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NYでのリカレント教育実践

ベストセラー「LIFESHIFT」で紹介されているように人生100年時代を迎え、従来のライフスパンであった教育→就職→定年→老後という一方通行が成り立たなくなりつつあります

学びなおし、働きなおしを行い、人生の軌道変更を都度行う中で注目されているのが「リカレント教育(生涯学習)」です。ニューヨークでは学生・社会人に関わらず、新しいことを学ぶことに積極的な人が多いように感じています。彼らがどんな場で何を学んでいるのか、実際に体験してみよう~!

ニューヨーク大学SPS(school of professional studies)は学びなおしのファーストステップを与える場として広く市民に提供されています。32の単元、100個もの授業の中から自分が好きなものを履修できます。単元は科学・建築・経済から始まり、アート・宗教・哲学など様々用意されています。授業は基本的に土日か平日夜。学生や社会人が新たな学びを求めてやってきます。

Lower Manhattan に位置する名門ニューヨーク大学

今回挑戦したのはデザインの単元から「Design Thinking for Social Impact(社会変革におけるデザイン思考)」。9~18時までの集中講義で300ドルです。300ドル・・・決して安くない金額。しかもたった1日のワークショップ。これは「この金額を払ってデザイン思考を学びたいという人たちに出会えることが価値だな!」と腹をくくり、Lower Manhattanに位置する大学のキャンパスを訪れると、20人ほどの参加者が集まっていました。

講師はIDEOのチーフデザイナー2名。プログラムは、デザイン思考のフレームワーク講義から始まり、課題設定、仮説検証、プロトタイピング、ユーザーインタビュー、プレゼンテーションまでが1日で行われます。

授業はIDEOのデザイナーであるAllie、Scottによるレクチャーから始まりました。

生徒の中からそれぞれ4人ずつチームを組んでケースに取り組みました。私のメンバーはインド人女子学生のGeeta、メキシコで金融業を営む男性Oscar、トルコで金細工の加工業を営む男性Hakan、と全員外国人での多彩なメンバー。

お題は「NYの地下鉄における課題を定義して解決策を立て、プロトタイピングをしてプレゼンテーションをせよ」というもの。これ、ニューヨークで行われるワークショップでは、超定番のテーマです。確かに、ダイヤが守られない、不衛生、老朽化など数多くの不満があがっています。

まずフレームワークに沿って定性調査と定量調査を行いました。特に定性調査では、チームメンバーの中で実際に体験した課題を洗い出します。同じ路線でも平日・休日で止まる駅が違って迷う、携帯で調べたくても地下で圏外なので繋がらない、最新の路線状況は音声アナウンスでされるため、英語がわからないと何が起こっているのかがわからない、などの意見があがりました。

ここからペルソナを設定。誰のどんな問題を解決するプログラムなのかを定義します。我々のチームでは「旅行で初めてNYにやってきたアジアの若者が、言葉がわからなくてもスマホを使って問題なく地下鉄を利用出来るようにしたい」と解くべき課題を定義しました。

そこから各駅のホームに設置するWifi基地局サービスと、外国人が利用できる地下鉄アプリの画面をスライドショーで作り、プロトタイプを持って街頭へ。街を歩く人にインタビューを行ってそのフィードバックを得ます

これが、なかなか勇気のいる行為。見知らぬニューヨーカーに声をかけて、「あなたは地下鉄で何に困ってますか?」っていきなり聞けますか?シャイボーイジャパニーズな僕はたじろくばかりです。心の準備が。。

男性陣はシャイでなかなか声をかけられない中、インド人のGeetaは男性陣を差し置いて、さっさと5人のニューヨーカーからフィードバックを得ていました。。残り1時間で修正を行い、発表を行いました。

9時間のプログラムでくたくたになったものの、なんとか課題を仕上げることができました。普段不満を言ってばかりの地下鉄に関して、問題を分析して解決しようとするアプローチを学べたことで、「どうやったら課題解決できるだろう」という思考を持てるようになったこと。そして何より、気軽に話せる海外の友人が3人もできたことが何よりの成果でした。

この講義を受けてから4人で仲良くなり、what’s app上でグループを作り、定期的に意見交換という名の飲み会をする関係になりました。アメリカにおいては我々は全員外国人であり、生きてきた背景や考えも全く違うものの、デザインに興味があるというだけでここまで仲良くなり、深い議論ができるようになったことに、ちょっとした感動を覚えました。

老後に住むなら何処か、という内容で熱い議論を交わす外国人4人。右からトルコ人Hakan、インド人Geeta、メキシコ人Oscar、そして日本人の私。

考えてみればニューヨークは生活コストが高く、多くの人は「何かを学びたい」「この事業で成功したい」と明確な目的を持って住んでいる人が多いです。逆に言うと意思がないと住み続けられないほどに生活コストが高い街であり、学びに対する意欲が高いとも言えます。今回、学びに対するささいな興味をきっかけに参加した授業を通して、自分に全くない視点をもった3人の友人をつくれたことが一番の学びかなと思いました。

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