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デザイナーの協業から生まれるクリエイティブの舞台裏

Takramがブランドの構築からロゴ・パッケージデザイン・ブランド及びECサイトデザインなどを手がけた菌ケアブランド「KINS」と「KINS WITH」。プロジェクトの舞台裏を3人のデザイナー、山口幸太郎、河原香奈子、長谷川昇平が語ります。

Takramでは、さまざまなかたちでTakramに興味をもってくださっているたくさんの方々との新たな出会いの場となるよう、カジュアルなトークイベント「Takram Night」を行っています。メンバー自身が語り手となって私たちがどのような会社で、メンバーがどのように働き、仕事をしているのかなど、Takramの取り組みや直近のプロジェクトについてお話しています。

コロナ禍ということもあり、初のオンラインでの開催となった第2回は、Takramがブランドの構築からロゴ・パッケージデザイン・ブランド及びECサイトデザインなど、包括的なブランディングを担当している菌ケアブランド「KINS」と「KINS WITH」を事例に挙げて、「デザイナーの協業から生まれるクリエイティブの舞台裏」をお伝えしました。

スピーカーには、プロジェクトメンバーであるアートディレクターの山口幸太郎、デジタルプロダクトデザイナーの河原香奈子、そしてUIデザイナーの長谷川昇平が登場。プロジェクトのプロセスや協業方法など、実際のエピソードを交えながら座談会形式で話しました。

Takramのプロジェクトの進め方

イベントでは、まずあまり語る機会が多くないプロジェクトの進め方やチームづくりについて3人のメンバーから話してもらいました。

Takramではプロジェクトの依頼をいただいたら、プロジェクトディレクターがパートナーとなるクライアントと、「どのようなことをするのか」「何を達成したいのか」など、プロジェクトのスコーピングを行うところからスタートします。それを受けて、そのときの稼働状況を照らし合わせながら、今回のプロジェクトに必要なメンバーをアサイン。

「実際は、アサインというよりも“相談”をしにいく感じですね(笑)。今回、ウェブのデザインがあるんだけど、できるかな? とか。こういうところをサポートしてほしいんだけど、お願いできる? という感じで」とプロジェクトディレクターを務めた山口は説明します。

そうしたアサイン/相談を経てメンバーが揃ったところで、エグゼクティブインタビューや代表のインタビュー、リサーチを進め、「KINS」「KINS WITH」が何を目指しているのか、ミッションやビジョン、バリューといったすべてのDNAとなる部分を考え、デザインコンセプトに落としていきます。

好奇心、越境、複眼的視点

 Takramのプロジェクトがユニークな点は、デザイナーと名のつく職能をもったメンバーがプロジェクトチーム内に複数名集まり、中心を担うということです。今回もまさに、グラフィックデザイナー、デジタルプロダクトデザイナー、そしてUIデザイナーがチームの核となってプロジェクトを進めていきました。

「それぞれがそれぞれの領域のエキスパートだけど、プロジェクトのなかでやることは多岐にわたるので、どんなボールでも拾いにいかなければなりません。実際、海外のデザインファームではケイパビリティが広くなっていて、領域の垣根がなくなりつつあります」と山口。

それを体現するように、例えばグラフィックデザインが専門領域のアートディレクターの山口はグラフィックデザインを超えて3Dレンダリングをしたり、本来はディスプレイ上でのデザインを手がけることの多いデジタルプロダクトデザイナーの河原やUIデザイナーの長谷川も、ディスプレイを飛び出し、ウェブをデザインしながらパッケージデザインやグラフィックデザインを手がけるなど、領域を規定することなくチャレンジしています。

そうすることで、UXの観点から考えるパッケージデザイン、UIの観点から見るグラフィックデザインなど、複眼的な視点が入ることで、より質の高いクリエイティブを生み出すことができています。この複眼的な視点で仕事は、Takramの特長と言えます。

「チーム内のキックオフミーティングで、今回のプロジェクトで何を学びたいか、ということを共有します。例えば、長谷川の場合はグラフィックデザインをやってみたいということだったので、その部分にもチャレンジしてもらいました」(山口)

実際に「KINS WITH」でグラフィックデザインを担当した長谷川は、「領域外のことも各々が自走するかたちで進めていきますが、わからないことは要所要所でプロフェッショナル(今回で言えば山口)がカバーしてくれるのでチャレンジしやすかった」と言います。

折しも「KINS WITH」は完全にコロナ禍の下での進行だったため、対面でプロジェクを進めることができませんでした。

色校正用に色温度を揃えた照明を用意したり、パッケージサンプルを各メンバーに送ってSlackやZoomを使って意見交換したりとオンライン仕様のワークフローを確立していった一方で、プロダクトのラピッドプロトタイプができないなど、オンラインではカバーしきれないプロセスもありました。

「ただ、3Dレンダリングでつくったモックアップがあるから、プロジェクトのかなり早い段階から、デザインの検証などを行うことができた」と河原が言うように、ここでも専門領域を越えるチャレンジが活きていました。

Takramで働くには

では、Takramで働くうえで、どのようなマインドセットが必要なのでしょうか。

「まずは専門としている領域をしっかりもっていることですね。Takramではプロデューサー専門の役割はいないので、デザイナーも『なぜこれをつくっているのか』というようなセルフディレクションができないと、プロジェクトに接続していくことができません。そうしたところにマインドが割けるように、専門領域をしっかりともっている。そのうえで、おもしろそうなことをやりたいという好奇心が大事になってきます」(山口)

「誰かに何かを指示されて動くことはないので、自分のもちえる能力を使ってなんでもやるということと、隣の人を助けるマインドがあるといいですね」(河原)

「ふたりと同じですが、スペシャリストとしてのスキルをもちつつ、領域を広げていく意識ですかね」(長谷川)

「なんでもやりたい」だけではなく、軸となるスキルを起点に、広げていく越境的マインドを培いつつ、同時に高い専門性をもったメンバーが揃う Takramでは専門性をさらに深めていくこともできます。

3Dレンダリングなど、グラフィックデザイナーとしての輪郭を拡張する山口も「ワーク・イン・プログレスで、横に行っては戻ってくることを繰り返して、グラフィックデザインの領域も日々探究しています」と専門性を深めることを忘れていません。

Takramを語るキーワードのひとつに「Learning Organisation(学習する組織)」というものがあります。専門性を深める、領域を拡張する。そうした意識がTakramのクオリティの土台となっているのです。


Takram Night #3は、2022年2月下旬の開催を予定しています。日程が確定しましたら、SNSなどで告知させていただきます。

山口幸太郎|Kotaro Yamaguchi
東京藝術大学にてデザインを専攻すると同時にデザイナーとしてグラフィックデザイン、サインデザイン、映像デザイン、UIデザインなど、幅広くビジュアルデザインの経験を積む。2014年からTakramに参加。2014年東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。主なプロジェクトにNHK Eテレの科学教育番組「ミミクリーズ」のアートディレクションなどがある。D&AD Yellow Pencil、グッドデザイン賞ベスト100、2014年日本賞 幼児向けカテゴリー最優秀賞(総務大臣賞)、アメリカ国際フィルム・ビデオ・フェスティバル教育部門最優秀賞(部門1位)など受賞多数。

河原香奈子|Kanako Kawahara
デジタルプロダクトのUI/UXデザインとブランディングを中心に活動。ITスタートアップ複数社にて新規事業立ち上げからグロース、デザイン領域のリーダー・役員などの経験を積み、2020年よりTakramに参加。主な仕事に、内閣府・内閣官房が提供する新型コロナウイルス感染症が地域経済に与える影響の可視化を行うサイト「V-RESAS」のUIデザイン、ラクスル株式会社のデザイン推進室サポートとコーポレートVIリニューアル、犬猫のためのD2Cブランド「KINS WITH」のクリエイティブディレクションなどがある。多摩美術大学情報デザイン学科卒業。

長谷川昇平|Shohei Hasegawa
インタラクションデザインを学んだ後、博報堂i-studioにてウェブやアプリなどデジタル領域を中心としたデザインに携わる。 UI/UXのデザインを専門として、2015年よりTakramに参加。 2009年千葉大学工学部、2011年多摩美術大学美術学部情報デザイン学科卒業。

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