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「部外者」だから、できること?/今週の、いちばん。80

文章にとって、「鮮度」って、どれだけ大事なんだろう?
たとえば、魚なら、釣った直後が一番おいしかったりする(もちろん他の調理法もあるけれど)。
文章はどうだろう。何かを見聞きし、感じて、いざ書こうと思ったとき、それでも、いくらか寝かせたほうがよくなったりするんじゃないか。
けれど、今日は「とれたて」の文章を書いてみたい。
少なくとも自分にとって、これは、新鮮なうちに書き留めておきたいことだと思ったから。

さきほどまで、下北沢の書店B&Bで行われた<牧野圭太×長谷川哲士 「コピーライターの目のつけどころを生かして独立した話をします。」>というイベントにいた。
独立を控えたコピーライターと、独立したてのコピーライターの対談。
僕は広告業界の人間ではないけれど、「お隣さん」みたいな業界で生きているつもりなので、何か参考になるかも、程度の気分で会場にいた。

対談中、牧野さんが立ち上げた会社、文鳥社のプロダクト、「文鳥文庫」が配られた。
じゃばら折りの紙に本文が印刷された、ミニミニ文庫。
ウェブニュースなどでその存在は知っていたけど、実物を手に取るのは初めてだ。
牧野さんは、「スマホなどで紙の本を読む人が減っている今、<スマホより軽い>本をつくりたかった」とおっしゃっていた。

たまたま質問できた僕は、牧野さんのその発想を、彼が広告業界にいたことを引き合いに、「(いい意味で)部外者の発想ですね」と言った。
いま思えば、それは「思考停止の言葉」だったかもしれない。

そもそも僕が出版とは違うベンチャーに移った理由の1つに「(出版を離れて)部外者の視点を獲得する」ということがあったはずだ。
でも、現実はそうではなくて、いまでも僕は、出版業界がこれまで作ってきたフォーマットに縛られてはいないか。
正直、ベンチャーの時代でさえ、僕は部外者の目線をどれだけ持てていただろうか。
そう考えると、ちょっと冷や汗が出る。

自分には思いつかなかったアイデアを、外部の人だから思いつけたというのは、たやすい。
でも、それは「外部」であれ、「内部」であれ、本当に真剣に考えた人には、いつかおりてくるアイデアだったのかもしれない。
部外者だからできるよね、と思っているうちは、何もできないだろう。
僕は久しぶりに出版業界の「内部」にいるけれど、ただただ真摯に、この業界について、もっと考えたいと思った。

今週のいちばん、自分のアイデアのなさを恥じた瞬間。それは11月8日、下北沢のB&Bで、文鳥文庫の『高瀬舟』に目を奪われた瞬間です。

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