Amazonに頼らない勇気

よく「Amazonで販売した方がいいですか?」と、ブランドから聞かれることがある。僕はある経験をしてからはいつもこう答える、「戦略的にAmazonを使う以外は、やめた方がいいですよ」と。

戦略は、どこで戦うかを決めるということだと思う。もしオンラインという戦場を選んだのなら、競合の多いAmazonという大海原に飛び込み、荒れ狂う海で戦う感じだと思う。

一消費者としては、Amazonはほぼ毎月1回は買い物をしていると言ってもいいくらい、本当に便利で、普通に“日常”。なにを買っているかと言えば、食洗機や洗濯乾燥機の洗剤や、いつも興味が変わる子どもの絵本やおもちゃ、ヘアワックスなど、いわば目と鼻の先にある総合スーパーの存在。つまり、日用品をAmazonで買っている。

反対に、ブランドは日用品ではなく、非日用品を売っている。メッセージや発想、守ってきた技術や伝統を物理的なカタチに表現したものだ。言い換えると、マイナスの状態をゼロに戻してくれるのが日用品だとしたら、非日用品はゼロの状態をプラスに引き上げてくれる。だから、気分がアガるというのかな、今書いていてふと思った(笑)。

そんな非日用品は、Amazonのサイト外で認知拡大をしない限り、Amazonに掲載すると埋もれる。メッセージや想い主導の商品は検索が難しいので、そもそも検索でヒットしない。Amazon内で広告を買うこともできるので、検索ユーザーに露出はできるが、たいてい検索ユーザーは今すぐ欲しいか、ある程度安く買いたいか、レビューの安心感で買うので、効果的に使えればベストだが、シンプルな指名買いになってしまい、リピートに繋がる可能性はほぼない。もし売上が立ってしまったら、広告依存になり、次第に潜在顧客層が枯れてくる。つまり、非日用品は認知にしてもファンを作っていくのにもAmazonはベストな選択肢ではない。よって、ファンが作れないのでブランドにもなれない。

Amazonに頼らない“勇気”は、MONOCOで実際に販売しているCode10というバックパック・ブランドが教えてくれた。

彼らは、香港に移住したプロダクトデザイナーの2人、チャーリー(イギリス)とクリス(スイス)によって作られたブランド。実際にサーファーの彼ら、朝はサーフィンを楽しみ、そのままカフェやオフィスに行って仕事に取り掛かる。雨もよく降る香港なので、濡れたものとMacbookを一緒に持ち歩いても大丈夫な「完全防水バックパック」を作り上げた。

ここで、「完全防水」というのはめちゃくちゃキャッチーなのだが、ただモノを売るのではなく“価値”を売ろうと心がけているMONOCO。どんな価値を売るのがベストかと考えた結果、彼ら2人の生き方がかっこいいし、リアルなストーリーなので、彼らのライフスタイルを売ろうと決めた。メッセージは、「思いっきり遊んだあとは、思いっきり仕事をしよう!」だ。

ここで、信頼しているSincere 岡田さんとどのような販路にするかを一緒に決めた。Sincere は、Code10の国内代理店である。GOOD ストーリーと素晴らしい商品があるので、ネットではまず自社サイトとMONOCOだけで販売しようと決めた。蓋をあけてみれば、MONOCOだけで初年度1,500台の販売があった。1品番のみで、値引き一切なしにも関わらず、全国1,500名の方々が共感し、Code10オーナーとなった

2年目に入り、岡田さんから「実店舗にも取り扱ってもらってもいいか」と相談があった。岡田さんと話し合った結果、ブランドそのものや買っていただいた方の想いを守るべく「インターネットでは広めすぎず、実際に商品に触ってみたい実店舗に取り扱っていただけるのは良いこと」と判断し、実店舗での展開がスタートした。

本来ブランドの代理店をやるというのは、3年間継続できればいい、という指標があるらしい。ディストリビューター(Distributor)という視点からは、3年で売りに売りまくって市場に浸透させて終わり、という乱暴な言い方もできる。もちろん、ディストリビューターもそんなことは望んでいない。

このAmazonを除いた販路設計というのが3年目にして結果が現れ始めている。販売台数は一向に落ちることなく、3年目はまだ半年しか経っていないのに、もう1,500台の実績に繋がっている。聞いたところによると、実店舗での販売も好調で、「みんながハッピーという状態が作れている」と言えそうだ。本当にありがたいことだ。

伝わるリアルなメッセージを決め、そのメッセージをちゃんと伝えられる場所で販売する。

ここでの“リアル”というのは、本当に大切で、ちょっと良さげで表面的なメッセージはユーザーがすぐに見抜く。見抜けなくても、一度体験してみて、味が薄いから、もっと濃い味のものを探す。MONOCOの商品選定チームにも、「そのブランドは噛んでも噛んでも旨味があるスルメイカか?」と聞くのだが、リアルなメッセージは、実体験と本当にそれを発信したい人の心から来ると思う。

販路設計においてはまだ少し検証できたくらいで、これからももっと仮説検証していきたい。お客様が笑顔になれる情報づくりは、結果的にブランドも笑顔になれるということを信じて。

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