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『「数字指向」のマーケティング』ーザ・モデルの落とし込み、ROIをベースにした経営者との会話

買って良かったマーケティング本をリストしていくnote、その7冊目。

『ザ・モデル』のマーケティング各論&実践編

前回紹介した『ザ・モデル』の概念を、マーケティングの業務に具体的にどう落とし込み、企業の成長につなげていくか。徹頭徹尾そのことだけを書いた、SaaS&サブスクリプションビジネスのマーケター必携本。

写真右側が『ザ・モデル』、左側が本書『「数字指向」のマーケティング』です。シンクロ率100%、というか100%同じ表です(笑)。

著作権的に大丈夫なのか本気で心配された方へ種を明かすと、両著者ともに同じマルケト社の方々であり、出版社も同じ翔泳社なので問題なしというわけ。実際、『ザ・モデル』のマーケティング部門のパートは、本書の著者丸井達郎さんの筆が入っているのではないかと推測します。時期もほぼ同時ですし、おそらく連動企画として出版されたのでしょう。

となると、『ザ・モデル』を読んでない方や、その考え方を取り入れない組織にとって役に立たない本のように聞こえるかもしれませんが、そんなことはありません。

コストセンターとして疎まれがちなマーケティング部門が経営層に対しどうプレゼンスを発揮し、協力を引き出していくかについて、具体的な提案が詰め込まれた書籍でもあるからです。

マーケティング部門の活動を経営層に興味を持ってもらい協力を得るためのカギ、それはROI(投資対効果)をベースにした進捗報告ができるかにかかっていると著者は述べています。

マーケティング部門のROIの計測法

マーケティングのROIは、計算モデルとしては

ROI = 粗利 - コスト(マーケティングコスト+人件費) / コスト(マーケティングコスト+人件費)

となります。類書では、こうした考え方や数式こそ示していても、日々の具体的なマーケ業務に紐づけた説明まではなされていないために、概念の理解だけで終わっているマーケターは少なくないと思います。

本書は、オンライン広告/メールマーケティング/展示会等代表的な施策・チャネルごとに「こうした中間ポイントで“フロー”と”コンバージョン率”を計測したほうがいいよ」と具体的にアドバイスしてくれます。

さらにさらにありがたいことに、本書購入特典として、エクセル形式のROI計算・シミュレーションシートもダウンロードできるようになっています。話が早い!

まずは最低限の数値を大まかに捉える

ところが、こうしたエクセルがあっても、マーケティングをはじめた当初は、その入力項目を埋めるだけのデータがもれなく計測できていない、というのが多くのマーケターの実情ではないでしょうか。

そんな方のために、本書の最終章では、最低限どんな数字を把握するところからはじめればよいのかをレクチャーしてくれます。その「最低限」がこちら。

例えば、図1で言えば、1万件の見込み顧客を追加で獲得できれば、受注も200件増えることがわかります。
次に、その受注から期待される収益と利益を平均受注単価から想定します。平均受注単価が100万円であれば収益は2億円、利益率が30%であれば利益は6,000万円になります。1万件の見込み顧客で生み出す利益が6,000万円であれば、見込み顧客の単価は6,000円以内でなければ利益が出ません。
このような把握をすることが、プロセス設計の最初の一歩です。なぜなら、マーケティング担当者は企業の成長に貢献しなくてはならないからです。

「『ザ・モデル』の考え方はわかるんだけど、まあ実際はそんなモデルどおりうまくはまわらないでしょうね」と斜に構えている方。

サブスクリプションビジネスを始めたはいいけどどこからマーケティングを始めたらいいか行動に移せないで二の足を踏んでいる方。

その双方をやさしく導いてくれる愛あるマーケティング入門書です。


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