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『キャズム Ver2』ーホールプロダクトという「幻想」、ターゲットセグメントの絞り込み

買って良かったマーケティング本をリストしていくnote、その4冊目。

事業のモメンタムを失わないうちにメインストリームに移行する技術

新しさや革新性を求めているアーリー・アドプターを顧客とする初期市場から、安心感と必然性を求めているアーリー・マジョリティを顧客とするメインストリーム市場への移行。これをどう成功させるかは、マーケティングの一大テーマです。

このタイプが異なる2つの顧客が求める価値の違いが生む「溝(キャズム)」を企業が乗り越えるために必要となる、
・攻略地点(橋頭堡となるマーケットセグメント)の定め方
・「ホールプロダクト」というコンセプト
・組織づくりの要諦

を授けてくれるのが、本書「キャズム2」です。

ホールプロダクトという「幻想」

ここでいう「ホールプロダクト」という言葉について、ピンと来ない方も多いのではないでしょうか。

ホールプロダクトの考え方は明快である。それはーーベンダーが顧客に説明する製品の機能、つまり価値命題(バリュー・プロポジション)と、製品が実際に発揮する機能との間には差があるーーと言うものだ。その差を埋めるために、本来の製品に各種のサービスや補完的な製品を付け加えて、ホールプロダクトを作り出すのだ。  P171

明快である、という割に説明が分かりにくいのですが・・・(笑)

つまりは、実際に出荷され契約書によって保証される「コア」プロダクトに加えて、追加ソフトウェア・システムインテグレーション・デバッグ・サポートなどを総合した、「期待」→「拡張」→「理想」プロダクトを含んだものがホールプロダクト。言ってしまえば、お客様が求める今はまだ無い「幻想」に近いものです。

それは自分たちの力だけでなく、時には顧客自身や戦略パートナーらとともに作り上げていくものであることが、この前後のページで語られています。


もちろん、最初から「期待」→「拡張」→「理想」プロダクトをすべてそろえて出荷できるわけがありません。

だからこそ、将来にかけてホールプロダクトをどう構築し提供していくかを顧客に提示し、実際にその約束を果たしていくプロセスが重要となります。それがホールプロダクト・マーケティングです。

かなり難易度の高い取り組みですが、こちらから頼まなくても勝手に商品やサービスを試して理解してくれるアーリー・アドプター相手の商売とは違い、購入にあたって安心感と必然性を求めるアーリー・マジョリティに対しては、そこまでしなければならないのです。ベンチャーはみな遠からずこのギャップに苦しむことになります。

ターゲットセグメントの絞り込み

さらに、このホールプロダクトを設定するためには、その前に誰のためのプロダクトを目指すのか、ターゲットとすべき顧客セグメントはどこかを見極める必要もあります。

これもまた難しい判断で、
「あの業界とこの業界と・・・」
「営業部門にも管理部門にも・・・」
などと手を広げてしまいがちなのですが、著者ジェフリー・ムーアはこう断言します。

「キャズムグループ」に寄せられる最も多い質問、すなわち、「同時に複数のセグメントを追い求めても良いか?」という質問に答えるものである。簡単に言えば、答えはノーである(略) 2つの橋頭堡を目指してキャズムを超えることができない。この点については既に数度にわたって考察を加えてきたことではあるが、なかなか理解できない人が多いのも事実である。

理解できない人が多い、というよりも選択ミスが怖くて絞りこめない、というのが現場の感覚ではないでしょうか。


本書には、そうした怖さを乗り越えるための、橋頭堡の選択の手順も書いてあります。

1. 初期市場で得られたデータに基づくターゲットカスタマーのシナリオを多く集める(P151〜152参照)
2. ターゲットマーケットを選定する委員会を任命する
3. すべてのシナリオに番号をつけ委員に配布する
4. 委員が第1段階の評価をする
5. 合計点の順に並べてシナリオの3分の2を破棄する
6. 第2段階の評価をし、2か3に最終候補に絞り込む

こうして民主的な投票で絞り込んだ後、

→委員が1つのシナリオに合意できればそれを採用
→合意できなかった場合、委員会のメンバー1人を選び、どのシナリオをボウリングの1番ピンにするかを決定
どのシナリオにも納得できない場合(往々にしてある)には、無理にキャズムを越えようとするのでなく、初期市場でのプロジェクト受注を続け、コスト削減し、現実的な橋頭堡の候補を探し続ける

こうしたプロセスを踏んで、データに基づき、拙速にならないようきちんと合意せよということです。


昨日の花曇りの土曜日、私が所属するクラウドサインでもオフサイトミーティングを開き、こうしたホールプロダクトや橋頭堡の認識すり合わせを含めた、今後のプロダクトロードマップについて意見交換の機会を持ちました。

23区内某所、しかしまわりにはコンビニの一軒もない静かな場所に立つこんな古民家にて。おかげで集中できましたが、夕方の薄暗さが怖かったですね…。

この本を片手に厳密にやったわけではありませんが、以前にリーダークラスの中でこの本を必読書としてディスカッションをしたベースがあったおかげもあって、比較的スムーズにまとまったのではないかと思います。



サポートをご検討くださるなんて、神様のような方ですね…。