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SIGMA fp 得意/不得意を整理する

※このnoteは4,375字といくつかの写真、筆者の不満と満足を良くこね上げ発酵させた何かで出来ています。

1.はじめに

 きっとこのような記事に目を留めたあなたのお手元には、SIGMA fp ,fp Lもしくはフォビオンセンサー搭載の各種SIGMA社製カメラがあることでしょう。そんな偉大な諸先輩方に相談するつもりで、私はこの記事を書いています。

 万が一、新しいカメラが欲しくて、価格コムでスペックやレビューを調べたり、フォトヨドバシやflickrなどで作例検索したりYoutubeでの関連投稿を見ても尚、決断できずにネット検索してこの記事に辿り着いてしまったようなあなた。

 SIGMA fpは買いですか、って?

 わからない。

 本当にわからないんだ。

 むしろ君が俺に教えてほしい。

 俺はfpを使いこなすことができるのか?


 ……はい、ここまでが噺の枕でございまして。

2.fpユーザーとしての私

 これを書いている時点で、私のfp歴は一年と少しです。
 普段はニコンをメインで使っていますが、Z5の画でモヤッとしたときに他社カメラも知りたくなり、導入しました。
 fpでは花などの静物中心に、お写んぽ、日帰り撮影遠征のお供や旅スナップを撮ってきました。
 動画は一切撮らずスチルオンリーです。RAWをSigma PhotoProで現像しています。

 蛇足ですが、トップ画はM42対応のマウントアダプターだけ付けて、疑似的パンケーキレンズについて妄想しているところです。カメラのサイズ感はこれくらいが落ち着きますね。
 青いガムテープですが、これは3Dプリンター製作者のTakumaさんから購入した縦吊りグリップの隙間に、小さく切って折りたたんだダンボールを詰めてガムテープで蓋をした状態です。私はよくカメラを持って歩き回っていると、指の付け根とか手の甲の中とかが痛くなりがちなのですが、指の腹でもグリップできるようにすることでこれを予防しています。その場しのぎの即席処置でしたが、面倒だしもうこれでいいや、と思ってます。意外といい感じですよ。

 さて、これから私がfpに感じている印象を記していきます。お時間許す限り、どうぞお付き合いください。
 コンパクトで~とか豊富なカラーモードが~とかは散々語り尽くされて今更なので、描写の特徴に絞りたいと思います。


3.吐き出す画にいちいち凄みがある

 デフォルトでコントラスト・シャープネスが高く、硬調傾向です。無機質な人工物を撮らせたら、右に出るカメラは他にないのでは、と。コンクリートや金属などがキリッビシッゴォーーンとキマります。

65㎜ DG DNでカラーFov.Yellowだったはず
こっちは45mm DG DNで 真上向いて撮りました
僕の愛車!(大嘘)

 ゆえに、都市部にお住まいで街スナップを嗜む方にはうってつけと言えるでしょう。

4.謎の立体感

 特に植物を撮ったときに顕著なのですが、浮き立つ感じがスゴイです。
別にそれが明るいレンズで浅い被写界深度に頼ったものではない、というのも特徴かと。非常に彫刻的な描写です。

オオルリムスカリ
ナンテンの赤い葉が金属加工の工芸品のよう
落ち葉もしっとりと
お地蔵さまも相性のいい被写体です


5.光に敏感すぎるセンサー

 このあたりからネガティブも書いていきます。
 とにかく白飛びしやすい。
 晴れた日の雲だけでなく、白い花びらも危険案件です。

背景の大きな雲とそれ以外の明るさを合わせると、これが限界でした
うっかりすると、キャンディタフトの花弁もご覧の有様

 もちろんトーンコントロールは常時「オート強」にしています。購入当初はこの機能を気にせず使っていたので、撮影から帰ってきて結果を見返し!??となること数回。ですが、今もfp的悪条件だとどうにもならない状況です。

悪条件の例 空に露出を合わせた場合
raw現像で復旧を試みたが、もはや正解がわからない


 上の現像例が、今の私の精一杯です。RAWで撮っているので後から救済できると思いきや、暗部と明部の輝度差が肉眼より遥かに離れていて、下手にいじると簡単に破綻してしまいます。Sigma PhotoProには一応「白飛び軽減スポイト」もありますが、あいにく露出が単に下がるだけで、それ以上の効果はないようです。

画像補正パネル、Fill Lightの下に白飛び軽減スポイトがあるが……

 もちろんトーンカーブも頑張っていじくるのですが、Sigma PhotoProが採用しているのはパラメトリック型(?)なので、個人的にすこぶる操作性が悪いと感じてしまいます。

マウスで自由に操作できる、一般的なトーンカーブではない


6.絵作りの幅が狭い

 先に記した通り、ハイライト側は滅法弱いfpですが、それに反してシャドーが鬼強いです。アンダーで撮ると最強だとの意見もあります。撮影中も露出補正をマイナスして、帰ってきたら「まだ落とせる」と感じることは日常です。

まだ落とせる
露出を-1.0 シメにFill Lightを-0.1
ハイライトがピリッと効きます

 言い換えれば、ハイキーでふわっと撮るのはもはや不可能では、とすら思います。高輝度諧調補正の逆と言えばいいのか、センサーがシャドーにだけ最適化されているのではないでしょうか。
 ゆえに、うまくハマる被写体や撮影シチュエーションも限られてきますし、表現もローキーでシャープ、良くも悪くも重めの表現がほとんどになるように思います。
 

ガパオライスをなんとか美味しく見えるように頑張っている図
パラメータがとんでもないことになってます


7.現在の評価まとめ

 カメラ系Youtuberのまきりなさんは、私が尊敬と親しみを持てる発信者のお一人です。

 私がfpユーザーになったのはこの方の影響が大きいのですが、この方の言葉を借りるなら「ニコンZはあらゆるシチュエーションで93点。一方、fpはときどき想像以上の120、130点を出すが、コケて30点くらいのことも多い」とのこと。

 では私が言葉で表現するならば、「異端児」でしょうか。とても初心者にはおすすめできない扱いづらさ、描写の特殊性、ピーキーなじゃじゃ馬。Sigmaが自ら「脱・構築」を掲げて設計した通り、物理ボタンも少なくグリップすらないデザイン。販売戦略的にも、他社と似たり寄ったりな性能では差別化ができませんから、とにかく尖らせた製品に仕上げた点は理解できます。
 一方、使っていて「まずは普通に写ってほしいんだけど……」とがっかりするのも正直なところです。
 せっかくのソリッドな黒鉄のガジェット、スーツ姿で出張した際、空き時間にサッと取り出し撮影を楽しんでも何ら気後れすることはありません。いつでもどこにでも持っていけるのに、「なんでもは撮れないカメラ」であるというのはちょっともったいないなあ、とも思います。

8.今後どうするのか

 カメラやレンズはお財布が許す限りとっかえひっかえするのも楽しみのひとつですから、気に入らないなら手放せばいいというのはもっともなことです。
 ですが、私はもう少しfpに付き合ってみたいと考えています。
 理由は2つあって、一つはモノクロの描写力をまだ追求していないからです。

カラーで撮った画をなんとなくモノクロ変換して驚愕した、最初の一枚

 わざわざモノクロで撮る理由は、形とトーンを見せるのに優れた手段がモノクロだからだ、とは写真家の伴貞良さんの弁です(リンク先、13分くらいで語ってらっしゃいます)。色があるとついそれに引っ張られてしまうので、最近の私はとにかく光線の状態を見ることに注力しています。
 デフォルトでコントラスト・シャープネスがやや極端でハイライトがオーバー。ところがこれをモノクロに転用すると、不思議と説得力と魅力が生まれる。私のごく私的な写真道の一環として、fpの存在は助けになってくれるのでは、との期待をまだ残しています。


9.カメラより先にメーカーに惚れたから

 二つ目の理由は、こちらの方が大きいのですが、Sigmaを応援したいからです。

 大事なことなのでもう一回言いますね。
 私はSigmaを応援したい!!

 各カメラメーカーで、私がぱっと社長の顔がわかるのはSIGMAだけです。
 山木社長は自らYoutubeで新製品のプレゼンテーションを行うなど、かなり積極的にメディア出演をしていますね。一方、実は「本当はあまり出演したくはないのです」と仰っているあたり、人間味が感じられて好印象です。各種インタビューを読んでいても感じるのは、間違いなくサーバント・リーダーシップ型の経営者なのでしょう。
 そのようなトップの人柄に加えて、国内拠点である会津工場の存在やモノづくりに対する飽くなきこだわりなど、こうして応援する理由を列挙しているだけで、私はなぜか目頭が熱くなります。
 奇跡みたいな企業じゃァねえか……。

 目の前にあるプロダクツの後ろには、どんなメーカー、どんな人たちが関わっているのか。
 そして自分は、何に投資したいのか。

 消費者として、そんなことを考えながらお金を使うことも、豊かさにつながるのではないでしょうか。

 (中古品ばかり選んでごめんなさいシグマさん今度何か新品買います)


10.完璧なカメラはない

 昔は、ただ写真を撮ること自体が技術だったなんて、昭和の終わり頃に生まれた私ですらもはや考えられません。最新のカメラを持たせれば、幼稚園児だってシャッターは切れてしまいますし、動物瞳AFとか、わざわざ人間が写真を撮る意味すら考えてしまいます。
 そういった意味では、私がこれまで述べてきたfpに対する不満のいくつかも、諸先輩方からすれば失笑対象かもしれませんね。フォビオンセンサー然り、CMOS以前のCCDセンサー然り、時代を遡るほどに扱いの難易度が上がるカメラの数々は、試行錯誤して向き合ったカメラマンたちによって伝説となったのですから。

 簡単にはうまく撮れない、撮らせてくれない、そんなカメラすら愛して楽しめる、懐の深い大人になりたいものです。


11.終わりに

 ここまで長々とお読みいただきありがとうございました。
 ちょっと愚痴っぽい部分も出てしまいましたが、このnoteは冒頭に記しました通り、読み手に相談し助けを乞うものです。
 高難易度で底知れない力を秘めたSigma fpをさらに理解すべく、本体の設定、撮影時や現像でのコツなど、何卒コメントお待ちしております。

Sigma公式様にもリツイートしていただいた一枚


【追記】勝利の鍵はやはりトーンコントロールか

 改めていろいろ調べて気づいたのですが、トーンコントロールについてシグマ公式さんが動画を上げていたのに見落としていました。
 その都度、光の状態を見てマニュアル操作をすれば、案外なんとかなるかもしれません。


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