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【すげー】NHKスペシャル_羽生善治_52歳の格闘~藤井聡太との七番勝負~

最近、若い衆(粋な感じで「わけーし」と読んでね)から「還暦おめでとうございます」のあとに「年を取るとなにかいいことがありますか?」と聞かれることが多いです。

ないです、と答えます。

・・・実際に「ない」としてもだ、そんな身も蓋もないことをいうのもなんだから、「ある」という前提でなにか探すとなると、そうだな、これかな。

若いヤツと戦える。

「いいこと」というか、「楽しみ方」とでもいうか。
けっこう血が騒ぐかも。


どうやって勝つか

実際に戦うとなると、若いヤツらは「今どきのやり方」で勝負してくるだろうし、こちら側としては「今までの人生で培ってきた経験値(知力)」で挑むことになろう。

そんな戦いを「ハラハラドキドキ&感情移入」しながらたっぷり楽しめた番組が、冒頭のNHKスペシャルです。
アーカイブで視聴しました。
2023年4月15日放送の番組で「配信:2024年4月15日まで」と。
まもなく終了ですのでご関心ありましたら。

将棋界で無敵の強さを誇る藤井聡太六冠(20歳)が、思わぬ苦戦を強いられた王将戦七番勝負。立ちはだかったのは復調を果たした「レジェンド」羽生善治九段(52歳)だった。AIを駆使して研究を深め、正確無比な読みを誇る藤井。対する羽生は、藤井の経験が少ない作戦を採用、得意とする複雑な展開に持ち込む。両者の持ち味が存分に発揮された「天才対決」。熱戦の舞台裏で何が起こっていたのか、羽生の証言を軸に解き明かす。

NHKスペシャル 羽生善治 52歳の格闘 ~藤井聡太との七番勝負~

「年の差32歳」の“天才対決”。
下馬評では若い王将の“圧勝”。

いままでの対戦成績は若い王将が7勝、レジェンドが1勝。
さてどうする。

レジェンドは勝負の前に心境を述べる。
「ただ対戦があったというだけでは意味がない。中身があるものを残したい。」
・・・かっちょええ。

だがしかし、蓋を開けてみればまったくの互角だった。
戦いの様相は「抱負な経験を生かした多彩な戦法」VS「正確無比な差し手の切り返し」。
まさに熱戦。

そんでね。
「あぁそうだよなー」と思わず声に出てしまいそうな名言がレジェンドから。

  • 自分自身の個性とかオリジナリティーを求めていくやり方を突き詰める

  • 遊びの部分とかゆるぎの部分を見極めて、新しい可能性を探っていく

この「遊びの部分」「ゆるぎの部分」というのが、ね。
そうですよね、ですよねですよね。
勝負の軸足をそこにもおいて、そして「新しい可能性」を探る。
そんな芸当、AIじゃできないだろ(←多分、知らんけど・笑)。

第1戦(第1局)での戦法

将棋は詳しくないけど、レジェンドが繰り出す戦法の名前が、かっちょええ。

「一手損角換わり」

名前のとおり「一手は損をするんだろうけど相手の出方を待って迎撃する」というもので、一昔前に流行った戦法らしい。
なので今では対策が進み、指す棋手はほとんどいないそうだ。
もちろんAIでの“評価値”は限りなく低い。

それを、なんと第1戦(第1局)で、レジェンドは繰り出す。
これが「遊びの部分」「ゆるぎの部分」での可能性の追求なのかも。

まさに「虚を突く」という作戦だが、でも勝算あり。
というのも、この「一手損角換わり」は、若い王将がデビューする前、つまり十数年前に流行った戦法だそうです。
そこを突く。つまり「経験のなさからくる若い王将の動揺」を狙う。
セオリーから一歩はずれたところでバトルを仕掛ける。

レジェンドは「複雑な展開の中でのねじり合い」が得意だそうで、だからそんな乱打戦に持ち込もうとしたのでしょう、との解説あり。

だがしかし、第1局は若い王将が、レジェンドをねじ伏せて勝利した。

弱点はあるか

七番勝負を挑むにあたり、レジェンドも若い王将の対局記録を徹底的に調べあげていたそうで、このあたりが、ワタクシが好きな「野村監督のID野球」っぽくて、なるほどなるほど、と興味津津だ。

データベースを解析し、作戦別の勝率データなるものを出す。
で、レジェンドの結論がすばらしい。

弱点がない。

「大体8割から9割くらい、全部、勝っている」
「作戦で、ここが弱い、ここを突けばよい、というのが、ない」

・・・とのこと。
だた、レジェンドはこういう。

「データは、あくまでも、過去のもの」
「過去にはなかったもののなかで、なにか新しいものを、見つけていく」

・・・かっちょええ。

続く第2戦(第2局)

これまたレジェンドの戦法(名前)かっちょええ。

「相掛かり」

自陣の守りに重きを置かず、すばやく攻撃の体制を整える積極的な戦法。スピード勝負でガンガン攻めまくるレジェンド。そして51手目で、敵陣深く、ビシッと飛車を打ち込んだ。
攻めて攻めて攻めて攻めまくる。
いままでの棋手人生すべてをかけて、若い王将に挑むレジェンド。

繰り出すのは“右サイド”からの徹底攻撃。
そして、出たぁ〜、意表をつく一手が“左サイド”から。
解説のみなさんも「えー、こっちに打つんですか(唖然)」と。
若い王将も長考に沈む。
だがしかし、逆転を狙って捨て身の攻撃に転じる。
やるかやられるか。
若い王将の怒涛の王手ラッシュ。
レジェンドが一手でもミスすれば負ける。
しのいでしのいで、かわしてかわして、そして最終盤。

解説室も緊張に包まれる。
解説室に備え付けてあるAIによれば、レジェンドが「4八香」を打てば勝つ。
しかし「4八金」「4八桂」「4八角」などその手以外はすべて負け。
静寂に包まれる。
するとレジェンドは静かに「4八香」を打った。

第3戦(第3局)は若い王将が圧勝

レジェンドが採用した作戦は、数年前に流行った「雁木」というものだった。
対策も進み、いまではAIによる“評価値”も低いらしい。
時代は“評価値”がすべてだ。
若手棋手は見向きもしなくなった雁木。

だからこそ、なのでしょう。
レジェンドはこう言ってました。

遊び心で勝負に挑んだ。

・・・しびれます(感涙)。

そして第4戦(第4局)

これもおもしかったっす。
レジェンドが採用した戦法は「角換わり」。
これ、若い王将がもっとも得意としている戦法だそうで、それを堂々とぶつけていった。
さらに「独自の工夫を凝らして前例のない形に持ち込んだ」と。

前例のない形。
若い王将の手薄な部分を攻め込んで活路を見出すという気迫。
攻めて攻めて、そして最後は攻め倒した。
すごいっすよね。
相手の最も得意としている戦法で挑み、禁断の一手みたいなのを編み出し、そして勝つなんてね。

かくして、勝負の行方は第5戦(第5局)以降になだれこむ。

という感じで、たっぷり楽しめます。
そんで、番組の最後のほうで、こんな言葉もありました。

(若い王将が)レジェンドに教えを乞うているような姿にも見えます。

戦いを通して、そんなふうに思ってもらえたら、そりゃもう、本望だろうなと。
ワタクシも、若い衆に、そんなふうに思ってもらえたら、もうほかになにもいらない。
まさに、悔いなし。
そしたら死んでもいいや。
あはは〜\(^o^)/

ということで、今回はHHKドキュメントを視聴しての感想をあれこれ記してみました。
最後までおつきあいくださいましてありがとうございます。

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