抜く指針を提示している本が『ロウアーミドルの衝撃』(発売日 ‏ : ‎ 2006/1/26です。

現実から逃避せず、現実を直視し、少しでも明るい未来像を描けるようになりたいものです。
 
 

中国も、沿岸部にある6つの地域国家が経済発展のために行ったのは,外資系企業を呼び込み、その力を借りる政策だった


中国も、沿岸部にある6つの地域国家が経済発展のために行ったのは,外資系企業を呼び込み、その力を借りる政策だった

ボーダーレス経済の時代には、こうした「貸席経済」こそが反映への道なのである。

『ロウアーミドルの衝撃』 大前研一の名言 1 〈331〉                              



日本が長期衰退の構造から脱すには、市場も社会も解放してヒト・モノ・カネが世界中から集まってくるようにする以外にない


日本が長期衰退の構造から脱すには、市場も社会も解放してヒト・モノ・カネが世界中から集まってくるようにする以外にない

日本に世界から流入してくる資金は年間わずか9000億円(2004年、UNCTAD[国連貿易開発会議]資料)、ピーク時は3兆円だったが、それもほとんどがリップルウッドなどのハゲタカファンドの類で、直接投資とは言いがたい資金だった。

それに比べて、中国には年間7.3兆円(2004年、UNCTAD資料)が海外から流れ込んでいるのである。金は入ってこない、人も来ないのでは、産業が成長する条件はゼロに等しい。

これでは長期衰退を止めることなど不可能である。

『ロウアーミドルの衝撃』 大前研一の名言 2 〈332                             
                                  
         







ロウアーミドルクラスの人たちは、「自分は改革者である」という自覚を持つべきなのである


ロウアーミドルクラスの人たちは、もはや「収入が減り、昇進も期待できない」「そのうえ負担ばかりが増えていく」と嘆く犠牲者ではなく、「自分は改革者である」という自覚を持つべきなのである

『ロウアーミドルの衝撃』 大前研一の名言 3 〈333〉                           



➳ 編集後記

ロウアーミドル(中流以下)という概念を示しつつ、生き抜く指針を提示している本が『ロウアーミドルの衝撃』です。


🔶 大前氏は自分で考え出したことを自ら実践し、検証しています。仮説と検証を繰り返す行動の人です。

Think before you leap.(翔ぶ前に考えよ)という諺がありますが、Leap before you think.(考える前に翔べ)もあります。
あれこれ考えて、難しそうだからとか面倒くさそうだからやめようでは成長しません。
まず、やってみるという姿勢が大切です。


大前研一氏は、常に物事の本質を述べています。洞察力が素晴らしいと思います。私は、ハウツーものは、その内容がすぐに陳腐化するので読みません。


➔ 大前氏の今回の言葉も、私たちが忘れがちな重要なことに気づかせてくれます。


🔷 「ウィンブルドン方式」という言葉がありました。

ウィンブルドンは、テニスの4大大会(全豪オープン・全仏オープン・ウィンブルドン・全米オープン)の1つです。

ウィンブルドンには、地元英国の選手がほとんど出場しません。外国選手が優勝を目指して競います。

つまり、ウィンブルドンは「場所貸し」(大前氏が書いている「貸席」に相当)をしていることになります。

金融の世界でも、自国に海外から資金を流入させるため、市場を開放することが行われます。

テニスのウィンブルドンのような形態に似ていることから、「ウィンブルドン方式」と例えられました。

金融の中心として、米国にはウォールストリート(ウオール街)があり、英国にはシティがあります。

では、アジアの金融の中心はどこかといえば、残念ながら東京ではありません。

香港やシンガポールです。

東京はアジア一の金融市場になるチャンスが過去にあったそうです。ところが、やり方がまずかったために絶好の機会を逸してしまったそうです。

日本は東京をアジア一の金融市場に変えるために、「平成25年1月1日、東京証券取引所グループと大阪証券取引所は経営統合し、日本取引所グループとして新たなスタートを切りました」(日本証券グループのサイトから)。

しかし、香港やシンガポールの「市場」が金融業界で一旦定着すると、それを覆すのは容易なことではありません。

好機というものは、すぐさま捕らえないと、逃げ去ってしまうものである
(『マキアヴェッリ語録』 塩野七生 新潮文庫 平成4年11月25日発行 P.207)
ということになります。

この言葉は、個人レベルでも当てはまることです。
私もチャンスを逃し、ほぞを噛む思いをしたことが何度もあります。

マキアヴェッリは先の言葉の直前で、こう書いています。

なにかを為したいと思う者は、まずなによりも先に、準備に専念することが必要だ。機会の訪れを待っての準備開始では、もう遅い。幸運に微笑まれるより前に、準備は整えておかねばならない

このことさえ怠りなくやっておけば、好機が訪れるやただちに、それをひっ捕まえてしまうこともできる ――「戦略論」――」
(上掲書 PP.206-207)

つまり、泥縄式ではダメで、プロアクティブに対応しなくてはならない、ということを指摘しているのです。


🔶 大前氏は評論家ではありません。言うだけで自分では何もしない人ではありません。大前氏は行動する人です。だから大前氏の提言は説得力があるのです。




⭐ 参考になるデータをご確認ください。


マキアヴェッリ語録

塩野七生しおの・ななみさんの『マキアヴェッリ語録』(新潮社文庫 平成4年11月25日 発行 平成21年1月25日 34刷改版 平成31年3月20日 46刷)を読むと、マキアヴェッリの思想は現代でも十分に通用することに気づかされます。

塩野さんはこの本の中で、「彼の著作は、世界の名著の一つとされており、人類の智恵ちえの系譜につらなる扱いを受けてきました」(「読者に」から)と書いています。

ぜひ『マキアヴェッリ語録』をご一読ください。権謀術数という言葉によって、マキアヴェッリの思想が歪められました。

「『君主論』の中で、勇敢さとずるさを持つ君主の必要性を説きました。この説は後に誤解されて、「権謀術数」を駆使する主義、マキャベリズムと言われました。目的のためなら手段を選ばない主義、ということです」

誤解を生むような刷り込みが行われたのです。
Ends justify means.(目的は手段を正当化する=目的のためなら手段を選ばない)という英語表現があります。これは誤解を生む(先入観を与える)根本原因です。 

⭐出典元: 『マキアヴェッリ語録』 塩野七生





大前氏は1995年の都知事選に敗戦後、『大前研一 敗戦記』を上梓しました。




🖊 大前氏の著作を読むと、いつも知的刺激を受けます。
数十年前に出版された本であっても、大前氏の先見の明や慧眼に驚かされます。

『企業参謀』(1985/10/8 講談社という本に出会ったとき、日本にもこんなに凄い人がいるのか、と驚嘆、感嘆したものです。

それ以降、大前氏の著作を数多く読みました。

『企業参謀』が好評であったため、『続・企業参謀』(‎ 1986/2/7 講談社が出版され、その後合本版『企業参謀―戦略的思考とはなにか』(1999/11/9 プレジデント社)も出版されました。






🔶 大前氏は経営コンサルタントとしても超一流でしたが、アドバイスするだけの人ではありませんでした。自ら実践する人です。有言実行の人です。起業し、東京証券取引所に上場しています。現在は代表取締役会長です。



大前氏の本には、ものの見方、考え方を理解する上で重要な部分が多くあります。大前氏の真意を深く考えなくてはなりませんね。

この元記事は8年前にAmebaブログで書きました(2014-07-19 21:42:19)。「新・大前研一名言集(改)」はかなりの量になりました。私にとっては、いわばレガシィです。

その記事を再編集しました。


✑ 大前研一氏の略歴

大前 研一(おおまえ けんいち、1943年2月21日 - )は、日本経営コンサルタント起業家マサチューセッツ工科大学博士マッキンゼー日本支社長を経て、カリフォルニア大学ロサンゼルス校公共政策大学院教授やスタンフォード大学経営大学院客員教授を歴任。
現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長[1]韓国梨花女子大学国際大学院名誉教授[1]高麗大学名誉客員教授[1]、(株)大前・アンド・アソシエーツ創業者兼取締役[1]、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長[1]等を務める。    (Wikipedia から)


大前研一氏の略歴補足

大前氏は日立製作所に勤務時、高速増殖炉もんじゅの設計を担当していましたが、原発の危険性を強く感じていたそうです。

その後、世界一の経営コンサルティングファームのマッキンゼーに転職。
マッキンゼー本社の常務、マッキンゼー・ジャパン代表を歴任。

都知事選に出馬しましたが、まったく選挙活動をしなかった青島幸男氏に敗れたことを機に、政治の世界で活躍することをキッパリ諦め、社会人のための教育機関を立ち上げました。BBT(ビジネス・ブレークスルー)を東京証券取引所に上場させました。
大前氏の書籍は、日本語と英語で出版されていて、米国の大学でテキストとして使われている書籍もあるそうです。










サポートしていただけると嬉しいです。 サポートしていただいたお金は、投稿のための資料購入代金に充てさせていただきます。