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暗転

舞台での必需演出

「暗転」

の時、裏方はどんなことを考えて動いているのかについて書いてみたいと思います。

舞台が暗くなったらパパっと舞台に飛び出し、転換を行い無駄な時間を過ごすことなく袖に帰ってきます。

「よく暗闇で動けるね!」とか「暗転の中でどうやって見てるの?」とか聞かれます。ぶっちゃけ暗順応は鍛えられるモノではないので、何年やってても明転から暗転になった時の視力は一般の人も裏方も変わりません。

暗闇で裏方が俊敏に動けるのは経験とコツのみです。明転のウチにセットや小道具の位置関係をインプットします。

これを読んで、

「へぇー。」

と思った方も、自分の家の電気消しても自宅内はだいたい動けるでしょ?それと同じことです。形状を把握していれば容易なのです。

コントなどの場合、小道具が散乱することもありますが、暗転になった時にどこに何が落ちたか、を瞬時に覚えて拾います。キャリアが浅い時は闇雲に探してしまいがちですが、ベテランになると暗転中の舞台上の異質なモノがちゃんと解るようになります。

逆に、それが解りすぎてまだ小道具が落ちてる!と思って拾おうとしたら、舞台の汚れだったということがあるくらい異物が見えてきます。

そして暗転で転換をする場合に重宝するのが
「蓄光テープ」と呼ばれる暗闇で光るテープです。

これは明転のウチに蓄えた光が暗転中に発光してくれるので非常に助かります。しかし頼りすぎると、お笑いでよく使うブリッジVTRなどを数分流しているウチに蓄えた光がどんどん弱まり、VTRが終わり転換する頃には光が微弱になることも少なくありません。

さらに別のコント中にバミリが剥がれて、暗転中舞台で途方にくれることもあります。若い頃は蓄光テープを探しまくり、時間をかけてしまうのですが、ベテランになると暗転でも落ち着いているので、所定の場所にもし目印がなくても、リハーサルの時にだいたい何処に置いていたかを把握しているのでテープが無くなっててもだいたい同じような場所に置けるようになります。

因みに過去一番大変だったのがキングオブコントの準決勝です。なんせ、コントが50組くらいあり、丸イス、パイプイス、長机、学習机、ホワイトボード、持ち込みの道具など、設置物で溢れ反ります。

テープも混同しないようにカタチを変えて作るのですが、数十パターンのバミリが暗転中一斉に光る姿は、プラネタリウムのようなものです(笑)

KOCの準決勝は人生を左右する日なので、我々もミスするわけにはいきません…。近年は担当を外れましたが、KOCは本当に怖い仕事でした。

近年は消防法による基準が厳しくなり、場内の避難誘導灯が明るくなったこともあり、まぁまぁ暗転が効かない劇場が増えてきています。

なので演出によっては、誘導灯すら消灯する「完全暗転」を行うこともあります。この場合は必ず開場中に「演出の都合上、誘導灯を消灯しますが、有事の際は点灯します」というのをアナウンスするのが法令の決まりです。

暗転を阻害していた光害ともいえる、誘導灯を消したら暗いのなんの!!

本当に真っ暗になります。我々舞台監督は暗転で必要項目が整えば明転Cue(キュー)を出すのですが、本当に真っ暗な中ではさすがにいきなりスグには見えず、細かいことを確認するのに時間が掛かることもあります。

そういう時、僕は舞台が暗転する1分前~30秒くらい前から片目をつぶっておきます。

するとどうでしょう、暗転になった時につぶっていた目は早くから暗順応しているので、完全暗転でも早くから確実に見えるのです。

さらに、暗転で転換は行わずに立ち位置だけ変わってその瞬間に明転する、というような演出もあったりするのですが、舞台に出ていって立ち位置を確認しているとその舞監がハケる5秒で、お笑いの間がズレます。

そういう時には僕はその動くひとが通る場所や動かす部分に蓄光テープを小さく貼り、本人自身の動きは視認出来なくても、その蓄光テープが遮蔽されたりすることを確認して暗転中での出演者の動きを確認したりしています。

案外舞台袖のフォローライトの光量とかに無頓着なスタッフも多くて、自分のその何となくつけた灯りがほんのり舞台を照らしネタバレに繋がってる意識が希薄な人がいます。

ネタバレにならないなら多少は仕方ないのですが、そういう自分の一つの作業が舞台全体のクオリティーを下げていることに気付かない人はダメです。

暗い時間はお客さんを焦らしている訳ですから、明転した時にインパクトを与えるために、我々は暗転で的確に迅速に作業を終え、速やかにハケる。

そんなことの繰り返しで、暗転が得意になってきます。というわけで、

今回は暗転にスポットライトを当ててみました!(ほな暗転ちゃうがな…😫)

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