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ロングテールの終わりとコンテンツ格差時代

昔、アマゾンのビジネスモデルを語るときに用いられた、ロングテールという言葉を覚えているでしょうか。売れ行きを棒グラフにして、売れた順に並べたとき、アマゾンは少ない売れ行きの商品がずらっと長い尻尾のように並んでいることから、これをロングテールと呼びました。少ない需要のニッチ商品をうまく収益化している、という趣旨で、ロングテールという言葉はEコマースやインターネットの可能性を語るときによく使われました。

しかしいま、ロングテールという言葉は死語といっていいでしょう。

当のアマゾンを見てみればそれは一目瞭然です。CDや書籍といったメディア商品は、一度品切れになると、あとはマーケットプレイス出品ばかり(多くはプレミア価格がついている)。かつては珍しい商品が手軽に手に入ることで重宝がられていましたが、いまや楽天化がどの商品ジャンルでも進んでます。

加えてコロナ禍の影響で、アマゾンは仕入れをかなり減らしていて、過剰在庫はささっと返品されてきたりする世知辛い状況も。結局、需要の少ないニッチ商品は、今やどんどん切り捨てられかかっているのです。

こうした傾向は、実のところグローバルで起きていることでもあります。

売れるものがより売れて、売れないものがますます売れない時代へ

インターネットの普及で、いまや私たちの前には選び切れないほどのコンテンツが並んでます。音楽はサブスクリプションでなんでも聴き放題になりましたが、果たしてあなたは、かつてのディスクガイドに載ってるような聞いたことがない名盤を検索して聞いたりしてるでしょうか? 漫画を無料で見られたり買えるサービスやアプリが200以上もあることを、あなたは知っていましたか?

そんな時代のコンテンツ産業で、ニッチなものをそこそこ売れるものにすることは大変難しくなってきました。SNSの普及で大きく変わったのは、話題になっているものがさらに話題になるようになったこと。バズるものがよりバズるようになったのです。同語反復的に聴こえますが、ある程度のキャズムを超えたものだけが、ひたすら話題にのぼり続け、売れ続ける時代。

そもそもコンテンツの供給過剰が言われる中で、選択するという行動がめんどくさいというのは、若い世代を中心によく話題に上ります。時間とお金は有限、それならば話題になってるものの中で気に入りそうなものを選ぶ方が効率良い、そんなふうに考える人が多数であっても全く不思議じゃないです。

多様性なんて言葉が世界で叫ばれる中なのに、実は驚くほどマスとニッチが分断されているのではないかと、最近つくづく思います。コロナ禍で空前の漫画売上を誇る中、どうしてまたまた重版しましたという作家がいる一方で、一生懸命販促に勤しまなくてはならない漫画家が沢山いるのでしょうか。配信の収入が大きくアップしたというアーティストをなぜ見ないのでしょうか。

いいねとリツイートが、個々人の言葉よりも影響力を持つ状態はまだまだ続くのでしょう。ドッグイヤーとかラットイヤーとか言われたネットのトレンドも、競合潰しに余念のないGAFAによっていつの間にか固定化してきましたが、次のパラダイムチェンジはいつ来るのでしょうか?

追記:前からGoogle Documentに下書きしてた記事をNoteに雑に直して公開したものですが、同じようなことを言ってる記事が最近出てたらしくて驚き。https://news.yahoo.co.jp/articles/273d13929d5e9d9cb71cba56550d820e62a1d754

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