老人ホームでの日常を綴っています。

お名前は？
「タナカユキコです」
お年は？
「・・・」
お父さんのお名前は
「シカジュウです」
シカジュウ？　どんな字を書きますか？
「シカにジュウです」
ユキコさんとの会話はいつもこんな感じだ。
それにしてもお父さんのお名前は変わっていますね。
鹿十さんって言うんです。
ご兄弟の十番目かしら？などと勝手に想像する。

ユキコさんは食事の時以外は寝ているのであまりお話する機会がない。
耳が少々遠いので耳元で話し掛けると、大きな声で片言の返事が帰って来る。

起きましょうか？
「いや〜起きん」
ご飯食べますか？
「いや〜食べん」
部屋に帰りますか？
「いや〜帰らん」
と、体外否定的な答えが帰って来る。

その時もスタッフがふざけて
今日はシカジュウさんが天国から面会に来ていますよ。
「もう死んだ〜」
天国からユキコさんを迎えに来たみたいですよ。
一緒に行きますか？
と、聞いてみた。
不謹慎かもしれないが、
「いや〜行かん」
と言う答えを期待して言ったのだと思う。私もそう思った。
でも、ユキコさんの答えは
「あ〜行こうか〜」
だった。

ちょっぴり、いえ大分寂しかった。