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非公表裁決/法定代理人のいない未成年者が「相続の開始があったことを知った日」はいつか?

相続人が相続開始時において法定代理人のいない未成年者である場合に、当該相続人が「相続の開始があったことを知った日」(所得税法125条1項)がいつになるかが争われた事案の裁決例です。

唯一の親権者が死亡してしまうと、未成年後見人が就任するまでは法定代理人がいないことになりますので、相続人が相続開始時において法定代理人のいない未成年者である場合というのは珍しいことではないですよね。

未成年者に意思能力がない場合には、法定代理人が就任するまで「相続の開始があったことを知った」こととはされない(相基通27-4)のですが、意思能力がないとは言えないような年齢である場合はどうかということです。

請求人は、未成年者は単独で法律行為を行う能力(行為能力)がないのであるから、未成年後見人が選任された日が「相続の開始があったことを知った日」であると主張したのですが、審判所は、未成年者であっても、相続の開始原因たる被相続人の死亡という事実を知った日が「相続の開始があったことを知った日」であると判断しました。

可哀想な気もしますが、相続の放棄の熟慮期間の起算点である「相続の開始があったことを知った時」(民法915条1項)については、「相続人が未成年者又は成年被後見人であるときは・・・その法定代理人が未成年者又は成年被後見人のために相続の開始があったことを知った時」であると明文で規定されているのに対して、準確定申告の起算点である「相続の開始があったことを知った日」については、そのような規定がないことからすると、現行法の解釈としては、やむを得ないのかもしれません。

なお、請求人は、準確定申告書を法定申告期限内に提出しなかったことについて「正当な理由」(通則法66条1項)があるという主張もしていましたが、審判所はそれも認めませんでした。

審判所も裁判所も「正当な理由」については滅多なことでは認めてくれませんね。個人的には、法定代理人が就任してから相当な期間内に申告書が提出された場合には、「正当な理由」を認めてよいのではないかと思うのですが。。

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