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イタイ、イタイ。でも、カッコイイ。/今週の、いちばん。65

文章を書くとき、BGMを流すのが苦手だ。
どうしても、聞こえてくる歌詞に思考がひっぱられ、目の前の文章に集中できなくる。
それでも、今日はクリープハイプ「百八円の恋」のPVをずっと再生している。
先日、オフィス近くの早稲田松竹で見た、「百円の恋」の主題歌だ。
*以下、ネタバレになるかもしれないのでご注意を

映画について書くのに、主題歌の話をメインにするのは、少々邪道かもしれない。
けれど、ラストシーンに流れてきたこの曲は、映画の世界観をいたいほど表していて、思わず聞き入った。

終わったのは始まったから
負けたのは戦ってたから
別れたのは出会えたから
ってわかってるけど
涙なんて邪魔になるだけで
大事な物が見えなくなるから
要らないのに出てくるから
余計に悲しくなる

見るからに自堕落で、イタイ主人公の一子。彼女がバイトをはじめた「百円ショップ」に集う、さらにイタイ人たち。
そんななかでも恋をし、精神的にも肉体的にも傷つきながら、すがるように始めたボクシングで、彼女に変化が訪れる。
それでも、人生すぐには大逆転なんてない。
何かに期待しながら、彼女のイタイ試合に釘付けになり、クライマックスの痛みを目に焼き付ける、(劇中の、そして僕ら)観客。
決して、最後までスマートじゃない映画。

でも、僕らの、というか僕の人生だって、そんなに大差はないのだ。
36歳で新しい、見る人によっては無謀な挑戦をして、すぐにいいパンチを打てるようになるわけでもなく。
仕事以外でも、思い通りにならないことも多々あって、あとからもっとこうすればよかったんじゃないかなんて振り返っても、ときすでに遅しで。
イタイ、イタイ。
だけど、不器用な自分はそうやって、少しずつ進んでいくしかない。

人生はワンマッチで終わるわけではない。
不格好でも、トレーニングをして、試合を組んで、負けたなら負けたで、もう一度練習の日々に戻るだけだ。
いまは、なかなか勝てない時期だとしても、きっと昔より、戦っている。
そんな闘争心を思い出させてくれる、僕にとっては、イタイけれど、とってもカッコいい映画だった。

今週のいちばん、「イタさ」に拍手した瞬間。それは7月25日、早稲田松竹で「百円の恋」を見た瞬間です。


*「今週の、いちばん。」は、その1週間で僕がいちばん、心が動かされたことをふりかえる連載です

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