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光の質感のお話

 以前noteに書いた「光の基本的なお話」をありがたいことにたくさんの方に読んで頂けたので、大分年月が開いてしまいましたが調子に乗って今回は光の質感、光が被写体の質感をどう見せるかについて書いてみたいと思います。

 前回は光の硬さ、柔らかさについて書きましたが、それにも通ずる今回は質感をテーマに書いてみたいと思います。


◇質感とはなにか

 今回は質感のお話からです。質感とは広辞苑でひくと

① 材料の性質の違いから受ける感じ
② その材料が本来もっている感じ

 とあります。写真を見てそのものの材質や手触りのようなものが伝われば質感のある写真といえそうです。そこで僕たちが何を見て質感を感じるかですが、ずばり凹凸です。

 余談ですが、凹凸という漢字をずっと見ていただらゲシュタルト崩壊してきました。そして凸凹(でこぼこ)と凹凸(おうとつ)って漢字の並びが逆なんですね。

◇凹凸を表現する光

  例えばこの2枚の写真を見てください。

 2枚とも撮影したものは同じですが、2枚目のほうが質感が伝わるかと思います。特に明るいところから影に入る部分を見てください。理由は凹凸(おうとつ)です。僕たちは手で触る以外は目で見て質感を判断するのでその形状を理解するのには凹凸を感じなければいけません。寄ってみるとこんな感じです。

 2枚の写真の違いは硬さです。
1枚目の写真は乳白色のゴミ袋を卵と太陽の間に入れて光を柔らかくしました。

 2枚目の写真は太陽の光が直接当たっています。一見目立ちませんが被写体表面の凹凸の影が出ています。

 次にこちらの写真。

 ピントが合ってなさそうに見えますが、ピントはど真ん中にあっています。柔らかい光をカメラの後ろ、つまり卵の正面から当てて撮ったものです。さらに影が消えて質感が分からなくなっています。

 今回お見せした写真は無機物ですが、人間の肌でも同じです。プリクラや水商売のプロフィール写真などはほとんどの光が正面から当てられています。これは肌の凹凸をなくし美肌に見せます。逆にビューティー系の広告や雑誌などではある程度硬い光を使って肌やメイクの質感を見せているものが多いかと思います。柔らかい光は女性を美しく見せると思われがちですが、個人的に美しい女性は硬い光のほうがさらに美しく見えると思っています。

 この記事の写真も硬い光でライティングしています。ハイライトが立ち肌の質感が綺麗に出ているかと思います。

 逆にある程度年齢を重ねた人の肌を美しく見せるためには皺などをライティングで目立たなくする必要があります。個人的には若いきめの細かい肌を美しいと思うと同時に、年齢を重ねた皺の刻まれた肌も別の美しさがあると思うのですが、、、

 先ほどお話したように皺は陰影で表現されるので、キーライトで出来た影をサブのライトで薄くするもしくは消してあげればいいのです。こちらの写真はクラムシェルと呼ばれるライティングで撮影しています。

◇質感=影

 今までの話を踏まえてまとめると、質感は立体感によって私たちは感じることが出来ると言えます。そしてその立体感は影によって認識できます。

 おのずと硬い光で影がはっきり出るものの方がより質感が協調され、柔らかい光やカメラの後ろからの光(影がカメラと反対側に出るため写真に写らない)は質感が分かりづらい写真になります。

 ただ、ここで一つ問題があります。影があればあるほど質感が分かりやすいのかという疑問です。これは僕個人の考えですがNOだと思います。
 影は本来の被写体の色ではなく、人の肌であれば影の部分は肌のトーンより暗い茶色になります。人の肌くらいの凹凸であればそれほど気になりませんが、ワニの皮膚を想像してみてください。

 あのぼこぼこした皮膚に硬い光があたっていて皮膚の凹凸の影が全てくっきりでていたら、本来の色や質感が影が邪魔で逆に分かりづらいと思いませんか?

 そこで、ビューティーの撮影(美容系)ではビューティーディッシュ、通称オパライトと呼ばれる適度な硬さと柔らかさを併せ持ったライトがよく使われるのだと思います。

◇まとめ

 今回は光の質感について話してみました。厳密には光の硬さだけではなく、角度、芯を当てるか外すか、環境による反射など色々な要素が絡まりあって質感は表現されています。

 舞台のキービジュアルの撮影などで複数日にわたって別の場所で撮影するときなどがあります。撮影日や場所が違っても写真は同じにする必要があるため、ライトの距離や高さ、出力、カメラとの距離など正確に測っておいて別のスタジオで同じセットを組むのですが、まあ同じになりません。かならずそこからスタジオに合わせて微調整が必要になりそこでようやく同じようなライティングになります。

 それくらい光は繊細で、環境の影響を受けるものなので、質感を決めるのもこの記事で書いたものはほんのごく一部だと思います。

 だからライティングは面白いんですけどね。それではまた!気が向いたら無料note書きます。

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