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代書筆19 百歳長寿の秘訣

 私は今年で100才になる(2007年当時)。台湾ではここまでの長寿は、わりと珍しいので「めでたい人」と呼ばれる。私の長生きの方法は、実はとても簡単だ。つまり「平常心」である。何事も中道をいく。偏食しない、無理をしない、求めすぎない。この精神バランスこそ、長寿の秘訣だ。

食事について

 食事は、肉、揚げ物、漬物を食べ過ぎず、たまに魚を食べる程度。代わりに、野菜と果物をたくさん摂る。食べる量は腹七分目にとどめ、何でも天然のものにする。この数年、人に「小麦粉と砂糖をあまり摂るな」と教えている。製粉には希釈硫酸、砂糖の精製には漂白剤を使うからだ。防腐剤の入った菓子、ラード入り月餅、化学薬品を入れたピータンなどもあまり食べない方がいい。とにかく、天然のものを食べていれば、まず安心といえる。

金儲けはほどほどに

 人は商売して金を稼いだら、休息が必要である。私は若い頃、夜は12時過ぎに寝て、朝5時には起きた。昼は仕事に走り回り、夜は接待で酒を飲む。こんなに忙しいのに昼寝もせず、体に良いわけがない。だから私は蘭を育てるようになった。だいたい200、多い時は300鉢を代書事務所の屋上で育てていた。仕事が終わると、必ず屋上へ行って水やりをする。これが息抜きで、頭を休めることもできた。

 私は人に「稼いだら使え」とすすめている。金は使うためにある、貯金だけではつまらない。「入れたものは出す」ことだ。それがまた、次の仕事のエネルギーになる。
 ただし、いくら金を使った方がいいといっても、愛人を持ってはいけない。私の友人の3分の2も愛人を持っていたが、これは良くない*。
*その理由として、別ページで「女性に金品を騙し取られる」ことと、「別れる時に面倒が起きやすいため」と説明しています。

よく歩き よく座禅

 長生きしたければ、薬より日頃の心がけである。心を平静に保つことに加えて、運動する。若い頃は、師匠の広瀬をまねて、とにかくよく歩いた。広瀬はわらじ履きで、時には1日に20~40kmぐらいを歩いた。だからこそ、70過ぎまでずっと健康でいられたのだろう。

 私の運動法も、毎朝早起きして歩くことだ。うちから駅までは、小一時間かかる。もっと遠くまで行くこともある。これを数十年続けている。静かな脇道を選ぶようにしているので、人にあいさつせずに済み、気が休まる。また歩く時は長靴を履くことにしている。こうすると負荷がかかり、より運動効果が上がるのだ。帰宅後はシャワーを浴びて、ひと休みする。

 よく座禅もする。若い時は体がそれほど丈夫でなかったので、よく薬を飲んでいた。すると広瀬が「それは良くないぞ」と言って、座禅を教えてくれた。以来長年の習慣になり、今も続けている。1度やると2時間は座るが、足がしびれることはない。
 数年前からは音楽を聞き始めた。音楽は心にやすらぎを与える。心の平静、妬まず、嫉妬せず、怒らず。これはとても重要なことだ。サインもよく求められるので、書道もたしなんでいる。

孫氏100才の時の書「今やらねば いつやる」

◎次回は、代書筆シリーズの最終回です!


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