壁に頭突きをしまくる男

ゆるさがいる。

東京で暮らして、もうしばらく経つけど、住めば住むほど「ゆるさ足りなくない?」と思う。

たまに地方に行くと、都民たちは本当に飢餓感が強いことがわかる。満足度が低いのだ。

「俺、良くやってるよ」と自分で自分に言うのは、それなりに覚悟がいるが、たまには言っといた方がいい。

「もっと自分を甘やかしてもいいんじゃないですかね!?」と街頭演説したいぐらい、みんな暗い顔をしている。新宿にいる全員が疲れているように見える。

もちろん少しずつ良くなろうとした方がいいし、何かを積み重ねたほうがいい。そのためには厳しさがいる。

しかし「ゆるさ」と「厳しさ」というのは表裏一体だ。引くから押し出せる。

僕の知り合いに就寝前、壁に頭突きしまくる男がいたが、完全に病気だった。「ゆるさ」が無さすぎて狂ってしまったのだ。

「何でそんなことするの?痛くない?」

「死ぬほど痛いよ。でもずっと頭突きしているわけじゃない。三十秒頭突きし続けて、五分休むんだ。この五分が至福なんだよね。『痛くなくて』気持ちいいんだ」

「ゆるさ」を作り出すために、厳しさのコントロールノブが破壊されてしまったのだろう。

「ゆるい」ってサボるとか怠けるとは少し違う。「グレーゾーンをたくさん持つこと」とも言える。

「こうでなくてはいけない」や「こうあるべき」なんて考え方は耐久力が無い。すぐに「なんでこうできないんだ!」に変わるからだ。減点主義は何も生まない。

自分のやり方と違うやり方が、世界にはたくさんある。

自分のやり方以外のやり方を「それもアリだな」に着地させると、少しだけ生きやすい。「それもアリか」と思う能力に名前を付けたいぐらいだ。

こんなに生きづらい場所なんだから、少しでも生きやすく生きたいものだ。


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