ヤマハ CP4 STAGE レビュー

(最新版 2014/06/21)

CP4 STAGEはヤマハが2013年秋に発売したステージピアノです。

(2014年現在における)ステージピアノとは、ホームユースではなくライブステージでのアコースティックピアノ/エレクトリックピアノの代用(+α)として主に使用されることを前提とした電子楽器を指します。据置きが前提でスタンド/スピーカー一体型であることも多い家庭用電子ピアノとは異なり、ある程度の可搬性が求められるため、各種のいわゆるキーボード型シンセサイザーに似た形状をしていて(=別途キーボードスタンドが必要)、ステージでのセッティングおよびパフォーマンス時に求められる機能(リアルタイムで変更できる各種パラメータに直結したユーザインターフェイス、XLRアウトプット、ピアノ以外の副次的音色など)が満たされていることが多いです。また、ほとんどの機種ではスピーカーを内蔵していません。

2014/05/30購入・即日実戦投入(歌+アコギ+ピアノ)、以来ライブで4度ほど使用ということで、使い始めてからまだあまり日が経っていませんが、これから現場/自宅での使用が増えていけば感想が増えたり変わったりするかもしれません。その際は随時追加しようと思います。

このような製品についてはさまざまな方がさまざまな意見を持たれるのが普通だと思いますので、これはあくまでもわたし個人の感想ということで、購入を検討されている方は参考程度にお読みいただければ幸いです。あくまでも最終的には自分で試奏してピンときたものがあなたのベストチョイスだと思います。

前提:わたしの使用環境

ライブステージ:
pf入りのロックバンド、vo+pfのデュオなど
キャパ50~300(~たまに800)ぐらいのライブハウス。
自前機材使用時の交通手段は自動車

自宅:
DAW+ソフトウェア音源を使用したアレンジ/依頼録音のマスターキーボードとして

※リハーサルスタジオには機材を持ち込まずスタジオ常設の電子ピアノ(YAMAHA CP-33CP-50)を使うことが多い
※ライブハウス常設機材がその日の演奏に必要十分であると判断した場合はそれを使用することも少なくない(YAMAHA CP300、Roland RD-700シリーズなど)
※オルガンなどピアノ/エレピ以外の音色が必要な場合はステージピアノとは別に別途キーボードもプラス1台セッティングすることが多い
※ローランド RD-600(1999年から使用)不調による買い替え

購入時に重視したポイント

☆ピアノ/エレピ音源のクオリティ
☆演奏性
☆重量
☆価格

以上4点のバランス。比較対象はRoland RD-800、同RD-300NX

よいところ

○ [鍵盤] NW-GH鍵盤とてもよい印象。前世代CP5ともさらに前のCP300とも違う感触

○ [サウンド] ピアノ・エレピ各種良好。CFXがとにかくよい

★以上2点がいちばん個人の好みで印象が変わる部分だと思うので、実際に弾いてみるしかないです。わたしは非常に満足していますが、誰かには良くても自分に合わなければそれはもう合わないので!

で、鍵盤と出音のマッチングがめちゃくちゃよいので、楽器弾いてる!っていう感じがちゃんとしてくれてると思いました。当たり前やんけと思うかもしれませんけども、これまでの楽器で案外こういう地味というかかすかな違和感でストレスを感じてらっしゃる方も少なくないのではないでしょうか。

○ [機能性] ボタン右下に「.」のあるもの(リバーブ、コーラス、マスターコンプ、インサートFX×2、メトロノーム)は長押しでエディットのパラメーター画面にジャンプするのでアクセスしやすい

○ マスターコンプ(3バンドマルチ)が気軽にオン/オフできるのはバンドの時になかなかアリだと思う。

○ [形状] 天板に傾斜がなく余分なスペースも少しあるので、譜面やメモを置いて弾いてても手前に滑ってこないし、自宅/スタジオではマウスやPCのキーボードも置けたりするのがちょっと嬉しい。

○ [重量] ステージピアノというカテゴリ(メインストリーム機種の大勢は25kg前後)の中で、17kg台に抑えてくれたのはやはりとても助かる。専用ケースと合わせて20kgジャストぐらい。ちなみに以前は本体+ハードケース(SKB)で約40kg。搬入・搬出時の憂鬱が半分に。

参考画像:長押しできる各ボタンは
右下に「.」があるもの。
(あとパネルロックも長押し)


あえて小姑的に苦言を呈するとしたら

● 音色切替時は音切れします。
● S6ピアノ D1前後3鍵だけなぜかびーんという共鳴が若干気になる(単音で弾かなければそこまででもない)。S6のサンプル自体はわりと好きだが。
ストレッチチューニング(ピアノ特有の、計算上の周波数(=1オクターヴ上がれば周波数が倍)よりあえて高音域を少し高め・低音域を少し低めに調律すること)については、従来機種ではUTILITYの設定項目としてストレッチかフラット(=ストレッチしない)を選択するようにできていたようだが、CP4 STAGEではその項目がなく、どうやら各ピアノ(CFX、CFIII、S6、あとCPも)のプリセットのVOICEの名前に「Fl」がついているものがフラット、それ以外はストレッチということっぽい。で、そうなってること自体は全然歓迎してもいい事柄なんだけども、残念ながらその説明がマニュアルのどこにもないようだ(だいぶ探したつもりなんですがもしあったらごめんなさい)。「このFlついてるやつは何が違うのかなー」とか中音域弾きながら切り替えて聴いてたって気づかないところだった。あとは+とか-とかついてるのは、音色の明るさが変わるので、たぶんこれもエディット項目から省略されたハンマーの硬さなんじゃないかと思うんだけどこれもマニュアルにはないので根拠はない。
● ヤマハシンセユーザなら直感的に「PERFORMANCE」は複数の「VOICE」の組み合わせなのかなーと思うかもしれないがそれは半分だけ正解で、CP4 STAGEは実は常にPERFORMANCEモードであると言ってよくて、切り替えられるのはPERFORMANCEのPLAYとSELECTの各モード。PERFORMANCEのPLAYモードでMAINだけを使用している状態は一見いわゆる「VOICEモード」に見える(し、そうとらえることもあながち間違いでもない)のだが、これはいま選択されているPERFORMANCEのMAINのVOICEを切り替えているだけということっぽい(言いたいことが伝わるようにうまく書けているかどうか不安ですが笑)。なお、ユーザがストア可能なのはPERFORMANCEのみで、VOICEにはプリセットしかない。のだが、(これもややこしいんだけど)PERFORMANCEで呼び出した最初の状態の各VOICEはユーザがエディットしてPERFORMANCEにストアした状態のもので、そこからもし各パートのVOICEを他のに変えるとしたらそれはプリセットしかない、ということです。だめだやっぱり説明できている気がしない。
● でまあそれはともかくとして、問題はここからで、たとえばMAINにピアノ(ヴォリューム110)、LAYERにストリングス(ヴォリューム70)でストアしたPERFORMANCEを呼び出して、呼び出したときにMAINのヴォリュームスライダーが127、LAYERのも127だったとします。呼び出した時は当然ストアしたときの音量バランスで演奏できるんだけど、演奏しながら途中でたとえばペダルでホールドしてる間にストリングスだけフェードアウトさせてアウトロはピアノだけで弾きたいなーなんて思ったときに、LAYERのスライダーを触るとその瞬間からスライダーの値でヴォリュームが有効になるので、70だったのがいきなり127に近いところまでドンと上がっちゃう。じゃあ途中で下げなきゃいけないときはどうすればいいかというと、PERFORMANCEを呼び出したらまずSLIDER FUNCTIONをVOLUMEに切り替えて、表示される値が括弧でくくられていれば記憶されている値といまのスライダーの位置が異なるので、スライダーを動かして表示されていた値にあらかじめ合わせてから演奏を開始……いやいや、いちいちそんなことしないとだめなの?ってか実はロータリーエンコーダーだったらこんなことにはならなかったのではなかろうか。
● ライブ中は事前にストアしたPERFORMANCEを曲ごとあるいは曲中に切り替えて演奏するので、PERFORMANCE SELECTモード(特にグレーのボタンを押すことで直接パフォーマンスが呼び出せるDIRECT SELECTモード)にするのが普通だとわたしは思うのですが、この状態だとPERFORMANCEボタンの赤LEDは点滅状態になります。演奏中ずっと点滅してます。PLAYモードと逆なんじゃないかと個人的には思います。あるいは設定で逆にできたらいいのにと。なんかどうなんですかね、根本的にわたしの使い方が間違ってるのかな、そんなことないと思うんですけども。。

● 専用ケース(SC-CPSTAGE)のキャスター2個の間隔が狭いので、走行時の安定性が低くカーブに非常に弱い。自分の後ろに引きずるより、前に持って押して転がしていく形を個人的にはおすすめします。あと極力ゆっくり。急ぐとちょっとした段差にやられます。あ、ケースのポケット付近にある2つの持ち手はなかなか便利だと思いました。階段を昇降するときも、オモテのキャスター側の持ち手と背面側の持ち手を左右の手で持つといい感じに傾けたまま歩けます。

苦言とまでは言わないが検討時に留意してもよい事項

▲ ダンパー・レゾナンスは音源部ではなくインサートエフェクトでの提供。なのでもちろん、ペダルノイズなどもない。ちょっと別の話だけどピアノとエレピ(DX以外)にはキーオフサンプルはある(音量エディット可能)。クラシック演奏ではなくいわゆるポップス/ロックのライブにおけるバンドアンサンブルにおいてこれがどれだけ必要な機能かといわれると、このぐらいでまあ十分なのかなと思います。奏者の気分の問題というかある種の自己満足と言えなくもない(確かに気分は大事です。大事ですが、たとえばステージ上の「明らかに電子楽器である物体」からペダルのノイズが聴こえることまでもがはたして聴衆から求められているものかどうかみたいなことです。異論もあるかとは思いますが)。
▲ ヘッドホンアウトがリアパネルの中央右寄り(奏者から見て)という微妙な位置にある(ケーブルが長ければあまり関係ないが、わたしはヘッドホンアウトぐらいリアパネルではなく手前の面につけてくれてもいいのにとかねがね思っている)
▲ 軽量化と引き換えに筐体上部はプラスチック感が強く、高級感はありません。リアパネル周辺を叩いたときのぽこんぽこんいう感じもなんとも言えない。先日リハスタでCP50を見かけて、せめてこのぐらいの質感だったらなあとも思ったんだけどCP50でも20キロあるので、3キロ減のためと思えば仕方ないかも。サンドブラスト的な加工もあって汚れや傷は目立ちそうな予感。小さなライブハウスで対バンなんかのときに壁に立てかけたりする必要があるときは床の材質によっては接する面になにか敷くなどして気をつけたい(まあせめて新品のときは大事にしたいじゃない)。あ、本体底面は普通にめっちゃしっかりしてます。あとゴム足は大きめ・5箇所。左右の4つはかなり外側なのでスタンド各種には干渉しにくいと思う。

まとめ

苦言の説明はどうしても細かくなるので分量が多めになっちゃいましたが、文章の長さとは裏腹によいところの評価ポイントがわたしの中では非常に高いので、ぶっちゃけて言うと実はレイヤーすらあんまり使わないし、個人的にはピアノとエレピの音色と鍵盤が良くて軽くて価格やや抑えめという時点で大満足で、ステージピアノに多機能性をそんなに求めていない(シンセ音色やオルガンが必要なら別途用意する)という層は一定数いらっしゃると思うので、上記の各ウィークポイントに目を瞑れる/関係ねえよ!って方にはおすすめできます。わたしもこれから大事に長く使っていくと思います!

補足:買い替えに至った経緯

買い替え直前まで使用していたのはRoland RD-600(1999年製)。当時最新機種で、ちょうどピアノトリオのロックバンドを始めてしばらくした頃でした。後継機種への乗り換えもときどき考えたりもしながら(特にRolandがRD-700シリーズの新製品を出すたびに)、自身のバンドではなくシンガーやバンドのサポートとしての演奏がメインの活動になってからは、ライブハウス常設機材を使うことも増えたりして良い意味で固執することがなくなってきていたり、あと自宅での録音/アレンジ作業においては内蔵音源ではなくソフトウェア音源を使うようになっていたのもあって、当分はこれ(RD-600)でいいかなーなんて思ってもいたのですが、その思いと並行して部品の経年劣化で鍵盤機構部分の故障が相次ぐようになってもきていて(これは10分もあれば一応自分で修理もできるのですが)、ライブ直前や本番中に壊れたりすることも増えてきたので、さすがに限界だと感じて新機材の購入に至りました。

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