分詞構文はどこまで理解できていればよいか

最近、高校二年生に対して、このような英文の解説をしました。

…, there being no gravity and no air resistance, even a small amount of energy can be powerful.

英語教員なら当然「はいはい独立分詞構文ね!」とピンとくると思います。

「あいまい」な分詞構文

仮定法と同様、高校から学習する内容である分詞構文は、高校生にとって英語を苦手と感じさせる文法事項の一つです。
分詞構文を正確に理解し、その理解を和訳等で正確に表現できる高校生は、言語感覚に優れると言ってもいいかもしれません。

分詞構文の難しさの根源は、その「あいまいさ」にあるのかなと感じます。

分詞構文というのは、単語の意味の足し算で節のおおまかな意味がとれてしまうため、正確な理解の優先度が低くなってしまいます。

今回の英文の場合、「there beingか、よくわからんな。でもno gravityとno air resistanceってあるから重力と空気抵抗がないのだろう。」でこの節の意味合いのほとんどがとれてしまいます。
内容理解には大きな支障がないため、学習者の立場からすると、丁寧に読もうという動機には繋がりづらいのです。

この「だいたいできる」という感覚が、成長を阻害する要因となります。
今回の文は、宇宙という文脈があり、重力と空気抵抗がない=エネルギー量少なくて大丈夫、という背景知識で理解できてしまいます。
しかし、これだけじゃ太刀打ちできない文はいくらでもあり、むしろそういった文を大学入試では狡猾に問うてきます。

分詞構文の「ここ押さえよう!」

では、大学入試に臨む高校生にとって、独立分詞構文はどこまで理解できていたらよいのでしょうか。

個人的には、主節に意味的に繋げるのに適切な接続詞を補おうとするくらいには理解させたいと思っています。

独立分詞構文を理解するには、まず分詞構文について理解することが大前提となります。

・主節と従属節のうち接続詞から始まる従属節に起こる現象である。
①接続詞が消える、②主語が消える(主節と同じなので)、③残った動詞を分詞に変える、の3つが起こる。
・接続詞が消えてるので、二文の繋がりを論理的に推測しないといけない

この3つを手を変え品を変え学習者に理解させます。

その後、接続詞の意味も主語も時制も「あいまい」になることで読み手に推測の幅を与えることが分詞構文の面白さであり、新聞でも文学でも多用される表現であることを伝えます。
このあいまいさを作り出すために、接続詞を消し(主節との関係でほとんど推測できる)、主語も消える(主節の主語が分詞構文でも主語だと推測できる)と理解させられるよう指導していきたいですね。

論理の推測は国語力!

今回の場合であれば、「重力も空気抵抗もない」「少量のエネルギーでさえ力強いものになりうる」の二文をつなぐ論理が何かを考えさせます。

中学レベルの国語力があれば二文を繋ぐ論理は「因果関係」だとわかるはずです。

その後、英語における因果関係を示す接続詞が何かを考えさせます。
論理性の高い結びつきのbecauseや、当然の原因・理由を示すsince/as、ゆるやかな因果関係を示すandなどから適切なものを選ばせると、and以外が該当することがわかります。

それをもとに元の文を推測させていきます。
例えば、まず"because there being no gravity…"と接続詞を補います。
次に分詞をもとに戻させます。"being"はbe動詞、主節は現在形なのでおそらく現在形だと考えさえた時に、there is/are構文の特性上、直後の名詞に合う現在形のbe動詞、is(are)を確定させます。
そうすると"because there are no gravity…"となり、ほとんどの学習者は意味内容を理解できるでしょう。

一歩踏み込んで、独立分詞構文であることを理解させるならば、there is/are構文の主語はbe動詞の後ろであること、読み手の想像がおよばない「あいまいさ」はまずいから、いつも消えるはずの従属節の主語が主節のそれと異なる時には残ること、あたりに触れるといいですね。

おわりに

仮定法も分詞構文は高校生にとって難しさを感じるものではありますが、比較的システマティックに処理ができる文法項目でもあると思います。
発達段階的にほとんどの高校生は抽象的概念を操作できるようになっていますので、大学入試を目指すような高校生に教える場合、抽象度の操作をしながらテンポよく教えていきたいですね。

もちろん、今後英語の文章で出てくるたびに主語の復活と接続詞の推測をさせたり、理解できた分詞構文については音読を通して形式を定着させたりしていきましょう。

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