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Widescreenの頃

2000年2月から2005年3月までの5年間、ぼくは「Widescreen」というDJイベントをやっていた。店を借りたイベントではなく、当時下北沢の一番街にできたばかりだったREVOLVERというバーのレギュラー番組として始まったものだ。だからBGM係とでもいうのがより正確かもしれない。

毎月第1日曜日の夕方から終電まで。大学時代のサークル仲間を相方に選んで、たいていはもう1人ゲストを呼んでいた。ときどき驚くような有名人がきてくれることもあったけど、基本は20代の無名の音楽好きがこじんまりとやっていた会だった。

当時の告知ページ兼セットリストを以下に再公開してみる。

http://widescreen.starfree.jp/

「水野直希(The Teeth)」という表記にハッとするひともいるかもしれない。そう、ぼくの相方は、最近一部で話題のTHE TEETHというバンドをやっていた男だったのだ。

2019年1月、謎のギターポップバンドのCDが話題になる。約20年前に録音されたまま、お蔵入りになっていたものらしい。プロデュースはマイクロスター佐藤清喜氏、バンドの名付け親はBMXバンディッツのダグラス、と、その筋の人なら気になる名前がちらほら。おまけにパールフィッシャーズみたいな、日本人離れした曲を書く。こいつら一体何者だ?

当時ほかにリリースもなく、ライブの機会もほぼなかったTHE TEETHは、ごく近くにいたはずの自分にとっても謎が多かった。途中経過のデモは何度か聴かせてもらっていたけれど、まとまったかたちで聴いたのは今年CDが発売されてからだ。それでも完成したアルバムを聴いて、Widescreenでの水野くんの選曲を懐かしく思い出したのだった。

14年前に終了した素人DJのプレイリストを再公開しようと思った理由は三つほどある。ひとつは水野くんの選曲が一部記録されているからだ。2000年代前半に自分たちがどんなふうにレコードを聴いていたか、THE TEETHの音楽がどんな気分や背景のもとに生まれたのか、参考にしてもらえるんじゃないだろうか。

もうひとつは、Widescreenでやったとあるライブ企画が、THE TEETHが人前で演奏した唯一の機会だと知ったからだ。そんな話も、この場で追い追いしていこうかと思っている。

三つめ。素晴らしい音楽を残した水野くんが、もうここにはいないからだ。彼が去年6月に亡くなって、そのことを自分はまだうまく捉えられずにいる。思い出話で心の整理をしてみたいというのが最後の理由だ。

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