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THE TEETHの最初で最後のライブ

THE TEETHのCDのライナーで、山口真輝さんが唯一のライブのことに触れている。今回はその話をしようと思う。

情報が少ないTHE TEETHだが、実は2000年頃に一度だけライブをやったことがある。水野が音楽仲間たちと共に、下北沢REVOLVERでやっていた『Widescreen』というリスニング系DJイベントで、BMX Banditsのダグラス・T・スチュアートと競演している。ごくごくプライベートな簡易的なライブだったらしく、おそらく観た人も少なかったと思われる。

山口さんがここで触れているのは、2000年3月26日(日)に行われた以下のイベントのことだ。たしかにTHE TEETHがダグラス・T・スチュアートさんのバックバンドとして出演し、BMXバンディッツのレパートリーを何曲か演奏したのだった。ちなみにTHE TEETHの名前で演奏したものの、彼らのオリジナル曲は演奏されていない。

2000/3/26 Widescreen feat. Duglas
Live: Duglas T. Stewart (of BMX Bandits) with The Teeth
DJs: 小野田雄/長谷川裕/水野直希/瀧坂亮

当時の告知ページを見ると、Widescreenというイベント自体が2000年の2月24日に始まったばかりで、レギュラー回はまだ3回(当初は隔週木曜だった)。この日は特別編として日曜日にやったということもあり「3.5回め」の扱いになっている。

THE TEETHとダグラスさんの交流についてはCDのライナーにもあるとおりで、メンバーのまっちゃんがイギリス滞在中に不思議な縁でつながったということのようだ。自分が水野くんを誘ってWidescreenを始め、折良くダグラスさんが日本に遊びに来る予定が近かったので、水野くんたちがダグラスさんにオファーしてくれたというのがこのライブの経緯だ。

我ながら怖いもの知らずな提案をしたものだと思う。THE TEETHにはライブ経験がなく、会場の下北沢REVOLVERも普通のカウンターバーで、当時まだライブを入れたことがなかった。もちろんライブ用のPAなどもないので、彼らが宅録に使っていたVS-880を卓がわりにして、DJミキサーに赤白ケーブルでつないで無理やり音を出したのだ。

演目はBMXバンディッツの曲を何曲か。録音や記録を残していないのが残念だが、自分の記憶では
「Little Hands」
「Cats And Dogs」
「Thinkin' Bout You Baby」
「Do You Really Love Me」
といったあたりは練習に付き合った覚えがあり、確実に演奏しているはずだ。メンバーのまっちゃんにも確認したところ、ほかに「Lonely Love」「Figure 4」「Strange Song」といった曲もやった記憶があるという。あがっているだけでも7曲、意外にがっつりとライブをやってもらったようだ。

当時の写真を見ると、THE TEETHの二人がギターで、まっちゃんは一部ピアニカなども使っていた形跡がある。ベースは宮本望さんにお願いした。当時江古田で「サムデイ」というレコード店をやっていた方で、事前の音合わせもサムデイでやらせてもらっていた。しかしその日には全曲を合わせることができず、宮本さんには音源だけを渡して練習してもらい、ライブ当日にぶっつけで合わせたのだった。これも今思うとずいぶん失礼なことをしたものだと冷や汗が出る。

さて当日。店の奥のスペースをステージがわりにして、ダグラスさんに歌ってもらった。お客さんは30人くらいだっただろうか。細長い形状の狭いバーが人で埋まっていた記憶がある。10代のころから聴いていたダグラスさんがこんなアットホームな空間で歌ってくれるなんてと感激してしまった。ダグラスさん、ありがとうございました。

そして自分が水野くんのギターをしっかり聴いたのも、このときが初めてだったと思う。いつもはDJの相方だった水野くんにこんな才能があったなんて、と感心しながら聴いていたのだった。

今年の1月、発売日に買ってはいたもののしばらく再生する勇気がでなかったTHE TEETHのCDをおそるおそるかけてみて、1曲めの「Cosy Nest」が流れたとき、ダグラスさんのバックで「Thinkin' Bout You Baby」を弾いていた水野くんのことを思い出していた。アコギがワンストロークごとにきれいに鳴っていて、ああ、彼のギターってこうだったなと。THE TEETHの曲もライブで聴いてみたかったなと思うけど、それはもう叶わぬ願いになってしまった。

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