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天使の分け前とか、悪魔の取り分とか。

アルコール飲料を木樽に貯蔵しておくと、貯蔵期間に応じて液量が減少することはよく知られている。

木の樽は呼吸しており(詩的な表現)、アルコール分や水分が蒸発して、減るのだ。
その減った分を天使の分け前、エンジェルズ・シェアと言う。

一方、樽に染み込んだまま残ってしまう分があり、これを悪魔の取り分、デヴィルズ・カットと言う。のだそうだが、この概念は今のところ、ジムビームしか提唱していない。っぽい。

天使の分け前は、取り戻せない

エンジェルズ・シェアによる減りかたは、湿度の高いスコットランドのアイラ島では年間1~2%(スコッチの場合)、乾燥したアメリカのケンタッキー州では年間10%を超えることもあるそうだ(バーボン・ウイスキーの場合)。
湿度の高い環境ではアルコールがよく蒸発し、熟成とともにアルコール度数が下がる。乾燥して寒暖差のある環境ではアルコールよりも水分がよく蒸発し、アルコール度数が上がる(ことがある)。
いづれにしても、天使に分けてあげた分は、返してもらえることは決してない。

しかし、悪魔の取り分は、取り戻すことが可能らしい。
神話の時代からよく知られているとおり、天使より悪魔の方が人間に甘いのだ。

悪魔の取り分を、取り戻す

その方法は、デヴィルズ・カットの残る樽に水を入れて揺する、と言うもの。カルピス原液やシャンプーの残りを回収利用するのと同じだ。
悪魔に取られた原酒そのものを、というよりも、その残滓たる濃厚な香味を回収するのが目的っぽく、ジムビームではこの香味の溶け込んだ水を、ボトリングの際の加水として利用している。

なお、このデヴィルズ・カットを回収して加水に用いたウイスキーは「ジムビーム デヴィルズ・カット」として販売されているので、興味があればお試しあれ。
バーボン・ウイスキーの特徴であるヴァニリックが強調され、コーンの甘みとカラメルめいた焦げ感とが合わさり、ちょっとしたゴチソウめいた良さがある。

あああー、ウイスキーが飲みたい。まだ飲めない。

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