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夜について

塾の帰り道。

夜といえば暗くて怖いもので

僕らの街には先を照らす灯りなどはなく、

自転車は自然とスピードをあげた。


冬の空気は刺すように冷たく

クラスメイトは口数少ない。

聞こえるのはペダルを漕ぐ音だけ。


「おい、ここで幽霊が出たらしいぞ・・・・。」

噂の一本道はいつも全速力だった。


生まれてから味わった恐怖の全てとそれらを飲み込んでしまいそうな美しい星空。

そんな中学生の頃の話。

都会の夜は明るくて、見通しがいい。

楽しそうなことや、おいしそうなもの。

ネオンサイン。

生まれてから芽生えた欲望の全てが明るく晒されている。

「テストで良い点取りなさい。」

「マジメに働きなさい。」

「先生の言うことを聞きなさい。」


正しいことをたくさん教わってきた。

そんな訳で、結婚すればアガリだと思っていた。

良い大学に入ればアガリだと思っていた。


宝くじは当たりそうにないからね。


そうやってウロウロし続けてるんだ。


問題は決して後戻り出来ないくせに、どこに進めば正解なのか誰も教えてくれない事。


正社員になりさえすれば、

もっと運がありさえすれば

アイツさえいなければ、、、


気づけばあれから20年。

こんなに人が多いのに、ひとりぼっちだなんて知らなかった。

お腹は満たされているのに、まだまだまだまだ足りない。

全然全然足りないのはどうして?

絶望的に安全な檻の中で震えているのはどうして?

きっと夜が明るすぎるから

昼間が怖くてたまらないんだ。

ただいまノルマ達成率56%。

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