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今週の、いちばん。第11回/文章は、「始める」よりも「終わらせる」ほうが難しい。

じつは、パーティの類があまり得意ではない。
毎日のように飲み会には行っていても、基本僕は、人見知りなのだ。
さすがにビジネス書著者が集う会などは慣れたけど、それ以外のジャンルの方が多いと、いまだに緊張する。

先日お邪魔した、小説家・真山仁さんのデビュー10周年を祝う会は、まさに「アウェイ」感漂うパーティだった。
経済モノの小説を多く書かれているとはいえ、普段は会う機会がほぼない「作家」さんが主役の会。
知人の新聞記者の方に誘われ参加したものの、場違いなところに来てしまった感が強かった。

ただ、幸運だったのは、真山さんが、初対面の僕であれ旧知の編集者であれ、分け隔てなく話してくれる方だったことだ。
たとえば、最新作の『そして、星の輝く夜がくる』について門外漢の僕が質問をしても、とても誠実に答えてくださった。
そんな真山さんに、あるビジネス書の著者が単刀直入に聞いた。

「真山さん、文章をうまく書くコツはありますか?」

そんな「企業秘密」に関わるようなことを聞いていいんだろうか…、と一瞬驚いたけど、この質問にも真山さんは明快な答えを返していた。

「文章は書き始めるのは簡単なんだよ。誰でも(何かを伝えたいという)衝動があって、その勢いで書き始めるから。でも、それだけだと書き始めることはできても、終わらせるのが難しい」

これは本当に真理だと思う。
だからこそ、真山さんは「文章はすぐに書かないほうがいい」とおっしゃっていた。

まずは、書きたい文章をどう終わらせるかをイメージする。
できれば、そのとき何パターンも初めから終わりまでの道筋をイメージして、一番よい(意表を突く)ルートを選ぶ。
ようは、書き出すまでにどれだけ時間を使えるかだと。

シンプルな答えだけど、質問をしたビジネス書の著者も、その隣で見守っていた僕も、とても納得した。

もっとも、納得したからといって、すぐにそれを実行できるわけではない。
このnoteも、書き始める前にウンウン悩んでみたけれど、実際は書いては直し、書いては直しの繰り返しだ。

平易に見えるが本当は難しいことを、当たり前のようにやっている。
それが、活躍し続けるプロの条件なのだろう。

今週の、いちばんプロのすごさを感じた瞬間。それは、6月20日、銀座のレストランで真山仁さんのデビュー10周年をお祝いした瞬間です。

*「今週の、いちばん。」は、その1週間で僕がいちばん、心が動かされたことをふりかえる連載です(下の「このマガジンに含まれています」のリンクから全部の記事が読めます)

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