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そのカリスマとやらを聞かせてはくれまいか




「リカちゃんね、あゆのことキライなんだって」

「…え?」

よくいえば、天然で自由奔放なお嬢さま。
わるくいうと、知らなくていいことも教えてくれちゃう。


高校三年生のとき、
クラスメイトのA子から告げられたことばがわたしは今も忘れられない。



ドロリ

そのことばを聞いたとき、
わたしの心臓のどこかで液体があふれた。

重ための粘着質で、
色にするなら紫と緑と黄土色を混ぜ込んだような。


成分はなんだろう。

不意打ちされたことによる戸惑いなのか、
A子に対しての「わざわざ言わなくてよくない?」という苛立ちなのか、
リカちゃんに対しての怒りなのか、

たぶんいろんな感情がいろんな色になって混ざったもの。
たとえるならば、ものすごくよどんだオーロラ。

だけど、
そのなかでも圧倒的な割合を占めていたもの。
そして、
13年経ったいまもわたしがまざまざと思い起こせる唯一の感情。


それは、

ものすごいショック

だった。


*


今もそうなんだけど、
学生時代のわたしはとくに

「嫌われる」のがこわかった。

願わくは、
誰ひとりにも嫌われたくなかった。

もちろん子どもながらに

「全員に好かれるのは不可能」

ってことはわかっていたけれど。

だけどそれでも、
誰にも嫌われたくなかったんだ。




「誰にも嫌われたくない」

その思いを強く抱いたわたしの学生生活は、
幸運なことにおおむね平和だった。

とはいえ、
わたしのことを嫌いなひともいただろう。

正直、

「あ、このひとわたしのことキライだな」
と態度で感じたこともあるし、
明確な「悪意」を投げつけられたこともあるし、
一日だけだけど、友人に無視されたこともある。

もしかしたら、
「わたしのことを嫌いなひと」は
思っている以上にいっぱいいたのかもしれない。

(こわいから数えないけれど)
(わたしの学生時代を知るひとよ、どうか教えないでね)
(笑)

でも、それはそれでもしかたないと思えた。

そんなときは、
「秘技:知らぬが仏」を発動すればいい。




そう、
知らなければべつにいいのだ。

気づいたとしても、

明確に
「キライ」と言わなければ、セーフ。

そんなふうに折り合いをつけながら過ごしていた
「ふつうの日常」のなかでとつぜん持ち込まれた爆弾。


「リカちゃんね、あゆのことキライなんだって」


A子は
「次、英語自習だって」
くらいのテンションで話しかけてきた。
悪気もなく、いつもどおり、ニコニコと。

だからこそ、
無防備だった心臓に矢が思いっきり刺さった。



A子は誰もが認める天然記念物。
奔放で、独特のペースがあって、ひととの距離が近い。

わたしとはどこをどうとっても真逆だ。
(わたしはひとにとつぜんハグはできない)

だから、
どういう意図があったのかは一生かかってもわからないし、

たぶん、
そもそも意図なんてなかったのだ。

ただただ、


「リカちゃんがあゆのことキライって言ってた」


からわたしにそれを教えてくれただけのこと。
A子は不思議ちゃんだけど、悪い子ではない。
それだけは断言できる。
「トクベツなかよし」ではなかったけれど、
わたしはけっして彼女のことが嫌いではないから。


そしておそらく

リカちゃん(仮名)も、
まさかA子がわたし本人にそう言ってるとは夢にも思っていないだろう。 (そう考えると、リカちゃんもA子爆弾の被害者である)

そもそも、

わたしはリカちゃんと面識がないのだ。




「リカちゃん?」

A子からその名前を聞いたとき、
「だれだ?」と思った。

そして、
「え、もしかして、あの子?」

ぽわっと
頭のなかにうかんだのは、

A子の友人で、
隣のクラスの女の子だった。

(今もだけどひとの顔と名前を覚えるのは得意だ)

A子によく似た雰囲気の、
はかなげでおとなしそうな子。

A子は「天然」というギャップがあるけれど、
その子は性格もひかえめでおとなしいよ、
とほかの友人にあとから教えてもらった。



「えぇ〜、なんで?」

わたしはA子に聞いた。

「傷ついてますよ」
と悟られないように精一杯の平然を装った。

おどけた。わらった。傷ついて、いた。



なんで?
なんでわたし、嫌われてるの?

おんなじクラスになったこともない。
話したこともない。
たぶん、目が合ったこともない。

そんな相手に、

「キライ」 と思われている理由。

ねえ、教えてよ。


A子は、

「リカちゃんがわたしをキライな理由」

についてもペロリと教えてくれた。
(リカちゃんのプライバシーとは)


「なんかねぇ、あゆっていっつもみんなの真ん中で笑ってるでしょ?それがカリスマっぽくてこわいんだって〜」

「 」

「え?」

カリスマ。

あんまりにも
「らしくない」ことばを与えられて、
思わずキョトンとしてしまった。

わたしには、
カリスマっぽさなんて皆無だから。

現にあとにも先にもそんなふうに言われたことはない。



客観的にみても当時のわたしは、

「マシンガントークの垢抜けないいじられキャラ」

だった。

(いまも垢抜けてはいない)



リカちゃんは、
わたしのどのへんに「カリスマ」を感じたのだろう。

できることなら教えてほしかった。

し、

直せるなら直したかったよ。

リカちゃんに、
「こわい」「キライ」と言われるようなところ。


だって、

もう「知って」しまったんだから。

仏様はつかえない。







ねえ、リカちゃん。

お元気ですか?

きっとわたしのことなんて忘れちゃってるだろうなあ。

結局、
一度もおはなしすることはできませんでしたね。

(や、わたしとは話したくないかな)笑

わたしは、
ふとしたときにあなたのことを思い出します。

A子に言われてから気づいたのですが、
廊下でたまにすれ違っていましたね。

たぶん、
わたしの声が大きくてうるさかったんだろうなあ。

いやな思いをさせてしまって、
ほんとうにごめんなさい。

…なんて、
学生時代に謝るべきだったのにね。

でも、
やっぱり最後まで話しかけられませんでした。

なんて言ったらいいのかわからなくて。

(だっていきなり嫌いな相手に話しかけられたら、こわくないですか?)

だけど、一度くらいは話してみたかったよ。

打ち明けるけど、
リカちゃんのことかわいいなあって思ってました。

できることなら、
おともだちになってみたかったです。

なんてね。

(ほんとうは、こわくなんてないよ)
(そうであってほしいな)



忘れられない青春の一ページです。
ありがとう。


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【スキな季節は?】わたしは夏!
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滝口あゆ

9/1〜 noteを書いてます。〈 暮らし / お仕事 / 学生時代 〉 規則正しい生活が元気の素。ささやかでも、やさしく生きたい。夏と高校野球でできてる。性格は「1番:三塁手」(イメージ)

わたしが学生だったころ

ささやかで、ありふれた。だけど忘れられない青い春。

コメント3件

毎日コメントしてすみません。涙
でも、ちょっとコメントせずには
いられなくて...

すごくすごく切なくて、
ちょっと泣きそうになりました。

私も、似たような経験があり、当時は
ものすごくショックを受けました。

あゆさんって、ほんとうにどこまでも、やさしくて、あたたかくて、すてきな人だなと感じます。だからこそ、このエピソードを読んで、胸がぎゅっと締め付けられるように苦しくなりました。
私が友達になりたいです...!
hamii さん、
コメントありがとうございます。
ややや、とってもうれしいです……!
(どれだけhamiiさんのやさしさに癒されて救われているのか文字ではたりないくらい * )

「えっ、わー…、 そっ、かあ〜…」

って感じでしたね、あのときの衝撃は(笑)
今でもやっぱり忘れられません。

共感していただけてうれしいです。
noteのことばたちからも伝わってくるくらい
がんばりやのhamiiさん、
どんな中高生だったのか気になります。

でもきっと、おんなじクラスや部活だったら
仲良くなれただろうなあ、なんて勝手に(笑)

わ〜〜〜
もったいないくらいのおことば、
ありがとうございます!
(全力でキャッチしました)笑

今もですが、
学生時代はもっと未熟であいまいな人間だったので反省するところもたくさんあります。
(傷つけられたぶん、傷つけていただろうし…)

その記憶を少しずつほどきながら、
まっすぐ生きていきたいと思います。

そして、
わたしたちもうお友達ですよね…!?
って勝手に思っています(へへへ)


あゆさんって、記事の文章はもちろんのこと、コメントも本当に丁寧で感動しています。。

友達と言っていただけて、感激です( i _ i ) うれしい、、!

私も同じクラスや部活だったら、仲良くなれただろうなと思っています^^

あゆさんの学生時代のことを綴ったnote、とても好きなので、わたしも今度中高時代のこと書いてみます*

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