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一周回れば、見方が変わる。/書かないよりは、まし。17

「一周回って〜」という言い方を、いつのころからか意識するようになった。
多分、テレビやラジオ番組で、芸人がそのフレーズを多用していたのが気になったんだろう。
たとえば、一発屋の懐かしいギャグを「一周回って、面白い」、あるいは思いっきりスベっているボケを「一周回って、アリ」。
そもそもは、一定期間が経過したからという意味だろうけど、「逆に」「むしろ」くらいのニュアンスで使っていることも多い。

先日は、OB訪問で訪ねてきた学生さんに、「一周回った」話をされた。
何でも、今の若い人には、昔のカメラやらウォークマンやら、古臭い喫茶店やらが、一周回って新しく見えるらしい。
(ちなみに、同じようなことを複数の学生さんから聞いた)
それらの製品の誕生時点で立ち会っている世代の人間としては、少々ムズムズする。

思えば、出版の世界でも似たようなことはある。
ある時期、多くの読者を抱えて、以降は少しずつ存在感を薄めていった書き手の方が、「一周回って」新しい読者を獲得して、再ブレイク。
長く業界にいれば、そんな光景は、決して珍しいことではない。

一周回れば、見方なんて変わる。
もちろん、変わらぬ評価を得続けるものもあるだろうけれど、多くは、そのときどきの、不安定な価値観で判断される。
だからこそ、もっと長い射程でものごとを見たり、考えたりする必要を、最近少しずつ感じている。

「いま」がすべてではないし、不変でもない。
人生を一周どころか、半周もしてないのだろうけど、僕自身、たしかに変わっている。
昔と違う見方を得たことを、諦めではなく、成長ととらえたい。

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