かっぱ

今週の、いちばん。第37回/小さな「気配り」、大きな「投資」。

20分の16。
これ、何の数字かというと、今月、これまでに行った飲み会の数だ。
20日間中で16回(1回、ハシゴした分が入ってる)。
そのたとえが適当か知らないが、バッターなら、ぶっちぎりの首位打者だ。

これだけ飲みに行くと、わかるものがある。
それは、お店ごとの差だ。
料理、内装、サービス、コスパ、お客も含めた雰囲気の差。
その差が積み重なって、その店の印象となる。
今月訪れた中で、二度と行かなくていいと思った店もあれば、できれば人に教えたくない店もあった。
今日は、できれば教えたくないほうの店について書く。

渋谷の東急本店の右側の道をしばらく行くと、「かっぱ 松濤」という店がある。
最初は他の出版社の人に連れて行かれ、すぐに気に入り、よくお邪魔するようになった。
今週もそこで飲んでいた。
料理もうまいし、他の客しだいだけど、渋谷では比較的静かな店で、気持ちよく酔って、勘定をした。
そのとき、クーポン券と、写真のカイロをもらったのだ。
カイロはすでに、いい具合に、あたたまっていた。

以上は、些細なことである。
もしかしたら、他の店でも似たサービスはしてるかもしれない。
あるいは、うちの店だって、やろうと思えばできるよと。
でも、その日の僕には、それがとても大きなことに感じられたのだ。
渋谷駅までそこそこかかる帰り道、僕はカイロを握ったり、ポケットに入れて、ぬくもりを味わっていた。

飲食店は、ときに内装にすごくお金をかけたりする。
あるいは新メニューの開発や、記念日を祝うサービスに凝ってみたりもする。
けれど、本当に「投資」すべきは、もっと小さな気配りではないか。
カイロにかかるのは、少しのお金と、ほんのひと手間。
だけどその気配りが、僕をもう二度三度、あの店に向かわせるのだ。

今週のいちばん、気配りを感じた瞬間。それは12月18日、松濤の「かっぱ」で店を出た瞬間です。

*「今週の、いちばん。」は、その1週間で僕がいちばん、心が動かされたことをふりかえる連載です(下の「このマガジンに含まれています」のリンクから全部の記事が読めます)

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