「ココ吉」でTHE TEETHのLPを買った
RECORD STORE DAY 2019に合わせて、THE TEETHのアナログLPが発売された。せっかくなら縁のある店でと思い、ココナッツディスク吉祥寺店に買いに行った。
店長の矢島和義くんは自分たちの学生時代からの付き合いで、THE TEETHの水野くんとは大学が一緒だったりもする。同世代というだけでなく、フリッパーズ・ギターをきっかけにレコード趣味そのものに目覚めたみたいなリスナー歴が近いこともあって、僕たちのWidescreenでも2002年に二度、DJをしてもらっていた。
最近の「ココ吉」は、日本のインディーバンドを独自のネットワークとセレクトで売る店、みたいな地位をすっかり確立していて、矢島くんも名物店長としてラジオ番組に出たりしている。知っている人も多いかもしれない。ココ吉の成り立ちと矢島くんの人となりについては素晴らしいインタビューがあるので、ぜひそちらを読んでほしい。
▼レコードとインディーシーンがクロスする場所 ココナッツディスク吉祥寺店・矢島和義インタビュー – Tokyo Loco magazine
http://tokyoloco-mug.com/interview/ccnd_kichijoji/
さて、発売日の4月13日。12時の開店を意識しつつも順調に支度が遅れ、到着予定は30分遅れといったところ。電車に揺られていると、開店と同時に入店した友人からメッセージが届いた。「THE TEETH確保しとく? 売り切れるよ!」
正直言ってびっくりした。ココ吉のブログでは、今年のRSD限定商品はTHE TEETHしか売らないとアナウンスしていて、それなりに数を入れていると思っていたからだ。それに話題作とはいえ、今年の1月までまったく無名であったようなバンドのLPが争奪戦になるなんて想像もできなかった。
音楽だけでTHE TEETHを知って、欲しがっている人がこんなにいるのか。
12時半ごろ店に到着し、友人に抜いておいてもらった盤を受け取った。いつも新譜が陳列されているキャビネットの一段がすっかり空っぽになっている。人気は嘘ではないみたいだ。
矢島くんも売り切れるとは思っていなかったみたいで、自分の分が買えなかったと言っていた。
吉祥寺にはなかなか来れないこともあって、店内をそれなりに真面目に掘る。ずっと欲しかったアン・スティールのLPと、ソフィー・アンド・ピーター・ジョンストンのLPを見つけて、いっしょにレジに出した。「レコード・ストア・デイ」を客として全うできた気分。
ところで、RSDに最初期から参加していたココ吉が、今年は1アイテムのみ取り扱いというのもなかなかすごい話だなと思う。頑張ってるレコード店に集客するのが目的の祭りだったはずが、最近は限定商品だけが一人歩きしてしまっているところがあるのは客としても感じていたから。
本家RSDのスタートが2008年、翌2009年には日本でも有志でスタートしていて、ココ吉もそこに参加している。当時のココ吉というか中古レコード店が置かれた状況はかなり厳しいものだったみたいで、矢島くんもさきほどのインタビューで「2007〜2010年は本当に辛かった」と赤裸々に語っている。
その時期、「同じ世代の30代の人はレコードなんて聴いてる暇もねえよ、みたいになっちゃって」と矢島くんは言う。たしかに自分も心当たりがある。水野くんも、一時は部屋一面を埋め尽くしていたアナログ盤を、2000年代の終わりまでにはほとんど売り払ってしまっていたと言っていた。団塊ジュニア世代が買わなくなって、一気にレコード不況になっていたわけだ。
だから矢島くんが店を続けてくれて、その店で水野くんの音楽をアナログ盤で買う日が訪れて、しみじみ嬉しかった。これってぜんぜん当たり前のことではない幸せだと思う。
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