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『サブスクリプション』ー1対1のコミット、継続、そこから生まれる顧客の信頼

買って良かったマーケティング本をリストしていくnote、その3冊目。

サブスクリプションとは 「定額課金制」のことではない

NetflixやSpotifyといったストリーミングサービスの成功によりバズワードとなった、「サブスクリプション」という言葉。一般的には「定額課金制」という意味合いで使われることが多いのですが、その理解は正しくないと聞いたら、驚く方もいらっしゃるのではないでしょうか。

マーケティングに関わる方はもちろん、そうでない方も、この「サブスクリプション」の本来の正しい意味と、そのビジネスモデルの意義を正しく理解するための教科書として、読んでおく必要があるのがこの『サブスクリプションー「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル』です。

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サブスクリプションとは 「継続課金制」のことである

はじめに、より。

数年前、私は『フォーチュン』私に寄稿して、ビジネススクールなど行かない方が良い、時間の無駄だ、と書いた。過去100年にわたり、ビジネススクールは基本的にただ1つの考えを教え続けているにすぎないからだ。あらゆるビジネスの目標は、煎じ詰めれば、ヒット商品を作り、できるだけ多く売り、固定費の負担を減らして儲けを増やすことであるという教えだ。私は、このモデルは終わった、状況が変わった、と論じた。
そして、これからのビジネスの目標は、まず特定の顧客のウォンツ(欲求)とニーズ(必要)に着目し、そこに向けて継続的な価値をもたらすサービスを創造することだと主張した。つまり顧客をサブスクライバーに変えて、定期収益がもたらされる構造を築くことだ。この変化をもたらした文脈を、私はサブスクリプション・エコノミーと呼んだ。

こんな挑発的な一文で始まる本書。

第1部ではまず、継続的な定期収益(リカリング・レベニュー)をビジネスモデルの核とするサブスクリプション・エコノミー時代の到来が現実となっていることを、14の事業の実例と、巻末資料として収録された(サブスクリプション企業の課金データを持つZuoraだからこそ知り得た)実際の数字を引き合いにしながら、証明します。

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本書が定義する「サブスクリプション」こそが正しいと言えるのはなぜか?それは、著者ティエン・ツオ氏こそが、サブスクリプション・エコノミーを事業を通じて実践し、広めてきた張本人だからです。

その事業の名は「Zuora(ズオラ)」。日本ではご存知ない方も多いと思いますが、サブスクリプションビジネスを運営するにあたり必要となるフレキシブルな継続課金マネジメントシステムをSaaSで提供する企業として、成功を収めています。

サブスクリプションが変えるのは、お金の払い方ではなく、企業と顧客のつながり

続く第2部では、まだサブスクリプションモデルに移行できていない、または移行したものの軌道に乗れていない企業において、マーケティング・営業・財務経理・ITの各部門が、どのように仕事を変えていかなければならないかを説きます。

特に、マーケティング部門は何を変えなくてはならないか?ツオ氏が強調している部分を抜き書きしてご紹介します。

サブスクリプションは「1対1の関係」を構築する仕組み  (P213)
今日のブランドは、広告ではなく経験を通して伝えられている  (P215)
マーケティングの4つのPが完全に変わってしまうのである。(中略)最初のP(製品)がS(サービス)に変わるのがサブスクリプション・エコノミーである。だとすれば、あとの3つのPも、これまでと同じというわけにはいかない   (P217)
価格は物理的な製品に対してつけるのではなく、それを使うことで得られる結果に対してつけなくてはならない (P225)
全加入者の70%以上が基本パッケージに留まっているようなら、エントリーレベルのサービスとしては立派かもしれないが、早晩立ち行かなくなる  (P229)

マーケティングの仕事とは、関係(のはじまり)を構築して終わりではなく、把握し、見直していくために、テックタッチ/ロータッチ/ハイタッチのそれぞれのタッチポイントをいかに生み出していけるかにかかっていると思っています。

顧客の行動をONE to ONEで追跡し、そこに不満がある限り改善し続けることがサブスクの本質

モノのマーケティングとサービスのマーケティングの違いといった枝葉末節を語る前提として、マーケティングにおいても、その他の職種においても、

お客様とのONE to ONEのお付き合いから逃げずに
サービスの価値(と価格)を上げる努力と工夫を続ける
そこにどこまでコミットできるかが勝負

ということを受け入れなければ勝てない時代へ。

サブスクリプション・エコノミーの浸透にともなって、最近「カスタマーサクセス」という概念や職種が日本でも注目されているのも、この文脈からきています。

全ての仕事について、「売り切り」で終わらせず定期的にお金をいただくことにより、顧客との継続的な関係性の中で自分たちの組織もサービスも変化させ、信頼を勝ち得ていくことこそが、サブスクリプションビジネスの本質。サブスクリプションに踏み切れば、必然的に顧客に受け入れられる商品・サービスに成長する契機となり、踏み切らなければ淘汰を待つのみ。

あとは、いつ踏み切るかだけが問題です。


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