新ブランドが最初に伝えるべきこと。

6/26(水)に、Design Tokyo という展示会に行ってみた。

会場は東京ビッグサイト。いつも通り国際展示場駅から歩いて、着いたら、なんと Design Tokyo は別会場。シャトルバスが出ている。おそらく出展社数が増えたのだろう。

予想が当たった。会場には、Design Tokyo だけじゃなくて、インテリア雑貨EXPOとかもある。別会場だけで304ブースある。つまりこの半年で最低でも304社から、304以上のブランドが生まれ、それ以上の新商品が生み出されたということだ。

ブースを回りながら、いつも感じてることを思う。

なぜ、この広い会場のブースがいつもこんなに埋まるのか。世の中 AR、AR と言ってるけど、モノはなくならない。物理的なモノはなくならない。なぜなら、人間はモノを作って表現したいのだから。

モノ作りは、自己表現。考えていることが直にモノに出る。頭の中にあるメッセージがそのまま。煮えきってないものも、何年もかかって磨き上げたものも。メッセージがないものは、覚えられる特徴がそもそもモノに表現されていないので、おそらくブランドにはなりにくい。

ブランドは、新商品を発表したい、新規取引先を開拓したいから、展示会に出展する。展示会の運営会社もブースを売りたいわけだから、営業を頑張る。結果的に、ブースが増える。1バイヤーが全ブースを歩いて、メーカー担当者全員に作った想いを聞くのは不可能な状態になる。

一方で、この展示会に参加する個人のお客様はいない。参加しているのは、小売店のバイヤーかメディアが大半。ブランドは、本当は個人に伝えたいのに、必ず仲介が入る。

この構造は今まで変わってきてはいないし、変えにくいからこそ、展示会が商習慣化している。つまり、逆を言えば、数多く生み出される新商品の中から、ユーザーにぴったりのモノを伝えることができれば価値が生まれる。情報価値が上がる。

そう、モノが低コストで作りやすくなった現代社会では、ユーザーが適切に消費できるコンテンツ量をはるかに超えたコンテンツが日々生み出されていることが課題。

スマホの普及率が上がり、スマホ上でのアクティブ率も上昇傾向。だが、人間の時間は有限で、増えることはない。日本人の可処分時間は1日2.6時間とも言われ、そのうち35%はSNSの利用で消費されているらしい。

つまりどのブランドもどのメディアも、この可処分時間の取り合いをしているというわけだ。このレッドオーシャンの大海原に飛び込むと、「認知」が最も困難であろう。ノイズが多すぎて、知ってもらえない。

あのスマホの小さな画面で、「あ、こういうのがあるんだ」と一瞬にして気になってもらえるのが理想(無論、認知できたとしても、購入は保証されていない)。

認知に成功したとしても、ブランド名はアルファベットが多く、読み方も分からないから、覚えるのが難しい。検索エンジンで再度調べてみようと思っても、思い出せなくてワードを打ち込めない。

このような現代のコンテンツ消費構造の中で、新ブランドが最もするべきことは、商品の魅力を分かりやすく簡潔に伝えることに尽きる。特にはじめましてのユーザーは、ブランド名の由来ではなく「商品がもたらしてくれる価値」に興味がある。

この「分かりやすく簡潔に」というのが難しい。なぜならば、長い年月を商品開発に費やしてきたブランドほど、客観的なユーザー視点を持ちにくいからだ。

ブースに立ち寄ると、メーカー担当者は商品の機能やスペック、それに作り方の話をする。電化製品やガジェットは、差別化要因がそもそも機能やスペックだから、ある程度の知識を持った一般ユーザーなら伝わるのだが、大半のカテゴリの場合は、機能やスペックだけ伝えても“はじめまして”の人は理解するまでに頭を使う。これがもっと時間のない個人ユーザーだとしたら素通りされてしまう。

ユーザーは「その商品は、自身の生活にどんなメリットをもたらしてくれるのか」が知りたい。

MONOCOでは、2015年からお客様にまず自分ごとになってもらえるように『商品ストーリー』というものを作成している。僕ら自らが実際の生活で使って満足できなかったら、お客様も“自分ごと”には絶対できないと思うので、最低3週間その商品を使う。そこで、そもそも価値を感じられるのか、得られた価値が値段以上なのか、などを確認する。

こうして販売が決まった商品は、編集チームが24文字以内の“ストーリー”に書き起こし、毎週金曜日のストーリー会議で発表してもらう。商品ストーリーのプレゼン大会だ。

僕は、できるだけ良く寝て、脳みその中を空っぽにしてから、この会議に臨む。お客様の気持ちになって、ストーリーを読んでみる。最初の1ワードで頭に入って来なかったら、再度練ってもらうことが多い。1ワードで自分ごとになるかどうかは本当に難しいが、みんなスマホで情報をサクサク処理している。僕自身もスマホで読んでみると、PCでは良かったものが、スマホだと分からないということも出てくる。

この商品ストーリーで面白いのが、メルマガをお客様にお届けした次の日、使われていた言葉をそのまま検索している人が増えているということ。最近だと、「焚き火」や「浮いている」などがある。誰もブランド名で再検索していないのがこれまた面白い。

「焚き火」は、TenderFlameというオイルランプのブランドだが、『おうちのテーブルで“焚き火”』というストーリーで販売開始した。

「浮いている」は、Elea Chair という『浮いているワーキングチェア』のことだが、座面が吊り下げ式で浮いており、座ると腰がとても楽で、もう他のイスに座れなくなるくらいだった(笑)。この特徴のオフィスチェアは世の中にはないからストレートに伝えようと決め、発表に至った。どれもおかげさまで大好評で、飛ぶように売れている。

でも現実的に、一度ストーリーを伝えたからといって、商品を購入してもらったからといって、ブランド名を覚えてもらえるとは思えない。購入したあとでも、「その商品はいかがでしたか?」、「ご購入された商品の新しい使い方を教えます」というような情報を送れると、ユーザーとの接触回数が増え、モノとの関係だったのが、ブランドとの関係に変わっていくんじゃないかなと思う。

プレスリリースや展示会は、新商品発表の手段だとは思うが、『商品ストーリー』がもっと浸透するように頑張りたいと思った。“ストーリー”という言葉を選んだ理由は、また書きたいな。

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