出版甲子園

今週の、いちばん。第34回/会わなくてもわかること、会ってみないとわからないこと。

ここ数年、多くの方から企画を持ち込まれる立場になった。
著者の方の紹介、エージェントの方からの提案、さらには勉強会や飲み会で知り合った方からの売り込み。
正直、それらの企画者全員と会う時間をとるのは至難の業だ。
だから、基本的には、一度企画書を書いていただき、見た結果、会うかどうかを決めている。

実際、企画書を読んだ時点で、たいていのことはわかる。
著者の実績、企画の完成度や市場性、独自の強み…
優秀な人は、たとえA4用紙数枚からも「光るもの」がうかがえる。
会わなくても、わかることはたくさんあるのだ。

ただ、話はそれほど単純ではない。
世の中、やはり、会ってみないとわからないこともある。
それを実感したのが、僕も審査員の一人を務めた「第10回 出版甲子園」というイベントだ。

これは、ひと言でいうと「大学生が運営する、大学生の出版企画コンペ」。
まずは企画書を事前審査でしぼり込み、優秀な企画の著者候補が、当日改めてプレゼンをする。
僕は事前審査から関わっていて、まずは企画書でその優劣を判定した。
けれど、当日プレゼンを見て、その評価を改めた企画が何本もあった。
企画書には盛り込み切れない著者の思い、熱量、そういったものに心を動かされた。

もっとも、だからといって、企画書が重要ではない、と言う気は毛頭ない。
どんなに熱いプレゼンができても、最終的にはそれを紙の本に定着しないといけないから。
その落としどころを事前に描けるかどうかは、やはり大事だ。

理想を言えば、企画書で「会いたい」と思わせ、会ったらいい意味で想像を裏切ってくれる…、
そんな著者となら、きっとよい仕事ができるのだろう。
もちろん、僕ら編集者も、そういう人にならないといけない。
自分より一回り以上若い学生さんたちに、大事なことを教わった日だった。

今週のいちばん「会うこと」の大切さを実感した瞬間。それは11月30日、参宮橋の国立オリンピック記念青少年総合センターで「第10回出版甲子園」の審査員としてみなさんのプレゼンを見ていた瞬間です。

*「今週の、いちばん。」は、その1週間で僕がいちばん、心が動かされたことをふりかえる連載です(下の「このマガジンに含まれています」のリンクから全部の記事が読めます)

今のところ、全ノート無料にしていますが、「おひねり」いただけると励みになります!