見出し画像

8.29 呪いが解けた話

昨日の夜更けに、いきなり積年の呪いが解けた。

詳細はここには書けないけど、例えて言うならこんな感じだ。

- - - 

私はずっと同じバッグを使ってきた。もともとは直感的に選んできたものだったけど、だんだん体に馴染んできて気に入っていた。

でも「そのバッグ私は好きじゃないな」ってまわりから言われることが時々あった。それがだんだん頻繁になってきて、バッグに対する評価が自分の中で揺らぎ始めていた。

そんな時、ある人がこう言った。

「あなたがずっと使ってきたそのバッグはもう使ってはいけない。もっとあなたらしいバッグを探しなさい。そうしないなら、あなたとは付き合っていけない」

私はバッグを押入れの奥にしまった。そして「わたしらしい」バッグを探し始めた。

目につくバッグを片っぱしから手にとってみた。ほとんどが触った瞬間に「これじゃない」って思うものだったけど、「これなら、まあいけるかも」というバッグにも時々出会えた。

私は数個のバッグを手に入れて、かわるがわる使い始めた。どれも使うほどに馴染む、わるくないバッグだった。

でも、あのバッグにはかなわない。

だけどあのバッグはもう使えないから、忘れなきゃいけないのだ。

・・・

「いや、あのバッグ使えばいいじゃん」

そんな自分の声が頭に響いたのが、昨日の夜更けだった。

「だめなんだよ。あのバッグは使っちゃいけないって言われてる」

「それ言った人、どこにいる?」

あ。そうだった。

それを言った人は、もう私の近くにはいなかった。あれこれとバッグのことで関わってきたその人は、結局は私と長い付き合いをする人ではなかったのだ。

私はさっそく押入れに手を突っ込んで、あのバッグを取り出した。

なんだったんだろう。いろんな人が、「そのバッグ好きじゃない」「使わないほうがいい」って言ってた意味が、今となってはもうまったくわからない。だってこのバッグ、やっぱりめちゃくちゃいいバッグだし、私にぴったりだ。

こうして私は、今までもこれからも自分のバッグはこのバッグなんだ、ということを感じることができた。

もう迷ったりしない。

じゃあ、このバッグをしまっている間に手に入れた数個のバッグはどうしよう?

これらのバッグも、状況にあわせて引き続き使っていけばいいか。どれもがんばって探して手に入れたものだし、まちがいはない。

「使ってはいけない」と私に言った人に対して、…というよりその人の言ったことをいつまでも真に受けていた自分に対して、怒りや情けなさを感じてはいる。

でも、このバッグを使えない間のことも、きっと無駄じゃなかったんだと思う。

(終)

- - - 

この呪いは、自分でかけたものでもあるし、人によってかけられたものでもあります。

この呪いがなかったら、私はもっと楽に生きてこられたかもしれません。

でも、一度この呪いにかからないとどうにもならなかったのかもしれない、そんな気もします。

いずれにしても、人生って全部自分で決められるわけじゃないし、その決定に自分が関わっていたとしても、判断が合っているのかまちがっているのかその時点ではわかりようがないものなのだと思います。

もしあとから何かを失ったと感じたのなら、巻き返していくしかないし、得たものもあると思うのなら、それはとても喜ばしいこと。

あ、そういえばなんで急に呪いが解けたのかというと、これがまたとくにきっかけと言えるようなものはないんですよ。ほんとうにふと、気が付いたというか。

何かを部屋の中でずっと探していて、さっきも何度も見たはずの机の上を見たら、ふつうに置いてあるじゃん、なんで今まで気が付かなかったの、みたいな、そんな感じ。

ともあれ今は、久々のこのバッグの感触を楽しみたい。そんな気分です。

関係ないけど今日は肉の日(29日)。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

スキを押していただいた方にはスシをお出ししております。サポートしていただいた方には一言メッセージをお送りしております。

うに軍艦サービスだよ!お客さんラッキーだね!
228

瀧波ユカリ

漫画を描いたりエッセイ書いたり。noteでは『毎日、いい気分。自分の機嫌を自分でとるためのカンタンTips』「ショッキング・ブルーデイ』販売中。

ぱきぱきダイアリー

日記です
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。