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僕がいちばん、「編集」したいもの。/今週の、いちばん。74

「ベンチャーでは、どんな仕事をしてるんですか?」
転職してもう半年になるのだけど、いまだにそう聞かれる。
出版社時代と違って、クライアントの関係で公表できない仕事もあるので、社外の人にはわかりづらいのだろう。

少し前までは、同僚と一緒に、企業へのコンサルティング資料を「編集」していた。
その企業の方に、ある課題についてのヒアリングをし、「ストーリー」を組んだ上で、パワーポイントの資料にまとめて納品するわけだ。
また、最近は「KAIGO LAB(カイゴラボ)」という介護情報サイトの立ち上げに携わっている。
役割は「ライター」に近く、毎日、介護関連のニュースサイトなどを巡回して、その情報を紹介するライトな記事を書きためている。
(ただ、それらは主にストック用で、アップされる記事の大半は創業者の酒井が精力的に執筆したものだ)

情報を「集め」、「編む」ことで、価値あるアウトプットをつくる。
そういう意味では、以前と同じ「編集」の仕事を相変わらず続けているという認識だ。
そう、僕は「編集」のフィールドを広げるというチャレンジをするために、ベンチャーでの仕事を始めた。
ただ、それがどれだけインパクトを出しているかについては、少々心もとない。

先日、新しい「編集」に取り組んでいる先輩の、会社設立記念パーティにお邪魔した。
ある出版社で主に書籍の編集をされていた吉満明子さんが、センジュ出版という版元を始められたのだ。
新しい会社では書籍の編集以外に、千住という町を盛り上げるイベントなども仕掛けていくらしい。
本だけでなく、町をも「編集」する出版社。
「編集」の可能性を広げていくその活動を、応援するとともに、ちょっぴり嫉妬してしまう。

僕は社会人1年目から、ずっと「編集」の仕事をしてきた。
雑学や実用から、ビジネス書へとジャンルは変わったけど、「本」をつくるということはずっと変わらなかった。
だから僕は、業界を出た(正確に言うと、「2足のわらじ」生活なので、片足だけ出した感じだが)。
いままでと変わらずに本を「編集」し続けることが、本当に楽しいか、自信が持てなかったから。

でも、僕は何より、自分の働き方、ひいては人生を「編集」したかったのだと思う。
人生の残り時間がどれだけあるのかわからないけれど、ここらでそろそろ「第2章」を始めたかったのだろう。
ただ、この章は、短いボリュームのわりには、ずいぶん波乱万丈な章になった。
自身の「編集力」のなさを思い知らされた期間と言っても、いいかもしれない。

この秋から、少し、働き方を変える。
人生の「第3章」と呼ぶより、「第2章」の追加原稿というほうが近いかもしれないけど。
「編集者」であることは変わらない。
そして、変わらず、自分の人生を「編集」しようともがき続けるだろう。

予想した以上の速さで、いろいろなことが決まり、変化し、ときに終わる。
それでも人生は続くし、ページをめくる手は止められないのだけど。

今週のいちばん、自分が「編集」したものを見直した瞬間。それは9月25日、北千住の喧騒を抜け、ひとり、千代田線に乗り込んだ瞬間です。


*「今週の、いちばん。」は、その1週間で僕がいちばん、心が動かされたことをふりかえる連載です

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