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カスタマーサクセスの祭典・Pulseに参加して感じたこと

2019年5月下旬、サンフランシスコで開催された、Gainsight社主催のPulse2019に参加してきました。カスタマーサクセスに関する最大級のイベントで、2019年度の参加者は実に5,500人!keynoteが展開された一番大きいホールは、3,000人は入るであろうホール。それなのに、席が埋まるんだからすごい。

来場者の多くはカスタマーサクセス。日本にいるカスタマーサクセス従事者の総量を、この会場だけで越えてるんじゃね…?という。もう1つの特徴は、プロダクトマネージャーも来場者の中に多かったのが印象的でした。

Pulse自体でどんな発表がされたのか?などはAyumi Suzukiさんがまとめてくださっている「【Pulse2019】カスタマーサクセスの行方」や「【Pulse2019】参加レポート!カスタマーサクセス×プロダクトマネジメント最大カンファレンス」などが、死ぬほど素晴らしいまとめになっているため、ぜひご覧になってみて下さい。

自分は、参加してみての感想・意見を下記の観点で書きます。

① へぇ~!面白い!と思ったこと

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Pulse2019では「Human-1st」という概念が繰り返し説かれていました。Human-1stは5つの原則から成り立っていて、項目と要約をざっくり書くと…

1:GROWING
ユーザーが成長していけるようにプロダクトを改善していく。

2:SPECIAL
顧客をデータだけで見ないこと。数字の先にはそれぞれ「人」がいる。

3:VULNERABLE
顧客は脆弱性があり、傷つきやすいもの。ユーザーのプライバシーがきちんと保護されるようにし、データが悪用されるのを避ける。

4:ENDS NOT MEANS
買ってもらって終わりではない。使ってもらう中で顧客からのフィードバックを大事にする。

5:AUTONOMOUS
顧客はそれぞれ自ら考え、意思決定する。ユーザーの心理、行動特性を知ることは大事。

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これまでのカスタマーサクセスにおいて、この5つの原則の中でGrowingには力が入れられつつも、他はまだまだ十分になされていない…ということが言われていました。

セットになる言葉は「Technology-2nd」

欧米ではテクノロジー/型化/データドリブンの要素がカスタマーサクセスに強く取り込まれている分、「向き合っている顧客=人が見えなくなってきている」という課題がある、ということです。

Human-1stの概念は、keynote以外のプログラムでもよく出てきました。人間同士の繋がりが失われ、顧客のシルエットが見えなくなっている…という課題。これは、マーケティングでもよく起きる問題です。

欧米はマーケティング文化が強力ですから、カスタマーサクセスにもマーケティング的な観点・考え方が色濃く反映されているのも、必然だったのかもしれません。

この話を聞いて、欧米と日本の「カスタマーサクセスの進化の仕方と直面する課題」の違いが面白い!と思いました。

日本のカスタマーサクセスは、日本の商慣習もあるのか、ハイタッチからスタートし、ハイタッチをもって進化してきたように感じています。そして直面している課題の1つは、よりテクノロジーの活用や型化、マーケティング要素を入れ込むことだと感じています。まさに真逆!

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日本のカスタマーサクセスは、欧米に比べると後発です。だからでは?という見方もあるかもしれませんが、僕はPulseで色んな話を聞く中で「日本のカスタマーサクセス最先端は、欧米にそこまで差を開けられていないな」とも感じました。

と言うのも、日本に比べてテクノロジードリブンで戦っている欧米のカスタマーサクセスも、やはりチャーンには苦戦していますし、僕たちからすると割と取り組んでいて成果も出ているコミュニティ・イベントなどの施策や、ハイタッチ型の支援は彼らからするとまだ斬新で模索中…という印象を受けたからです。

他、単純に「へぇ!」となったデータとしては、カスタマーサクセス従事者の女性比率は48%。かなり女性比率が高い職種と言えます。そして、カスタマーサクセスという職種を認知しているビジネスマンは54%。対して日本では、認知度15%弱だったという最近の調査もありましたので、このあたりは欧米の方がやはり進んでいます。

「日本の最先端はそんなに負けてなかったわ!」と息巻いてみたものの、取り組んでいる企業と、従事している方々が多い分、やはりカスタマーサクセス全体のアベレージは、欧米の方が高いな、とも感じました。日本、負けてらんねェ!!

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※Pulse2019では、Sansanさんによるセッションもありました


② 再確認したこと、改めて意識したこと

他にも面白かったことで「カスタマーサクセスの仕事、ハードすぎィ!」が、欧米でも大体鉄板ネタだったことです(笑)。

事実、カスタマーサクセスは突き詰めていくと、営業・渉外能力・顧客(業界)知識・扱えるツールスキル等がかなり広範囲で求められてきます。しかも、日々スコアから弾き出されるアクションリストと闘う(闘わなければ、待っているのはチャーン)わけですから、そりゃハードですよね…。

また、「カスタマーサクセスという文化は、上から伝わっていくもの」ということをハッキリ言うな~、と感じました。

僕も個人的には、カスタマーサクセスの推進とコア化はトップダウンでしないとダメだと考えています。カスタマーセントリックを先導するのは経営者から、です。なぜなら、カスタマーサクセスは会社の文化であり、考え方、顧客との向き合い方。理念に近い話である、と思っているからです。

ボトムアップから育つカスタマーサクセスもあると思いますが、かなり茨の道です。カスタマーサクセスは、きちんと育つまでに「何故存在するのか?」「どういう貢献をしているのか?」が非常に明文化・可視化しづらいと思います。経営者・他部門の協力がなければ尚更です。よほど強力なボトムアップでない限り、どこかで死んでしまうことが多いのではないかな、と思います。

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また、「カスタマーファーストメンタリティ」を持てているか、という話、問いも多く出ていました。日々データをにらめっこしたり、to doをこなしていく中で、顧客のことを第一に考え、主語にすることを忘れていないか?振り返ってみることは大事です。

ともすれば僕たちも「継続率を上げていこう」というような話し方・考え方をしてしまうことがあるのではないでしょうか。そうではなく、例えばベルフェイスであれば「顧客のセールス・CS活動をテクノロジーで進化させて、成果を出してもらおう!(そうすれば結果、ずっと使ってもらえるよね!)」という、カスタマーファーストメンタリティを持って日々活動したいな、と改めて感じました。


「プロダクトや新しい機能をリリースしたときではなく、プロダクト・機能が顧客の成功に寄与した時に祝おうぜ」という表現もしていたと思うのですが、改めて大事なことですね。

色んな言葉で「カスタマーサクセスとプロダクトは超・密接である。プロダクトや、プロダクトを通じての体験を支えるのがカスタマーサクセス」ということが言われていたと思います。

自分も過去のnoteで「カスタマーサクセスはKingではなく、Queenである」というものを、似た文脈で書きました。

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顧客に提供する価値は、カスタマーサクセスそれ自体ではなく、プロダクト自体であるべきです。プロダクトだけでは補えないことを一時的にフォローし、プロダクトを育てる種を集め、成長の方向性を間違わないようにするのがカスタマーサクセスなのだと考えています。

そして、Human-1stが声高らかに謳われる中「テクノロジーをカスタマーサクセスに利用することはやっぱり大事」ということも改めて認識しました。

僕たちは、もっと顧客と直接話をするべきです。顧客が本当に言いたいこと(=カスタマーインサイト)は、非対面ではとりきれません。そして、カスタマーインサイトこそ、プロダクトを活性化・成長させる生き血です。

ですが、デジタルからも顧客のことはかなり分かるし、デジタルが事業をスケールさせるのは、欧米の例を見ていても間違いありません。

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「データドリブンなカスタマーサクセスは事業を加速させる。ただ、いきすぎたデータドリブンなカスタマーサクセスは、顧客を見失う」ということが欧米の失敗事例の1つだとしたら、欧米に比べてデータドリブンがまだ劣る僕たちは「顧客と密に関わりながらも、データドリブンな観点を大いに入れんでいく」ということが、学びの1つと言えます。


③ さぁ、自分たち(ベルフェイス)はどうするか?

これまで書いてきたことも、すべて自社だったらどうするか?と置き換えた上で学びになりましたが、「SaaSビジネスにおいて大事であろう」とぼんやり考えていたことの1つが、自分なりに整理されたのが大きかったです。

僕はこれまで、SaaSはSalesforceのような巨人になるか、次点として巨人の肩に乗っておく(サービスをSalesforceと連携できるようにする)必要がある、と考えていました。ですが、それありきではなく「輪っかの中にいること」が大事なんだな、と自分なりに整理しました。

Pulseはセッションだけではなく、いわゆるExpoのように、色んなサービスがブースを出しているのですが、そこを眺めていると、市場価値の高いサービスは既にお互いが連携しまくっていることに気づきます。

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SalesforceやGainsightももちろんですが、他の有名サービスも多くが連携されています。それぞれのサービスの説明を受けるときも「●●か■■使ってない?だったら絶対便利だよ!」とか「▲▲が、より使いやすくなるよ。使ってないの?あ、でも××とも繋がるよ?」みたいな、「連携ありき」で話が進みます。

つまり、イケてるサービス同士が繋がり合って、大きな輪っかができているんです。

企業は、自分たちの事業を強く推進したい時に、目的に応じてサービスを選びます。もしそのサービスが輪っかに入っているサービスの1つであれば、最初に買ったサービスを起点に次々にイケてるサービスを見つけることができるということです。

起点がSalesforceなこともあるでしょうし、違うサービスを起点にSalesforceにたどり着くこともあるでしょう。ただし、Salesforceと連携するありきではないことにも気づきます。

なぜなら、Salesforceと繋がっているイケてるサービス群と、自社のサービスが繋がっていれば、間接的に繋がることになるからです。輪っかの中に入っていれば、Salesforceを選択した顧客は、いつか自社サービスに辿り着く可能性が高い。

なるべくなら自社サービスにたどり着くルートが多いほど強いので、連携しているサービスが多ければ有利ですし、もちろん強力なサービスであるSalesforceと繋がっているということは大事でしょう。

つまり、この輪っかは東京の路線図みたいなもので、その中でも乗り換えが便利な駅になるのを目指すってのがSaaSとして大事なんじゃないかなと思った次第です。

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世の中に無数のサービスがある中、顧客はこの輪っかの中でサービスを選んでいく傾向は強くなると思います。なので、この輪っかに入るためには?を命題にしていくのは、SaaSとして重要な考え方なんじゃないかな、と。もちろん、プロダクトが顧客の課題を解決するという、価値があることが大前提です。

ベルフェイスも、この輪っかの中に常にいられるようにしたい、と強く感じました。

④ (おまけ)珍道中記

サンフランシスコ…魅力と恐怖にあふれた街だったぜ…!

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カスタマーサクセスに関するnoteを中心に更新しています。これからも、よろしくお願いします!